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メアリー・J・ブライジのソング・ライティングやヴォーカル・アレンジを手がけ、さまざまなアーティストのアルバムにもシンガーとして参加しているフェイス・エヴァンス。
95年のデビュー・アルバム『フェイス』は、パフ・ダディ(現P・ディディ)が主宰する<BAD BOY>からリリースされたこともあって、商魂たくましいポップな楽曲が並んでいた——と言えなくもないが、結果的にギミックを一切排除した“実力一本勝負”な内容となっていた。幼い頃からゴスペルで馴らしたヴォーカルで、全身全霊をもって恋愛における哀愁や愛おしさを表現する。それは軒並み展開されるミディアム・スローの美メロなバック・トラックと相まって、聴いているこちらまでもが切ないムードでいっぱいにさせられてしまう。その後、2ndアルバム『キープ・ザ・フェイス』ではアップ・リフティングなナンバーで陽気に振舞う面も見せたが、やはりエヴァンスには1stの流れを汲んだ胸を締めつけるようなスロウにこそ、貪欲な表現欲求が感じられるというものだ。
また、夫であったノトーリアス・B.I.G.との離婚/死別、2パックとの浮気疑惑(幾らなんでもこれはウソだ)などなど……私生活でも話題の尽きることのない彼女だが、歌そのもののなかには、まるでこれらの悲しみのすべてが凝縮されているような感じがある。そう、P・ディディが上手く形容したように、フェイスは夜に降る霧雨のような歌声を持つシンガーなのだ。
さらに追記。01年に3rdアルバム『フェイスフリー』をリリースしたあと、(ドラッグ絡みの事件やP・ディディとの不和もあったためか)古巣<BAD BOY>を離れ、前作から4年後の05年に『ファースト・レディ』をリリース。ここで聴けるフェイスの歌声は、もちろん霧雨のような哀切的魅力は変わらないながらも、その人生経験の賜物か、より深い表現力をうちに秘めている。彼女は、聴き手の心の核の部分にまでジワジワと浸透してくるような、そんなマジカルな歌声を操るシンガーだ。

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