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鉄火面を被ったラッパー/トラック・メイカー、MF(メタル・フェイス)・ドゥーム。彼の経歴を浚う時、それは時として悲劇的なものになるうる。
かつてゼヴ・ラヴ・Xというオールドスクーリーな名前を名乗っていたドゥーム(ドゥームとはコミックの悪役ボス=ドクター・ドゥームの名前から。つまりクール・キースの変名と同じソース)は、89年、K.M.D.というラップ・グループを結成した。メンバーはドゥームを始め、彼の弟のDJサブロックとオニックスの3人。当時人気のあった白人主体(ここ重要)のラップ・トリオ=3rdベースのフックアップを受けてシーンに登場したK.M.D.は、91年メジャー・レーベル(ここも重要)からデビュー・アルバム『ミスター・フッド』(91年)を発表。ブラック・ナショナリズムに根差したポリティカルなメッセージをリリックに託しつつも、若さからくるポジティヴ性とユーモア性に溢れる楽曲群を披露し、(そこそこの)ヒットを記録した。だが93年、ドゥームの実弟DJサブロックが交通事故で死亡したことも関与してか、彼らは自身の楽曲から“ポジティヴ性”と“ユーモア性”を拭い取った。その後、94年にアルバム『ブラック・バスタード』を完成。その内容はよりブラックかつヴァイオレンスな(そして人種差別に対して教唆的なメッセージを孕んだコンシャスな)ものに。なにせそのジャケット・ワークからして、イラストでチビクロサンボのような黒人少年が首を吊っているものなのだ。所属メジャー・レーベルはこのアルバムの発売を拒否。お蔵入りとなってしまった(01年にインディ・レーベル<SUB VERSE>から正式リリースされた)。
間もなくK.M.D.を解散させたドゥームは、穴モグラのごとく、地下で浮世離れした生活を送る。約5年間も消息が掴めない状態が続いたあとの98年、ドゥームはN.Y.で行われたラップ・コンテストにストッキングを被って登場。と同時に彼のMF・ドゥームとしての歴史が始まった。それからというもの、インスト・ビート集『スペシャル・ハーブズ』シリーズを始め、幾多ものオルターエゴ(キング・ギードラ、ヴィクター・ヴォーンなど)名義で、なにかにとり憑かれたかのように作品を続々と発表。多彩かつ素晴らしいビート・アプローチ、砂を噛みながら放たれるような悲哀感のあるフロウ(それが聴き手の心の奥底に訴えかける)、アンチ・マジョリティ的なリリック描写、そしてその人間的性格(ヴィジュアル・キャラクター性)などに起因して、アンダーグラウンド・シーンにおいて五指に入るほどの人気/ステータスを獲得した。
またユニットとしても、ライマー=MF・グリム(GM・グリム)とのデュオとして、自身のクルー=モンスター・アイランド・シーザーズとして、アンダーグラウンドの二大アイコンのドリーム・コラボとなったマッドリブとのマッドヴィレンなどとしても作品を発表している。これから先も、まだまだこの欄にドゥームのバイオグラフィを足し加えていくことになるだろう(それはそうと、ゴリラズでも知られるデンジャー・マウスとのユニット=デンジャー・ドゥームの話はいずこに?)。

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