Albert Aylerの記事・ニュース・画像一覧

60年代に猛威を奮ったフリー・ジャズの嵐の中心的存在だったサックス奏者、アルバート・アイラーの音楽はまさにフリー・ジャズのエネルギーと、一種暴力的なまでのエモーションを体現したスピリチュアルなサウンドであった。洗練と緻密さを追求していたそれまでのジャズの潮流に真っ向から抵抗するかのごとく、メロディのもつ根元的なエネルギーを正面から追い求めたアイラーは、そのアプローチを含め、当時もっとも多くの論議を巻き起こしたアーティストだった。
もともとR&B畑で長年活躍していたアイラーは50年代後半からテナーに本格的に取り組むようになり、軍役を経て、活動の拠点をヨーロッパに移す。64年にはコルネット奏者のドン・チェリーらとカルテットを結成し、ヨーロッパを中心に精力的に活動、音楽家として一気に開花する。この時期にアイラーは、代表作とされる『スピリッツ・リジョイス』や『グリニッチ・ヴィレッジのアルバート・アイラー』などを発表、その演奏の高い精神性はジョン・コルトレーンなどにも影響を与えた。その後のアイラーのサウンドは民族音楽を取り入れるなど実験的な色彩を増していくが、次第に方向性が曖昧になっていった。
70年に発表されたライヴ・アルバムでは絶頂期の輝きを聴くことが出来るが、同年、アイラーはニューヨークのイースト・リヴァーで謎の死を遂げる。　（近藤 陽）