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PIGことレイモンド・ワッツほど、「不遇」という言葉の似合うアーティストもいないだろう。インダストリアル・ロックの先駆のひとりとして余りある才能をもち、次代の主役としての地位を期待されながら、なかなか花開くことのない無冠の帝王。しかしナイン・インチ・ネイルズやマリリン・マンソンといったアーティストが彼の影響下にあるのは疑いもない事実なのである。
ワッツは62年ロンドン生まれ。サイキックTV周辺のブレーン/スタッフとして、プロデュース/エンジニア・ワークでまずは頭角をあらわす。86年にはドイツのインダストリアル・バンドKMFDMに参加、さらにアインシュトゥルツェンデ・ノイバウテンやジム・フィータスともコラボレーションを果たすなど、着々と地歩を固めていく。
KMFDMは2枚のアルバムを残して脱退するが、ソロ・プロジェクトPIGとして88年、1stアルバム『A POKE IN THE EYE』を発表。現在までに6枚のアルバムを発表している。また94年秋にはバクチクの今井寿、ソフト・バレエの藤井麻輝との日英コラボレーション・ユニットSCHAFTに参加。01年にはKMFDM(現MDFMK)のサシャ、バクチクの櫻井敦司、今井寿との日英独ユニットSCHWEINに参加、アルバム『SCHWEINSTEIN』を発表し日本公演もおこなっている。
冒頭に書いたことといささか矛盾するようだが、PIGの音楽はインダストリアルのようで単なるインダストリアルではない。それはワッツが、ネオアコ・バンド、ヒット・パレードにプロデューサー/ベーシストとして参加、来日公演までやったことがあるという事実によっても明らかだ。初期のPIGの2枚のアルバムは、そうした振幅をもったワッツ本来のポップで柔軟で幅広い表情を内包している。90年代以降のワッツは、あまりに急激に一般化・商業化した(そしてその形成に一役買ったオリジネイターであるにも関わらず)インダストリアル・メタルという型にとらわれすぎてしまったのではないか。99年発表の最新作『GENUINE AMERICAN MONSTER』では、かなり自分のペースを取り戻していることが窺えるが、まだまだこの男には大きな可能性が隠されているはずである。 (小野島 大)

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