THE ORAL CIGARETTES、新たな“逆転劇”のきっかけ掴むか 人気拡大の2つの要因を考察

 そして、オーラルを語る上で欠かせないのが“BKW”というワードだ。“BKW”とは“番狂わせ”の略語。それを掲げ始めたのはバンドがメジャーデビューしたタイミングだったが、これが言霊というのだろうか。例えば着実にライブ会場のキャパシティを拡大させていったこと、そして山中の声帯ポリープ発覚~復活までの流れなど、“逆転劇”“復活劇”といえるような出来事とともにこのバンドは歩みを重ねていくこととなった。ハングリー精神を隠さない人たちが有言実行を果たしていく様子は、見ているとスカッとするし、勇気をもらうこともできる。そうして観る者の感情に訴えかけ、共に成長していくような物語を築くことによって、ファンとの関係性をより深いものにさせているのではないだろうか。余談だが、この“BKW”は物販で販売されているグッズにも用いられており、そのロゴマークはかなり目立つ。彼らを応援するファン同士を見つけやすくする、あるいはファン以外の人の印象に残りやすいデザインにすることも、人気を拡大させるうえで重要な戦略の一つなのかもしれない。

 こうしてバンドシーンにおける存在感を確立していったオーラルが、今夜、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演し、「BLACK MEMORY」を披露する。2017年6月にはKEYTALKとともに「VS LIVE」という番組内企画に出演したが、単独での出演は今回が初。お茶の間にもその爪痕を残し、バンドシーンの外側にまでその名を轟かせることができるのだろうか。今夜の放送が新たな“逆転劇”のきっかけになることを期待したい。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。

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