大西順子の記事一覧

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近年、海外における日本人のサクセス・ストーリーを伝えるニュースが多い。特に野球などスポーツ界は、華やかな話題でいっぱいだ。そしてジャズの分野でも、一夜にして"ビッグ・チャンス"をものにしたアーティストがいる。ジャズ・ピアニストの大西順子だ。おそらく、世に出るチャンスをうかがっているまだ無名の実力派が、世界中にはゴマンといるに違いない。しかしいくら才能や実力があろうとも、それをアピールする状況に我が身を投じない限り、チャンスなど掴むことはできない。彼女はこれを積極的に、かつ軽々とやってのけた。その行動力も才能のひとつだろう。
大西順子は67年生まれ、京都出身。4歳からピアノを始める。高校時代、兄が持っていたセロニアス・モンクのレコードを聴いて衝撃を受け、ジャズに開眼。卒業後、両親の反対を押し切って渡米、86年にボストンのバークリー音楽院へ入学する。しばらくは仲間とジャム・セッションに明け暮れる生活が続くが、音楽院はトップの成績で卒業(同窓生にはロイ・ハーグローヴ(tp)がいた)。ニューヨークに移ってから、たまたま立ち寄ったジャズ・クラブで、セッションに疲れたピアニストの代役を買って出て、飛び入り。その瞬間から一躍注目される存在になる。また、故ジョー・ヘンダーソン(ts)、今やベテランのゲイリー・トーマス(ts)らとも共演し、腕を磨く。
92年帰国。都内ジャズ・スポットなどで活動を始める。93年、初アルバム『WOW』で日本ジャズ賞を受賞。ジャズ・レコード・セールスでは珍しく5万枚の売り上げを記録した。そして栄光の94年5月。アメリカの名門ジャズ・クラブ、ビレッジ・バンガードに、邦人で初めての出演を果たす(6日間公演)。この演奏はライヴ・レコーディングされるという幸運にも恵まれ、たくさんのニューヨーカーの目前で、その資質を存分に披露した。95年には出光音楽賞を受賞、96年モントルー・ジャズ・フェスティバルへ出演、99年にはレジナルド・ヴィール(b)を招いてのブルーノート東京公演の実現……など精力的に活動を続けている。
鍵盤に振りおろされる、そのパワフルで抜けの良いピアノ・タッチは天性のものだろう。彼女がまさに日本ジャズ界の牽引力になっていることは、周知の事実だ。アルバムは、彼女を一躍有名にした『LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD』『VILLAGE VANGUARD II』、またビレッジ・バンガード出演のきっかけになった作品『CRUISIN'』、アルト・サックスの巨匠ジャッキー・マクリーンと共演した『hat trick JACKIE McLEAN meets junko onishi』など。 (山本晋平)

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