“恋つづロス”の人にも届けたい 上白石萌音、心の琴線に触れる歌声の魅力

 ゴールデン・プライム帯で初主演を務めたドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系/通称:恋つづ)が大ヒットした上白石萌音。これまで、女優業はもちろん声優や歌手、ナレーターなど声の領域においても幅広く活動してきた。同作で共演した佐藤健も、出会う前の上白石の印象を「声が素敵な方だと思っていた」と話す(参考:TBS公式サイト)。愛され女優・上白石萌音の大きな魅力のひとつである「声」。その魅力を、演技と歌唱の両側面から探った。

魔王の心を溶かした、不思議な包容力

 大きな瞳、まんまるなおでこ、思わず触れたくなるような頬。「笑った顔が誰よりもかわいい」……劇中のセリフがぴったりのチャーミングなルックスで、いまや日本中を虜にしている上白石萌音。

 今回、恋に仕事にまっすぐな新人看護師・佐倉七瀬役を好演した彼女だが、くるくると変わる表情や若さあふれる瑞々しさのなかに、聡明さや芯の強さ、ときには母性をも感じさせる大人の表情が見え隠れする。

 佐藤演じる天堂浬に抱きすくめられながらも、まるで彼女のほうが天堂の心ごと抱きしめているような、あたたかな包容力をもつ女性だ。

 違和感なく高校生役がつとまるほど顔立ちは幼いのに、天堂とのラブシーンで見せた表情には、女優としての幅を感じさせた。それでいて、透き通るような清らかさを、神聖さを失わない、不思議な人。

 そんな彼女の魅力のひとつが「声」。ふんわりとすべてを包み込むような軟質の声は、優しさのなかに、ほんの少し少年性を感じさせる。

 耳よりももっと奥……心にじんわりと響く、聖歌や子守唄のような声だ。

女優が歌うからこその魅力

 『恋つづ』最終話、天堂に「ばーか!」と言い放った七瀬にキュンとした人も多いだろう。上白石は声の使い分けが実にうまい。ブレスや言葉じりにも色を持たせることで、感情の機微を伝える。

 彼女が、声優の経験から得たという「声色の調整」について語ったインタビューが興味深かった。「5歳若めで」「色を明るく」といった、センシティブな表現の世界だという(参考:まんたんウェブ)。

 上白石が織りなす声色、表現力の高さは、もちろん歌唱においても活かされている。彼女の歌を聴くと、女優が歌う意味、女優が歌うからこその魅力を考えさせられる。

 当時10代の上白石が、小坂明子氏の名曲「あなた」をカバーした歌唱映像を観たことがある。

 「あなた」への想い、過ごした日々、叶わなかった夢……潤んだ大きな瞳が、歌詞には描かれない世界を見つめ、今にも泣きそうに揺れている。クセのない、まっすぐすぎるほどの歌唱。詞のひとつひとつが、切なく胸を刺す。

 まさに女優・上白石萌音が演じる、数分かぎりのモノドラマだった。

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