福山雅治、東京ドームで見せた挑戦的なステージ 柴 那典が新曲&未発表曲から最新モードに迫る

福山雅治の“挑戦的”なステージ

 さらには、スラップベースとホーン隊が牽引するテクニカルなアンサンブルに乗せてポップスターの生き様を戯画的に描く歌詞を歌う刺激的な未発表曲「Pop star」、そして先日配信リリースされたばかりの劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』主題歌の「零 -ZERO-」へと続く。ラテンやフラメンコの要素を絶妙に取り入れた楽曲は、ドームという大きな会場でも大きな熱狂をもたらしていた。

 「立て続けに新曲と未発表曲を聴いていただいて、この圧倒的なファイナル感と一体感、ありがとうございます! 気をよくしております!」と満足気な福山は、「さらに新曲やっていいですか」と、ギターバンジョーを抱え、ドラマ『正義のセ』(日本テレビ系)主題歌の「失敗学」を歌唱。口笛のイントロから目まぐるしく展開するポップソングに会場からは大きな手拍子が巻き起こり、続く「聖域」で盛り上がりはクライマックスに。壮大な「明日の☆SHOW」からスケール感のあるロックバラード「Dear」で本編を締めくくった。

 アンコールは「もっともっと笑顔が見たいんですよ」と「その笑顔が見たい」をあたたかい包容感の中で披露。続く「Peach」ではステージ狭しと走り回り、コールアンドレスポンスを繰り返し、オーディエンスに水を振りかけるサービス精神を見せる。

 大団円のムードで会場を満たした福山は、最後にセンターステージに移動し、「少年」を弾き語る。アリーナとスタンドを埋め尽くしたオーディエンスの合唱、そして幸せそうな笑顔と共に3時間超のステージを締めくくった。

 「今日はファイナルですけど、今年はまだまだ終わらないんですよ」

 MCにて福山はそう告げていた。

 その言葉通り、このツアーはこの日でファイナルを迎えたが、それは同時に一つの通過点でもある。

 昨年12月に行われた『福山☆冬の大感謝祭 其の十七』、1月から4月末にかけて行われた約3年ぶりのアリーナツアー『WE’RE BROS. TOUR 2018』、そしてこのドームツアーと、半年にわたって福山雅治はライブ三昧の日々を繰り広げてきた。

 そして、それは曲作りの日々と並行したものだった。昨年秋にシングル『聖域』をリリースした際のインタビューでも、新作アルバムに向けて曲作りを進めていることを明かしていた福山雅治。実は「暗闇の中で飛べ」や「漂流せよ」も、昨年末の『福山☆冬の大感謝祭 其の十七』以降、たびたびライブで披露してきた楽曲だ。

 そこには自身の今のモードを生演奏で最初にファンに届けようという意図もあるのだろう。そういう意味でも、とても意欲的、とても挑戦的なステージだった。

 エンターテイナーとしての期待に応えつつ、現在進行形のミュージシャンシップを見せるドームライブ。それが数万人に新たな熱狂をもたらしていたのを体感して、とても興奮した一夜だった。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば」Twitter

■セットリスト
『FUKUYAMA MASAHARU DOME LIVE 2018 -暗闇の中で飛べ-』
2018年5月27日(日)東京ドーム

1. 幸福論
2. vs.2013 ~知覚と快楽の螺旋~
3. それがすべてさ
4. IT’S ONLY LOVE
5. jazzとHepburnと君と
6. 漂流せよ
7. 虹
8. 蜜柑色の夏休み
9. あの夏も 海も 空も
10. クスノキ
11. トモエ学園
12. 道標
13. 友よ
14. HELLO
15. 暗闇の中で飛べ
16. Humbucker vs. Single-coil
17. Pop star
18. 零 -ZERO-
19. 失敗学
20. 聖域
21. 明日の☆SHOW
22. Dear
<アンコール>
23. その笑顔が見たい
24. Peach!!
<Wアンコール>
25. 少年

■関連リンク
福山雅治オフィシャルサイト

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