やなぎなぎが語る、自身のキャリアと現在のモード「“音楽を作る理由”は昔からあまり変わってない」

やなぎなぎが語る、自身のキャリア

 やなぎなぎが、2019年1月9日にベストアルバム『やなぎなぎ ベストアルバム -LIBRARY-』と『やなぎなぎ ベストアルバム -MUSEUM-』をリリースした。

 同作はアニメ作品のテーマソングを中心に各15曲を選曲。それぞれに新曲も用意されており、『-LIBRARY-』には「BiblioMonster」、『-MUSEUM-』には「continue」が収められているほか、ライブツアー『ナッテ』とコンセプチュアルライブ『color palette 〜2018 Black〜』から映像・ライブ音源も収録されるなど、豪華仕様となっている。

 今回はこのベスト盤2作品について、やなぎなぎにインタビュー。改めて自身のキャリアを振り返るとともに、新曲やライブ映像・音源、現在のモード、今後の展開についても語ってもらった。(編集部)

「『ビードロ模様』のことは片時も忘れたことがない」

ーー今回の『-LIBRARY-』と『-MUSEUM-』は、やなぎさんにとって初のベスト盤になりますね。

やなぎ:ひとつひとつの作品を制作する時はそこに集中して作ってきたので、それを別の形でまとめようという気持ちは私の中に全然芽生えてなかったんです。でもファンの方から「なぎさん、そろそろベストを出さないんですか?」と言われるようになって「そういえば……」と思って(笑)。しかも今までに結構な枚数の作品を出してるので、今回は2枚同時リリースという形になりました。

ーーやなぎさんは2012年にNBCユニバーサルからメジャーデビューされてから、現在までにシングルを19枚、アルバムを4枚発表されてます。ここまでの活動を振り返って、あらためて特別な気持ちを抱いたりは?

やなぎ:制作してる時はとにかく「新しいものを作るぞ!」という気持ちしかないので、自分ではこのベスト盤の選曲をしてるときに「こんなにたくさん作ってたんだ」と思ったぐらいで。でも、あらためて振り返ってみると、ありがたいことにこんなにコンスタントにアルバムやシングルを出させてもらえてたんだなあと思いました。ここまでやらせていただけることはなかなかないことでしょうし、私は自分のワガママを通してもらうことも多いので(笑)。

ーーそうなんですね(笑)。

やなぎ:パッケージのデザインを決める時も、まず最初に言えるだけの無茶を言って、そこから引き算をしていく感じなんです(笑)。「ここまで言っておけば、もしそれが無理だったとしても、ここまでは出来るかも……」とか計算したりして。そしたら途中からだんだん私が提案される側になってきて、最近ではレーベルのスタッフの方から「こんなことも出来ます!」と言われるようになりまして(笑)。なので自分の好きなことをたくさんやらせていただいてますね。

ーー今回のベスト盤で言うと、どんなところで自分の好きなことを詰め込んだのでしょう?

やなぎ:今回は選曲も自由にやらせていただいて、もちろんシングルの表題曲は全て収録してますし、その他にもカップリングの中でも特に思い入れのある楽曲や、ライブでの定番曲も入れさせてもらったんです。例えば「テトラゴン」(2ndアルバム『ポリオミノ』収録曲)はシングルだけで私の作品を辿ってきた人にはきっと馴染みのない曲だと思うんですけど、ライブでいろんなアレンジを披露してきた思い出深い曲でもあるので、ベスト盤には入れたくて。なかなか絞り切れなかったですけど、今まで自分が出した曲の中で今の自分がベストと思える曲を集めました。

ーーシングルのカップリング曲で言うと、「You can count on me」と「mnemonic」は両方とも6thシングル『アクアテラリウム』に収められていたもので、このシングルからは表題曲を含む3曲全てが今回のベスト盤に収録されています。

やなぎ:「アクアテラリウム」は『凪のあすから』のEDテーマで、初めて石川智晶さんとご一緒して作った曲なんですけど、その時に作品からも智晶さんからもすごく影響を受けて、「mnemonic」はその刺激を受けて書いた曲なんです。「You can count on me」は自分のライブをどのように育てていくかを考える中で「絶対にみんなと楽しむことだけを意識した曲を作ろう」と思って作った曲で。その時期はデビューからいろいろと活動してきたことで、さまざまな影響を受けたり、ファンの方とのライブでの距離感が出来上がってきた頃だったんですよ。

ーー今回のベスト盤はそれぞれ『-LIBRARY-』『-MUSEUM-』というタイトルがついてますが、こちらにはどんな意味が込められてるのでしょうか?

やなぎ:今回は2枚同時リリースになるので、両方とも同じベスト盤という枠にありつつも、それぞれ独立して聴けるものにしたかったんです。『-LIBRARY-』の方は自分で読み返したい、聴き返したいと思える曲を中心に選んで、『-MUSEUM-』の方は遠くから「いいなあ」と思いながら、ずっと眺めたくなる曲を中心にセレクトしました。

ーー自分の中で楽曲に対する距離感の違いがあるんですね。

やなぎ:そうですね。例えば『-LIBRARY-』に入ってる「You can count on me」は、飾っておくというよりも、聴いたり、歌ったり、ライブで演奏することによって変化していく曲だと思いますし、『-MUSEUM-』で言えば「瞑目の彼方」は綺麗に飾っておきたいというか、最初の印象を無くしたくないという印象がありますし。そういうイメージで曲を振り分けました。

ーーいわば「ライブで成長していく楽曲」と「音源として愛でたい楽曲」という意味合いでの分け方にもなっていると。どの曲も思い入れは深いと思いますが、あえてターニングポイントや転機になった曲を選ぶとしたら?

やなぎ:そうですね……「瞑目の彼方」を鷺巣(詩郎)さんと一緒に制作したときは、この曲自体、私がデビュー前に作っていたような北欧のエレクトロニカという自分のルーツに近い曲調だったので、そこでデビュー前の自分やデビュー後に歌ってきた曲のことを考えたことがあって。その時に、自分の中にある「音楽を作る理由」は昔からあまり変わってないんだと改めて思ったんですね。

ーーその理由というのは?

やなぎ:私は昔、人に何かを伝えることがすごく苦手だったので、それなら自分でゼロから何かを創作して、それが人に伝わっても伝わらなくても自分というものを形にして残しておきたいと思って、音楽を作り始めたんですね。その頃に作っていた曲はエレクトロニカだったり、わりと自己満足というか、別に誰かが聴いて退屈だと思ったとしても「自分が聴きたい曲はこれだ!」というものが詰まっていて。その後にデビューして、いろんなジャンルの音楽をやってきましたけど、自分が今聴きたいものを自分のために作っているという部分は、今でもあまり変わってないことに気づいたんです。

ーー今までのシングルの表題曲はほぼ全てアニメ作品とのタイアップ曲ですが、その条件の中でも「自分の聴きたい音楽」という軸はちゃんと貫いた上で制作してこられたと。

やなぎ:そうですね。歌詞を書くにしても、作品に寄り添いはしますけど、その作品そのものを書いてるわけではなくて、作品から受けた影響で「自分だったらこういうのがいいな」という風に、作品のスピンオフみたいなイメージで仕上げていくので。なので、もちろん作品のことは意識しますけど、常に「自分ならこういうものが観たい/聴きたい」というものを作ってます。

ーーやなぎさんはオリジナルアルバムを制作する際も、それまでのシングル曲を収録しつつ、アルバムの最初と最後に必ず自作曲を置いてコンセプチュアルな内容でまとめるじゃないですか。今回のベスト盤でも、そういう意味で工夫されたところはありますか?

やなぎ:今回もただのベストというわけじゃなく、『-LIBRARY-』と『-MUSEUM-』というタイトルの作品として作ったので、曲順に関しても『-MUSEUM-』は博物館を巡るようなイメージで順路を辿るように並べています。例えば、一番初めには博物館の目玉とは言わないまでも目を惹くものが置いてあって、最後には一番の目玉になる展示が置いてある、という感じで。私自身が見せたいものをこういう順路で見てほしい並びになってます。

ーーその例えで言うと、『-MUSEUM-』の一番最後に収録されてるのはデビュー曲の「ビードロ模様」なので、やなぎさんにとってはこの曲が一番の目玉曲ということですよね。やはり自分の中で特別感があるのでしょうか。

やなぎ:やっぱり一番付き合いの長い曲ですし、「ビードロ模様」のことは片時も忘れたことがないですから(笑)。今でも思い出すんですけど、このシングルの発売日(2012年2月29日)に(東京で)めちゃくちゃ大雪が降ったんですよ。雪が降る中、お店まで行って、CDが並んでるのを見たりしたので、余計に印象に残ってるんです。

ーーこの曲はTVアニメ『あの夏で待ってる』のEDテーマでしたが、『-MUSEUM-』にはOVA『あの夏で待ってる 特別編』のEDテーマ「point at infinity」も収録されています。『あの夏』はやなぎさんにとっても印象深い作品だった?

やなぎ:そうですね。初めてのタイアップだったということもありますけど、作品のこともすごく好きになりましたし、思い入れはすごくあります。聖地(アニメの舞台)になってる長野の小諸市も、夏になるといまだに人が訪れるみたいですし、イベントも開催されたりしてますし、長く愛されてる作品ですよね。

ーーもう一方の『-LIBRARY-』の曲順はどのようなイメージですか?

やなぎ:『-LIBRARY-』は「読み返したくなるもの」がコンセプトなので、ひとつの文学作品のようなイメージなんですけど、1曲目は「ユキトキ」のスタートダッシュでバーッと始まって、最後はライブの定番曲になってる「You can count on me」で締めているので、読み終わるとめちゃくちゃみなぎる作品というか(笑)。みなさんにはこれを聴いて元気になってもらいたいですし、繰り返し聴いてもらえたらと思っています。

ーーあと、『-LIBRARY-』は「ユキトキ」、『-MUSEUM-』は「over and over」が1曲目なので、両方とも北川勝利さんの提供曲で始まるんですよね。

やなぎ:そうなんです。どちらも北川さんの曲から始まって、最後から2番目の曲も北川さんの曲(「春擬き」と「ターミナル」)という構成になってます(笑)。北川さんは曲の世界にグッと引き込むのがお上手な方で、曲の中に「これから物語が始まるぞ!」っていうワクワク感がすごくあるので、作品の導入としては一番というイメージがあって。「今から何が始まるんだろう?」という気持ちにしてくれるんですよね。

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