牧野由依、リベンジの『LIVE CONCERT』で完全復活! “気持ちいい余韻”残した一夜を振り返る

牧野由依『LIVE CONCERT』で完全復活

「今日はみなさん祈るように私の一声目を聴いてくださったと思います……心中お察しします。でも、一言言わせてください。みなさん、ただいま!」(6月10日公演、アンコールMCより)

 牧野由依が6月9日、10日にAiiA 2.5 Theater Tokyoで行った『ポッカサッポロ 富良野ラベンダーティー Presents YUI MAKINO LIVE CONCERT「WILL you play with me?」』は、彼女が“完全復活”、いや、それ以上のパフォーマンスを携えてステージに戻ってきた記念すべき日だった。本稿では最終日の10日公演を軸に、この日のライブを振り返っていく。

 牧野は昨年7月、同会場で行ったライブの2日目に、これまでダメージの蓄積していた喉が限界を迎えてしまうというアクシデントに見舞われた。以降、歌手活動を休止する事態になったが、治療と本人の懸命な努力も実り、3月にはミニアルバム『WILL』をリリースするまでに復活した(参考:牧野由依はなぜ復帰作で“声”をテーマにしたのか)。とはいえ、MCで「(昨年と同じ会場になったのは)正直複雑な気持ちで。これまでにないくらい、今の今まで私は自分のことを信用できませんでした」と語っていたように、ライブにはまだ不安があったようだ。

 公演は雨の音のSEが流れるなか、ステージ中央に設置されたグランドピアノに牧野が座り、同じ歌い手だからこそ“声”を失うつらさを十分知っている岡本真夜が、牧野のために書き下した「song for you」を歌い上げる。いきなり声を張り上げるのではなく、ゆっくりと声を立ち上げながら客席へ向けて歌う姿は、緊張感を持った客席や自分へ向けて、優しく「大丈夫だよ」と語りかけているように思えた。

 そんな安心感を与えたあとは、松ヶ下宏之(Key/Gt)、三宅亨(Gt)、デンジャー今西(Ba)、誇太朗(Dr)、佐藤帆乃佳(Vn)、伊藤修平(Vc)という豪華バンドメンバーに囲まれ、「ウイークエンド・ランデヴー」「お願いジュンブライト」と和やかな楽曲が続く。MCではポッカサッポロ「富良野ラベンダーティー」のラベンダー生産地である北海道上富良野町のPR大使に就任したことを明かしながら、次の曲である「ジャスミン」のタイトルコールをすると、客席からは歓声が響き渡る。

 この時点で「もう大丈夫だ」と安心していたが、それだけで終わらないのが牧野らしい。「スピラーレ」「アルメリア」と歌い上げる系の楽曲が続き、安心どころかさらに上がったようにも聴こえる歌唱力に驚かされた。その後、「横顔」の弾き語りではウィスパーボイスを丁寧に使い分ける巧さをみせ、「アムリタ」ではダイナミックな歌声を響かせる。定番のバンド編成にストリングス隊が加わったことで、このあたりの楽曲が持つ美しさも、一層際立っているように感じた。

 続くクラシックコーナーでは、弾き方のメリハリや手の交差など、視覚的にも楽しませることのできるギロックの「雨の日の噴水」から「What A Beautiful World」の弾き語りへとスムースに繋げていく。作曲者の矢野博康が牧野に「この曲の最終形態は弾き語りだね」と言っていたそうだが、まさにその“完成”を最良の形で見届けることができた。

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