吉田美奈子の記事一覧

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幼い頃から木に登り哲学する毎日を過ごし、初めて「かっちょいい」と思ったのはアレサ・フランクリン。自らを「ボク」と呼び、歌/プロデュースだけにとどまらず、アート・ディレクションから予算管理にまで首を突っ込む完璧主義者。そんな吉田美奈子は、10代半ばからはっぴいえんど周辺のサークルに出入りする早熟な少女だった。
73年に細野晴臣率いるキャラメル・ママをバックにした『扉の冬』でデビュー。シンガー・ソングライター的側面が強調されたこの作品で彼女は、「日本のローラ・ニーロ」と形容され、ニュー・ミュージック時代の新たなシンガーとして注目を集めた。その後アルバムごとにソウル/ファンク色を強めていき、山下達郎とコラボレイトした『Twilight Zone』、ジーン・ペイジ、デヴィット・T・ウォーカー、ワーワー・ワトソンといった達人たちが参加したL.A.録音の『愛は思うまま』、フュージョン風のサウンドを取り入れた『モノクローム』など黒人音楽を昇華し、さらに自分の中で深化させた傑作を次々と発表する。
80年代中頃にはプロデューサー/ソングライターとしての才能も開花させ、中森明菜、薬師丸ひろ子、西城秀樹などを手がけている。90年代に入ると打ち込みを取り入れ、硬質な響きをもった「精神的ゴスペル」とでもいうべきジャンルを確立した。——現在もオルタナティヴとポップの境界を軽々と飛び越えてしまう彼女の個性は、鋭角さを増し続けている。

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