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オーネット・コールマン(sax/vln/tp)とともにフリー・ジャズ・ムーヴメントを牽引したコルネット奏者。50年代半ばに、チェリー、チャーリー・ヘイデン(b)、ビリー・ヒギンス(dr)を迎えて結成されたコールマンのカルテットはその鮮烈なサウンドでたちまち評判となり、60年代に全盛となったフリー・ジャズの扉を開いたのだった。
59年の傑作『ジャズ来るべきもの』を始めとするコールマンの最初の7枚のアルバムに参加した後にグループを脱退したチェリーは、アルバート・アイラー、ソニー・ロリンズ、アーチー・シェップといったサックス奏者と共演を重ねる。60年にはジョン・コルトレーン(sax)とともに『アヴァンギャルド』を録音。その後ヨーロッパに拠点を移し、ガトー・バルビエリ(sax)を迎えた自己のグループを率いて代表作の一つとされる『シンフォニー・フォー・インプロバイザーズ』を発表した。
60年代の終わり頃からアジア、アフリカの民族音楽に強い興味を示すようになり、それらを吸収していったチェリーは、自分の音楽にそれらの要素を積極的に反映させるようになっていった。西欧の音楽界において"ワールド・ミュージック"の要素を本格的に持ち込んで音楽的な意味で成功させたアーティストは、おそらくチェリーが初めてだろう。70年代以降も、95年に急逝するまでチェリーはナナ・ヴァスコンセロス(per)らとともに結成した"コドナ"や、コールマン作品を取り上げた"Old And New Dreams"(チャーリー・ヘイデンらが参加)などを始めとする数多くのプロジェクトを通じ、あくなき創造力で自らの音楽世界を深め続けていった。
チェリーの演奏スタイルはもちろんアヴァンギャルドな響きが特徴的ではあるが、実際には正統的なバップに深く根ざした音楽性の持ち主である。リズム、ハーモニー、メロディ、その全てにおいてチェリーはバップを出発点としながらも少しずつ左右上下に視点をずらすことで独自の世界を生み出す。技術面で彼よりも優れている演奏家は多いが、演奏技術以上に注目すべきはチェリーの閃きであり、瞬間の美を記録することの出来るその即興能力にある。自分の感性を優先する演奏家だけに、プレイには多少ムラっ気があるが、ツボにはまった時のチェリーの演奏は筆舌に尽くしがたいほどの美しさを湛えている。 (近藤 陽)

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