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ビギー亡き後、ハスラー・ラップ界における真の後継者はジェイ・Zの他をおいていない。また、彼は3年間の刑務所暮らし、3度の銃撃戦を経験するなどヤバめなエピソードにも事欠かないツワモノだ。本名ショーン・カーター、ブルックリン生まれ。ノトーリアス・BIGとは高校時代からの親友である。96年に自主レーベル<ロッカフェラ>を興し、シングル「イン・マイ・ライフタイム」がアンダーグラウンド・ヒット。さらにアルバム『リーズナブル・ダウト』もヒット・チャートのトップ30に入るヒットを記録する。実体験に基づいた生きざまを赤裸々に描くライムと説教調のラップは、彼を新たなストリートの代弁者に押し上げたといえるだろう。パフ・ダディー、ベイビー・フェイス、ブラック・ストリートなどを制作陣に迎えた2ndアルバム(ライフ・シリーズ第1弾)『イン・マイ・ライフタイム Vol.1』は、凶弾に倒れた親友ビギ−に捧げられ、初のミリオンセラーを記録した。翌年の『Vol.2 ハード・ノック・ライフ』では全14曲で12通りのプロダクションを用意し、新進気鋭のティンバランド、スウィズ・ビーツといったプロデューサーを迎え、フューチャー・ファンク・サウンドを威風堂々と展開。そして99年、自伝的なライフ・シリーズの3作目となる(通算4枚目)『ライフ&タイムス・オブ・ショーン・カーター』をリリース、これまでの布陣に加え、新人のトラック・メイカーともタッグを組みさらなる挑戦を繰り広げている。——これまでリリースされたライフ・シリーズ3作のアルバム総売上げは800万枚以上。また、グラミー賞の受賞や他アーティストへの客演も数知れない彼は、今最もセールスを上げているラッパーのひとりだ。
さらにその後も『ザ・ダイナスティ・ロック・ラ・ファミリア』(00年)、『ザ・ブループリント』(01年)、R・ケリーとのコラボ・アルバム『ザ・ベスト・オブ・ボス・ワールズ』(02年)、『ザ・ブループリント2:ザ・ギフト&ザ・カース』と立て続けにヒット作を発売、その知名度と人気に拍車をかけていく。さらに、デスティニーズ・チャイルドのビヨンセとのゴシップや多様な職種を持つ敏腕実業家っぷりもあって、世間的な注目の的になった。
そんなさなか、03年末に発表した『ザ・ブラック・アルバム』を“ラッパー引退”という言葉とともにリリース。人気絶頂期の突然の引退劇にファンならずとも驚きと悲しみに包まれた。
しかし、表舞台から姿を消したと思われていたジェイ・Zは、その後もミクスチャー・ロック・バンド=リンキン・パークとジョイント・アルバム『コリション・コース』(04年)などを次々に発表。『ザ・ブラック・アルバム』収録の「99プロブレムズ」のビデオ・クリップでは引退とかけてラッパーとしての自分を殺していただけに、「あれれ?」という疑問の声が世界中から漏れた。
そんな引退騒動から早3年……。リンキン・パークやR.ケリーやとのコラボレーション、<Def Jam>の社長兼CEOへの就任を経て、“ミスター・ストリート・ドリーム”ジェイ・Zが史上最強のアルバム『キングダム・カム』とともにいよいよシーンへ帰ってきた!! 通算9枚目となる本作はビヨンセ、アッシャー、ニーヨ、ジョン・レジェンドらアーバン・シンガー達を多く召還、さらにはコールドプレイのクリス・マーティンまでも客演&制作で起用している———そこはロック・ミュージシャンとも積極的に交歓して来たジェイ・Zならではの人脈と言えよう。また余談だが、本アルバムからの1stシングル「ショウ・ミー・ワット・ユー・ガット」は、正式リリース以前に何者かによってネット上にリークされ、全米各地のラジオ局が繰り返し放送するという事件が勃発し、それに対しジェイ・Zは誰が音源流出させたのかをFBIに捜査を依頼したといういわく付きのシロモノである。さすがは帝王、スケールが違います。

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