Eveはより大きな舞台へと踏み出していく 人々を巻き込む“強さ”感じた「メリエンダ」O-EAST公演

Eveは充実の活動経て大きな舞台へ

 インターネット上にアップした動画で一躍注目を集め、昨年リリースされた4thアルバム『文化』も話題を呼んだシンガーソングライター、Eve。彼の初の東名阪ツアー「メリエンダ」の最終公演が、8月16日、東京・TSUTAYA O-EASTで開催された。

 今年に入ってからも歌い手・Souとのコラボ・アルバム『蒼』をリリースするなど新たな可能性を追求してきたEveだが、自身にとって最大規模となるこの日のステージも、彼のさらなる進化が感じられるものだった。開演前には観客に今年3月のワンマン公演「お茶会」のときとは異なる腕時計型のLEDリストバンドが配布され、ステージ前面に張られた巨大な白幕に「ひとつめ様」を筆頭に過去のMVに登場した様々なキャラクターが映し出される。そして映像内で豪雨の中轟くカミナリに合わせて観客のリストバンドが光を放つと、バンドメンバーとEveが幕の奥に登場して「トーキョーゲットー」でライブをスタート。続く「アウトサイダー」では、風圧まで感じられそうな力強いバンドの演奏に合わせてステージと観客を隔てる幕に亀裂が入り、幕が上がるとEveの姿が。Eveが観客のもとへ駆け出して勢いそのまま「楽しんでって!」と告げると、観客から大歓声が巻き起こる。Wabokuによるアニメーションを使った映像や観客も参加する照明演出、そしてバンド編成でのダイナミックな演奏が融合し、序盤からエンターテインメント性の高いステージが展開されていった。

 もともとニコニコ動画の歌い手として人気を博してきたEveは、作詞作曲、デザイナーなど様々に活動を広げながら、これまで4枚のフルアルバムを発表。歌い手でありながら様々なロックバンドと比べても引けを取らないソリッドなギターロックを中心とした音楽性と、不思議と耳に残る歌声で作品ごとに人気を広げると、近年はオリジナル曲の割合を増やし、昨年の4thアルバム『文化』ではついに全曲オリジナル曲で自身のパーソナルな感情をより反映した音楽性を手にしている。また、そうした近年のどの楽曲でも特徴的に感じられるのは、誰しもが持つ苦悩や葛藤といった負の感情も肯定して、多くの人々を巻き込んでいく「強さ」が感じられること。観客に正面から向き合って、目の前の人々を引きつける魅力に溢れたこの日のライブは、近年のそうした変化と繋がるような雰囲気だ。

 中盤以降は『蒼』でSouに提供した「チョコレートタウン」のセルフカバーを経て、「デーモンダンストーキョー」「Dr.」などを次々に披露。バンドマスターを務めるNumaを筆頭にしたバンドの演奏はソリッドかつタイトで、自身もステージを左右まで広く使って観客を自分の世界にぐいぐい巻き込んでいく。観客が腕に装着したリストバンドも楽曲ごとにカラフルに光って会場を包み、キャリア最大規模のワンマンでありながら、むしろこの規模の会場ではすでに小さくも感じられる巨大な熱気を生み出していた。そうしたロック曲での逞しい魅力があるからこそ、本編終盤にMC幼少期の思い出を語った後に披露された「ホームシック」のようなメロウな楽曲では、繊細に歌われる感情のコントラストが鮮やかに浮かび上がる。また、楽曲に込めた感情が観客にすっと伝わってくるような、親しみやすさとオリジナリティが同居した歌声はやはり印象的で、自身の感情がよりリアルなかたちで詰め込まれた『文化』以降の楽曲では、その魅力がさらに引き立つ雰囲気も感じられた。

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