欅坂46には“主人公 平手友梨奈”のほかにもう一つのドラマがあるーー長濱ねるの卒業がもたらす変化

 長濱ねるが、欅坂46からの卒業を発表した。欅坂の中でも1タレントとして成功し、「欅坂46」の名を外へと発信し続けてきた。そんな長濱が卒業することで、グループにいったいどんな変化をもたらすのだろうか。

欅坂46『黒い羊』(通常盤)

 長濱の卒業は一見電撃的でもあるが、欅坂の8thシングル『黒い羊』が発売される前から、グループでの番組出演への欠席が目立っていた。「黒い羊」のMVには、平手友梨奈とメンバーが、ぶつかり合ったり抱きしめたりとお互いの痛みを分かち合う模様を収録。しかし、長濱は“就職活動がうまくいかず絶望している役”として、一人自らの足で階段を降りて行く姿が映し出されている。これが、みんなとは違う“白い羊”の体現なのか、別の生きる道を選択したということなのかと、ファンの間で話題となる中、カップリングでソロ曲「否定した未来」を歌ったことで、長濱の卒業を示唆する声が目立っていた。

 人見知りなメンバーが多い欅坂の中で、持ち前の賢さと人当たりの良さで、バラエティ番組など、グループ内外の仕事で活躍の場を広げてきた長濱。長濱の卒業に関して菅井友香がブログに「きっとねるがきっかけで欅坂を知ってくださった方も沢山いらっしゃるんじゃないかな。いっぱい「ありがとう」って伝えたいです」と綴っていたが、メンバーも感謝するほど、欅坂の親善大使的な役割を果たしていた。

 欅坂には、大きく分けて2つのドラマがある。平手を中心とした波乱万丈なドラマと、加入した経緯が一人だけ異なる長濱のドラマだ。この2つのドラマが同時進行しているのが、欅坂の面白さの一つと言えるが、一般的には平手サイドの物語がドラマチックだと思われるだろう。しかし、欅坂を知れば知るほど長濱サイドの物語こそが、実はエモーショナルだということがわかる。一つのグループに二人のカリスマがいるとはいえ、The Beatlesのジョン・レノンとポール・マッカートニーのようなライバル関係ではなく、グループ内でのパフォーマンスとグループ外の仕事という各々のフィールドで活躍しているところが魅力的だ。一方で、二人とも大きな負担を一身に背負ってしまっているのかもしれない。そういった意味で長濱は、グループの歯車として重要なメンバーだったのは言うまでもない。織田奈那や土生瑞穂をはじめとしたメンバーのブログを読んでいると、長濱の懐の深さと優しさ、そんな背中を見て教わったことがたくさんあるということが伝わってくる。長濱は欅坂の中で、“光”としてメンバーの心の拠り所になっていたのだろう。また、小池美波が卒業を聞いて最初に「ダメ」と送ったことや、渡邉理佐の「悔しい」という思いなど、メンバーの引き止められなかった無念さが、長濱の存在の重要性を象徴している。

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