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ア・トライブ・コールド・クエストのQ・ティップのフック・アップを受けて、ファーサイドにトラックを提供することになったジェイ・ディーは、自分に訪れたチャンスを確実にものにした。ファーサイドの代表曲として名高い「ランニン」(95年)を制作、アンダーグラウンド・ヒットさせたのである。
その「ランニン」からすでに彼のオリジナリティは開花していた。ダスティなまでにブーストされた低音や独特のビート感を持ったスネアとキックの鳴りは一聴してジェイ・ディーのそれだと分かるものである。その後、トライブのふたり、Q・ティップとアリが牽引するプロデュース・ティーム=ウマーを中心にして自身の音をストリートに響かせていく。ちなみに、その頃彼が関与した作品群(自身が所属するスラム・ヴィレッジ『ファンタスティック』(96年・未CD化)、トライブの『ビーツ,ライムズ&ライフ』(96年)、同『ラヴ・ムーヴメント』(98年)など)はどれもクラシックだ。
しかし、ウマーはQ・ティップのソロ・デビュー・アルバム『アンプリファイド』(99年)あたりから自然消滅してしまったようす。だが、その後、ソウルクエリアンズというネオ・ソウル色の強いプロダクション・ユニットを、ジェイムズ・ポイザー、クエストラヴ、ロイ・ハーグローヴ、ディアンジェロらと組織、コモン『ライク・ウォーター・フォー・チョコレート』(00年)やディアンジェロ『ヴードゥー』(00年)などの傑作を発表している。
さらに、ソロとしてもさまざまなアーティスト(脱退したスラム・ヴィレッジやフランク・ン・ダンク、ファット・キャットなど)にトラックを提供しているだけでなく、アルバム『ウェルカム2デトロイト』(01年)も残している。また、マッドリブとのコラボ=ジェイリブで『チャンピオン・サウンド』(03年)なども発表、いたるところでその辣腕を振るっている。
そんな多作家にして才人のジェイ・ディーが創出したスモーキーかつ不穏な作風と独特のビート感は、現在では“デトロイト・サウンドの一種”というステイタスを獲得している。B.R.ガンナやプラティナム・パイド・パイパーズ(の主にワジード)に受け継がれたその遺伝子は、これから着実かつ確実に繁栄していくことだろう。
06年2月10日(金)、かねてより患っていた肝臓系の病により死去。<Stones Throw>から自身名義によるアルバム『Donuts』をリリースした直後のあまりにも突然の悲報だった。

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