高井麻巳子の記事・ニュース・画像一覧

"普通の女の子集団"といわれたおニャン子クラブだが、「テレビに出たい」と考える時点で、少なくとも"普通"から脱したい指向性はあるわけで。だが、こと高井麻巳子に限っては、そんなヤマっ気すら感じられなかった。100％の純粋無垢さ。"街角でスカウトされておニャン子に入った"という触れ込みがテレビ的な仕込みだったのかどうかは知らないが、自分から望んでおニャン子になったわけでなく——という構図には、誰もが納得するリアリティがあった。
アイドルは基本的に虚構とはいえ、高井の無垢なイメージや「性格がいい」という評判は、おそらく本人の実像とかけ離れたものでなかっただろう。TVカメラの前でだけ演じるほど器用だったとはとても思えない。『夕やけニャンニャン』でのちょっとはにかんだ素振りは、素そのものにしか見えなかった。
おニャン子を卒業してソロになった後、仕掛人の秋元康と結婚して引退——という事態には、ファン・クラブ結成コンサート直後の発表だったこともあり、ファンたちの猛烈な怒りを買った。しかし、今になって冷静に考えれば、まだ人気がありながら芸能界より結婚を選んだのは、いかにも高井らしい自然な流れだったのだ。
話は前後するが、うしろゆびさされ組を経てソロ・デビューした彼女の歌は、ていねいな歌い上げ方が印象的。「シンデレラたちへの伝言」での＜夢見たままで大人になっておくれよ／君だけは＞というフレーズなど、まっすぐな瞳で歌いかけられると、マジで胸がしめつけられるほどだった。「テンダー・レイン」も、彼女らしいやさしさが出た曲として名高い。
おニャン子の熱狂から10数年経ち、イラストレーターやライターとして、何気ないところで名前を見かけたりするようにもなっている。　（斉藤貴志）