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ヒスパニック系アメリカ人、グロリア・エステファンの成功物語は、まさにアメリカン・ドリームを地で行くものだ。
キューバからの移民である彼女は、マイアミをベースに音楽活動を行っていたが、同じような出自のミュージシャン、エミリオ・エステファン（現在の夫＆プロデューサー）と出会い、マイアミ・サウンドマシーンを結成する。初期にはスペイン語で歌っていたものの、初の英語曲「Dr.ビート」（85年）でブレイク、続く「コンガ」が世界的なヒットとなる。パーカッション、ホーンといったラテン・フレイヴァーとダンス・ビートを合体させた斬新なサウンドは、アッという間に全世界のダンス・フロアを席捲したのだ。以後、シングル／アルバム・ヒットを連発、「ガッツ・ポーズ・ウェイズ」（89年）からはグロリア・エステファンのソロ名義となり、押しも押されぬスーパースターの座を獲得するに至った。
しかし90年、交通事故により瀕死の重傷を負う。歌手生命を危ぶまれたものの、翌年には見事にシーン復帰——このドラマティックな復活劇は全米の注目を集め、賞賛を浴びた。こうして苦難を乗り越えた彼女は、全曲スペイン語による『ミ・ティエラ〜遙かなる情熱』（93年）を発表、キューバでコンサートを開催するなど、自らのルーツに立ち返っていく……。以降、時代の匂いをうまく嗅ぎ分けつつ、ダンス路線／スパニッシュ路線と柔軟なサウンドを展開しているのは、よく知られているところだ。
彼女の音楽から放射されるポジティヴなエネルギーは、米国最大のマイノリティ、ヒスパニック系アメリカ人を勇気づける。そして現在では、歌手というより国民的英雄として、夢の体現者として、羨望を一身に集めているのだ。