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比類なき個性と完全な自由を目指す当然の代償として、彼らは孤立している、とでも言おうか。あぶらだこは82年に結成され、当初は隆盛を極めつつあった東京のハードコア・パンク・シーンから登場したものの、次第に類型的なハードコアから脱し、そうしたシーンからも距離を置き始める。そしてオリジナル・ドラマーのマルがラフィン・ノーズに移籍するため脱退、ヘルプで吉田達也が加入するあたりから、およそ日本、いや世界中のロックを見渡してみてもまったく類似品の見あたらない唯一無二の境地に達してしまったのである。およそ先達も、同胞も、フォロワーもいないバンドの、なんと孤独なことよ。しかしその孤立は名誉ある光に包まれている。
変拍子を駆使した複雑きわまりない曲構成、一見調子外れな奇声でわめきたてるヴォーカル、文語的語彙をちりばめ、少ない言葉の中に不条理で奇怪なイメージを増幅させる歌詞、要点だけを簡潔に提示する短い楽曲、といった要素が衝突し、すさまじい勢いで疾走していくあぶらだこの音楽は、解釈や感情移入や共感を一切拒絶しているかのようであり、といって狂気や病理を感じさせるようなものではなく、どこか人懐っこいユーモアを感じさせるのは不思議、というより不可解というしかない。
彼らのアルバム・タイトルはすべて『あぶらだこ』である。そこには言葉の断片からなんらかの文学的解釈を引き出そうとする日本のロック批評への辛辣な皮肉がこめられているようでもある。彼らのアルバムはジャケットの絵柄から、1stから順に『木盤』『青盤』『亀盤』『釣り盤』『月盤』と通称されている。いずれも余人の到底及ばぬ異様な傑作である。 (小野島 大)

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