DEAN FUJIOKAと観客が手を取り合って生んだ新たなヒストリー アジアツアー東京公演レポ

ライブから感じる、DEAN FUJIOKAの今

 今年1月に自身2枚目のアルバム『History In The Making』を発表し、2月から初のアジアツアー『DEAN FUJIOKA 1st Asia Tour 2019 “Born To Make History”』をスタートさせたDEAN FUJIOKA。その東京公演最終日が3月30日、NHKホールで開催された。

 今回のツアーでは、国際派俳優として活動する彼のキャリアを反映するかのように、国内外を含む11都市で13公演を敢行。中には過去にライブで訪れたことのなかった日本の土地や、彼がモデル/俳優デビューを果たした香港、上海、俳優として評価を得た台湾も含まれている。この東京公演は、香港や上海、台湾といった海外でのライブに向かう前の日本でのファイナル公演。ギターロックやヒップホップ、エレクトロニックミュージックなどを筆頭にボーダーレスな音楽要素を楽曲に詰め込んできた彼の今が伝わってくるような夜だった。

 まず印象的だったのは、冒頭のオープニング演出だ。今回は初のアジアツアーとあって、中国の時代劇風のオープニングSEが会場に鳴り響くと、そこにアーメンブレイク風のドラムビートが重なり、サウンドプロダクションが一気にEDM以降のクラブミュージックに変化してDEAN FUJIOKAがステージに登場。過去の様々な音楽への興味を反映させながら、同時にそれを“今のもの”にアップデートする彼らしい方法で、今のアジアの雰囲気が表現されていく。そのまま「Permanent Vacation」がはじまると、早速「東京!」と観客を煽り、大歓声の中でフューチャーベース風の揺れるシンセなども取り入れたモダンなエレクトロ/ポップサウンドが会場に充満。中盤以降はDEAN FUJIOKAがシンセを担当し、バンドと観客を「もっともっと!」と手で煽って、演奏の迫力や熱気がぐんぐん増していく。こうした1曲目のパフォーマンスにも顕著な通り、この日のライブは過去の公演と比べても、バンドとのより親密な駆け引きの中で演奏を盛り上げていく傾向がますます顕著になっており、ミュージシャンとしてのキャリアを重ねて進化した現在の彼らしい雰囲気だった。

 以降も様々な音楽性を横断する、DEAN FUJIOKAらしさが詰まった楽曲を次々に披露。観客のカラフルなペンライトに包まれながらはじまった「Speechless」では途中トラップ風のフロウを披露し、EDMスタイルの「S.O.F.」ではマイクスタンドを掲げて観客を煽るなど、サウンド/ライブパフォーマンスともに様々な表情を見せていく。MCでは国内外を含むツアーらしく冒頭に英語のMCを披露すると、その後日本語で「みんな来てくれてありがとう! 後悔はさせない。最後まで楽しんでいってください!」と伝え、「Thirsty」を皮切りにデビューアルバム『Cycle』期の楽曲を5曲続けて披露するメドレーへ。「Midnight Messenger」のmabanuaによるリミックスバージョンも加えながら、UKロック、エレクトロポップなど様々な音楽性が会場を覆う。「Sweet Talk」では原曲以上にメロディアスなギターフレーズが追加されるなど、ライブならでは、そして今だからこその工夫がされていることも印象的だった。冒頭に四つ打ちのビートを大胆に取り入れ、サビで原曲にも通じるジャズ風のアレンジに戻った「April Fool」では、途中バンドメンバーの紹介をはさんで、DEAN FUJIOKAがビートボックスをはじめると、盛り上がる観客に向けて「この世で一番飛べるのは、DEAN FUJIOKAのダブステップ!!」と告げて、会場をさらに盛り上げる。周知の通り、これはどついたるねんのライブパフォーマンスをきっかけにSNS上で話題となったフレーズ。それを自身のステージに取り入れたライブならではの演出に、歓声が止まらなかった。

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