Bill Evansの記事一覧

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“美の探究者”——人は彼をこう呼ぶ。生涯通してピアノ/音楽に打ち込む姿はジョン・コルトレーン(ts)と通じるものがある。80年に51歳の生涯を閉じたが、その直前までピアノに向かっていた。死去というより音楽のために殉死したと言っていいかもしれない。
現在ジャズではあたりまえとなっている、演奏者がまるで会話をかわすようなインタープレイはエヴァンスがうちたてたものだ。その最高傑作が59年から61年まで活動したスコット・ラファロ(b)/ポール・モチアン(ds)とによるピアノ・トリオだ。ちなみにアルバムは『ポートレイト・イン・ジャズ』『ワルツ・フォー・デビー』など。それまで、ドラムは“チーチキ”とリズムを刻み、ベースは4分音符をかき鳴らし、ピアノはソロをとるという、役割がハッキリしたものだった。これはバド・パウエルの流れをくむもので、エヴァンスも最初はその影響を受けていた。それを三人が対等な関係でプレイする新しい関係(“三者一体”とよく表現される)につくりあげたのだ。と同時に、ハーモニーにおいても、それまでは基本的に右手でメロディ/左手でコードを弾くものだったが、マイルス・デイヴィス(tp)と共にモード奏法を研究することで、両手を自在に操り、それまでに無かったヴォイシングをつくりだした。彼は既存の常識を打破し、新しいものを組み上げていく再創造能力に長けているといえる。時代の革命児とはロックでも政治でも宗教でもそうであろう。ただし、エヴァンスは乱暴にではなく、音楽に対する美意識と真摯な態度をもってそれを行っていた………。
一度聴いてみるとわかる——そこには一枚の美しい油絵があるだけ。本物の絵画を見た時と同じような感動と鳥肌(?)があなたを襲うだろう。

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