高橋優が語る、デビューから10年抱き続ける反骨精神 「僕は幸いにも過去の栄光が全然ない」

高橋優、10年抱き続ける反骨精神

 2010年に『素晴らしき日常』でメジャーデビューした高橋優が、2020年にアーティストデビュー10周年を迎えた。デビュー以来、2013年には日本武道館ワンマン公演を開催、ホールやアリーナ規模でのライブも行うほか、地元・秋田では2016年から『秋田CARAVAN MUSIC FES』を主催するなど、シーンの第一線で活躍。2020年10月21日には通算7枚目のオリジナルアルバム『PERSONALITY』の発売も控えている。

 そんな高橋優は、この紆余曲折の10年間をどのように振り返るのか。ターニングポイントになった作品を振り返りつつ、音楽家としての芯の通った活動スタンスやハングリー精神、創作に対する途切れぬ熱量についてインタビュー。この10年の軌跡が凝縮された、濃密な話を聞くことができた。

 また、インタビューとあわせて、高橋優によるAWAプレイリストも公開。プレイリストには、高橋優が影響を受けた楽曲がラインナップされており、その選曲理由についても話を聞いた(編集部)

高橋優が選曲したAWAプレイリスト

自分の足では歩いていないような感覚に襲われたデビュー初期

高橋優
高橋優

ーーターニングポイントというと、僕が取材者として高橋優を10年間見てきた中で僕の記憶で言うと、2回ぐらい大きなものがあったと思うんですね。

高橋:へえー。教えてくださいよ。

ーー一つは、『僕らの平成ロックンロール②』を出す前です。

高橋:ああー。はいはい。

ーーあの時は「原点に戻る」「本当にやりたいことをやる」としきりに言っていて、その後の『BREAK MY SILENCE』へつながっていったと思うんですけども。そしてもう一つが、『STARTING OVER』を出す時ですね。その前にまったく曲が書けなくなった時期があって、あらためて「原点に戻る」という話を聞かせてもらったので。取材者の目から見ると、大きなものはその2回ですね。もちろん本人は、もっとあると思いますけれども。

高橋:いや、さすが。おっしゃる通りだと思います。

ーーたとえば『僕らの平成ロックンロール②』を作っていた頃は、何を考えていたんですか。あれはデビューから2年後ぐらいだったと思いますけれども。

高橋:今でこそ、スタッフがいないと自分は成り立たないということを重々感じながら歌を歌わせてもらっていて、それを楽しみの一つとしてやらせてもらっているんですけど。デビューした時というのは訳がわからなすぎて、路上ライブをしていただけの人が、いろんな人間関係の中でデビューさせてもらえることになって、ツアーも決まって、全部ありがたかったんですけど、どこかで自分の足では歩いていないような、浮足立っている気持ちになっていたんですね。

 で、『僕らの平成ロックンロール②』は確か、シングルを出そうという話だったんです。実際にその前に、シングルを出してツアーをやったりしていたんですけど、でも不思議なもので、自分の気持ちがフワフワしだすと、お客さんもフワフワした気持ちで見てるんじゃないか? という気持ちになってくるんですね。実際、ホールでやらせてもらっているけど動員が減ったりとか、それは音楽とは関係ないことかもしれないけど、「このままじゃ違うな」と思っている矢先に空席が目立ったりしていたから、「そりゃそうだよ。歌っている本人がこんな気持ちじゃ、いいものが生まれるわけがない」という気持ちの焦りが始まっていたんですね。それで、誰のせいでもないけどこのままじゃいけないということで、「次はシングルじゃなくて、これから書く曲を入れさせてください」と言って、曲を書いて、急ピッチでレコーディングして、『僕らの平成ロックンロール②』を出した。そこらへんでたぶん、自分で軌道修正したんでしょうね。

ーーそうだと思います。

高橋:で、その翌年はがむしゃらで、『BREAK MY SILENCE』を出すわけですけど。

ーーかっこよかったですよ。すべてにおいて容赦のない感じで。

高橋:ありがとうございます。でもあの時、叫びすぎて喉を壊したんですよ。2013年はライブハウスツアー、ホールツアー、最後は日本武道館という流れで統一された1年間だったんですけど、その代償として自分がボロボロになったんですよね。でも性に合っていたというか、アルバムのジャケットに象徴されているんですけど、『リアルタイム・シンガーソングライター』と『この声』はちょっときれいな感じだったのが、『BREAK MY SILENCE』は雨の中で拡声器で叫んでいるものになって、その感じが自分としては性に合っていたので、振り切ってそっちをやってみた。でも「福笑い」とか、ほんわかしているほうの自分も間違いなくいて、4thアルバム(『今、そこにある明滅と群生』)ぐらいからだんだんそのバランスを取り始めてきたというか、心に余裕を持ってできるようになってきた感じです。だから本当に、おっしゃる通りのターニングポイントだったと思います。

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