Kool Keithの記事一覧

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クール・キースが気張って踏ん張って、そして排せつする作品には、ムワッとした臭気のこめる不気味で邪悪な雰囲気が漂っている。彼が創り出す音世界に一歩足を踏み入れると、まるでLSDのバッド・トリップでさまざまな幻覚を目の当たりにしているかのような、奇妙な体験ができる。その妙ちくりんで破天荒な空間的サウンド・エフェクト、タイトで鋭くも鈍い光を放つようなドラム・ビート、そしてクレイジーだが美しいまでに素晴らしいライミング……。それらのどれもが高クオリティで、そしてキースが誇る絶対無二のオリジナル・スタッフだ。
ブロンクスをレペゼンするウルトラマグネティック・MCズのいち員としてシーンに登場してからというもの、キースはそういったサウンドとダーティなライムを自らの特徴として世間に認知させてきた。彼は熟練されうるスキルと生まれながらにして持つ才能を着実に伸ばしてきたのである。また、独特のライムとオリジナリティ溢れる比喩表現で巧みに構成されたそのリリック表現は、サッカー的なバトル・スタイルから卑猥/猥雑なストーリー・テリングまで実に多種多様な趣を呈している。
05年現在、クール・キースはドクター・オクタゴン(これはダン・ジ・オートメーターとのユニットかな)やドクター・ドゥームを始め、幾つもの変名を駆使して活動している。インディ・レヴェル(自らのレーベル<FUNKY ASS>も含める)においてだが、根強く磐石なファン・ベースもあり、オールドスクール期から活動するアーティストとしては珍しいくらい……いや、彼ほどの膨大な作品リリース量を誇るラッパーはあまりにも希少だ。排泄された多くの作品のなかでも、特に知己カットマスター・カートと共作した『ディーゼル・トラッカーズ』(04年)は驚異の完成度だった。クール・キースは、圧巻・感嘆・脅威・畏怖・敬服などの言葉がマッチする、底知れないクリエイティヴィティを擁するエクセレント/エキサイティングなMCである。
地球上どこを探しても、彼ほどスケベでど下品かつ天才的なMCはいないだろう。あの故オール・ダーティ・バスタードやNippsのそれよりもヘンタイ度数が高いとさえ思う。その黒光りする強烈な個性は、今後もずっと輝き失せることはない。

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