LUNA SEAはまばゆい光を放ち続ける 結成29周年迎えた武道館ライブを見て

LUNA SEA、結成29周年武道館レポ

SUGIZO

 LUNA SEAというバンドは不思議だ。ステージから放たれるモノは、音だけではない。言語化が難しいほど、密度の高い崇高なエネルギーのような“なにか”を身体に感じることができるのだ。そして、綿密に練り上げられたアンサンブルの構築美に飲み込まれてしまう。しかしながら、高度な技術ではなく、疾走していくアンサンブルがぴたりと止まるブレイクやキメの瞬間に、あり得ないほどの情報量が詰め込まれたLUNA SEAらしさを感じるのだから、本当に不思議なのだ。

 ラストスパートの「STORM」「TIME IS DEAD」「ROSIER」はそうしたLUNA SEAだから成せる業が炸裂していく。ロックバンドにおけるグルーヴやダイナミックレンジのほかに、クラシック音楽でいうところの「フォルテ=強く」「ピアノ=弱く」を自在に操ることができるバンドだと思う。音の大小とはまた違うところでの緩急、ニュアンスが絶妙だ。イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ……それぞれ違うテンションで攻め立てていく。音量を下げずにニュアンスだけ弱くする、音量を上げずにテンションを強くしていく、どうしても機材頼みの表現になりがちなロックのライブで、そんなことが演奏だけでコントロールできるバンドなんて、世界的に見てもそうはいないだろう。

J

 本編ラストは「BLACK AND BLUE」。SUGIZOのファンキーなカッティングに絡みついていくアンサンブルとRYUICHIのボーカルが、ライブだと異様なほどセクシーに聴こえる。「ラララ……」と合唱が武道館に響き渡り、客席から上がった無数の手が右左に揺れ、愛に包まれたエンディングを迎えた。普段のステージではほとんど黒しか身につけることがないSUGIZOだったが、この日の後半纏っていた印象的なロングジャケットは、同曲のコンセプトを基に地球平和と難民問題を表したものであったと、「健常者も障害者も分け隔てなく着れるデザイン」のコンセプトを掲げるブランド・tenbo(テンボ)から後日アナウンスされた。この日、多くの楽曲で手にすることの多かったギター、Navigator SUGIZOモデル“N-ST SGZ Custom -D2-”には、“SAVE SYRIA”の文字が大きく入れられている。

真矢

 「Happy Birthday Dear LUNA SEA」ーーアンコールは、29歳の誕生日を祝うオーディエンスの大合唱で迎え入れられる。終幕から“REBOOT”までの期間もファンクラブである“SLAVE”はずっと存続していた。本当の意味でバンドとともに歳を重ねてきたファンも少なくはないはず。「やっぱり、音楽って愛に満ちてるよね」RYUICHIが口を開き、メンバーひとり一人が感謝の言葉を述べていく。SUGIZOがオフマイクで「ありがとうー!!」と叫んだかと思えば、いつのまにか「先生」と呼ばれることが定着した真矢が、SUGIZO専用の“風”を受けて会場全体を和ませる。鬼気迫る演奏とは裏腹に、そんな自由奔放さもLUNA SEAの大きな魅力だ。

 最後は怒涛の「BELIEVE」「PRECIOUS…」、そして、ボルテージとともに銀テープが宙に放出された「WISH」で大団円を迎えた。

 終演後、360度囲んだスロープをゆっくり歩き、手を差し伸べるファン全員と丁寧に握手を交わしていくSUGIZOの姿が印象的だった。そして、ステージ中央に戻った彼は深々と、本当に深々と頭を下げる。それは、あたかも時が止まったような、ものすごく長い時間だった。

 来年は30周年を迎えるLUNA SEA。新たなツアーへ向けての意気込みも口にしていた。なにより、「今世紀最大のフェスにしたい」と語っていた『LUNATIC FEST. 2018』はもうすぐだ。

(写真=(株)LUNA SEA提供)

■冬将軍
音楽専門学校での新人開発、音楽事務所で制作ディレクター、A&R、マネジメント、レーベル運営などを経る。ブログTwitter

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