Al Jarreauの記事・ニュース・画像一覧

アル・ジャロウが辿ってきた道はジョージ・ベンソンのそれと実によく似ている。双方ともさまざまな音楽的要素を吸収してきたレヴェルの高いジャズ・ミュージシャンであるが、R＆Bの分野で大きな成功を収めたことから、一番のオハコであるジャズの世界から遠ざかってしまったのだ。——もしジャロウがそのキャリアをもっと早い時点でスタートさせていたなら、彼はおそらく大衆の尊敬を一身に集める——しかし無一文の——ジャズ・シンガーになっていたことだろう。だが、彼は食いぶちを稼いでくれるアダルト・コンテンポラリーやコンテンポラリーR＆Bを歌いながらも、時折そのなかに素晴らしいインプロヴィゼーションを潜り込ませているのだ。さらにありがたいことに、彼の商売用の作品だってどれも非常に出来がよい。
といっても、近年のヒップホップの台頭によって、多くの実力派ソウル／R＆Bシンガーたちの人気に翳りが見られるようになった背景もあり、最近のジャロウはジャズ作品も手がけるようになっている。特に94年の『テンダネス』は息を呑むほど素晴らしい作品であり、ここではその分野の頂点に屹立するシンガーの実力を堪能することができる。
今日もどこかで、ジャロウは聴衆を魅了している——。