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現代の吟遊詩人とでもいうべきだろうか? リリシズム/ナルシシズム全開のピアノで世界中の聴衆を自らの虜にしているブラッド・メルドー。既存のアート・フォームにはあてはまらず、軽やかに“自己の内にある美”を追求する姿には、崇敬にも似た感情を覚える。右手も左手も、おのおの同時進行でメロディ・ラインを、いや音楽観念をかたちづくり、メルドーが真中でまとめ上げ、自己のアドリブとして昇華。一聴するとそれはクラシックのようでもあるが、音楽手法はジャズ———その瞬間的芸術をジャズと呼ぶならば。
6歳からクラシック・ピアノを、14歳からジャズを、その他、ごく普通にザ・ビートルズをはじめとするロック/ポップスが身体に沁みこみ、五感を通して感じたさまざまな体験/感覚/感情を、みずからの美意識というフィルターを通して表現する。これは特別なこと? いや、特別ではないのではないか? 我々も知らず知らずのうちに自分の体験したことを、自分のフィルターを通して何かで表現しているはずだ。言葉しかり、表情しかり、視線しかり……。メルドーはそれがピアノだったのである。そして、人より少し“自己との対話”を熱心にしているのだろう。
なかなか素直に自分の心を見つめ直すのが難しい現代。時間/状況/関係、いろいろな要素が絡み合っている。まるで現代芸術のようにカラフルで複雑なその物体を解きほぐすには、“自己認識”を手に携えて糸口を発見するしかないのではなかろうか? ———彼のピアノを聴きながらこんなことふと考えた。
95年に『イントロデューシング・ブラッド・メルドー』でメジャー・デビュー。ピアノ・ソロ、ピアノ・トリオを中心に活動を繰り広げ、毎年、意欲的にアルバムをリリースしている。