ドラマ『花のち晴れ』が描くそれぞれの“初恋” 宇多田ヒカルのイメージソングとの親和性を考える

『花晴れ』イメージ曲と物語の親和性

 人気ドラマ『花より男子(花男)』のシリーズ作『花のち晴れ〜花男 Next Season〜(花晴れ)』(TBS系)が物語の中盤に差し掛かり、さらなる盛り上がりを見せている。

 『花男』といえば、超お金持ち名門校・英徳学園を舞台に、“雑草魂”でたくましく生きるビンボー学生の牧野つくしと、学園を牛耳るスーパーセレブ集団・F4のリーダー道明寺司がさまざまな困難を乗り越えながら、互いの境遇や価値観を超えた“真実の愛”を育んでいくというシンデレラ・ラブストーリーだ。

 もう一つの新たな『花男』として展開されている『花晴れ』も英徳学園がメイン舞台であり、貧しいヒロインとセレブの王子様によるラブストーリーという大きな設定は共通している。しかし、物語の骨子にあるテーマに大きな違いがある。

 元お嬢様の“隠れ庶民”江戸川音(杉咲花)とF4の意志を受け継ぐC5のメンバーで神楽木グループの御曹司、しかし中身はヘタレの神楽木晴(平野紫耀)、英徳学園のライバル校・桃乃園学院で生徒会長を務め、すべてがパーフェクトな音の婚約者・馳天馬(中川大志)、C5の紅一点で幼い頃から晴に恋心を抱く真矢愛莉(今田美桜)、超人気モデルで天真爛漫な大財閥令嬢・メグリンこと西留めぐみ(飯豊まりえ)。今回の『花晴れ』では、音・晴・天馬といった主要人物はじめ、キャラクターたちの“初恋”と呼ぶべき心情が描かれているのが特徴的だ。

 晴は音を思うだけで胸が苦しくなるほどの恋心に悩まされ、弱い自分に打ち勝とうとまっすぐな思いを音に伝える。天馬は親が決めた許嫁としてではなく、そばで支え続けてくれた音を自分の意志で好きなのだという気持ちを再確認する。愛莉は幼い頃から抱いていた晴への思いに決着をつけ、晴の恋の成就を応援する。ゲームの登場人物しか好きになったことがなかったメグリンは晴と出会い、初めて本当の恋心を知る。そして音は初めて好きなった人である天馬と、一緒にいるとさまざまな感情が芽生える晴との間で気持ちが揺れ動くーー。本作では、それぞれが恋に落ちる瞬間や新たな気持ちに気づく瞬間がより丁寧に描かれている。

 そんな登場人物たちの心の動きに寄り添うようにして流れるのが、『花晴れ』のイメージソングを務める宇多田ヒカルの「初恋」。オープニングを華やかに飾る主題歌、King & Prince「シンデレラガール」のキラキラとした雰囲気とは一変したバラードだ。たゆたうような歌い出しのフレーズが聞こえてくると、物語は胸が締め付けられるような場面へ突入。宇多田のまっすぐな歌声とシンプルなピアノ・ストリングスの音色、そこに優しく重なるコーラスが登場人物たちの心情を際立たせるBGMのように響き、より視聴者を『花晴れ』の世界に引き込んでいく。宇多田ヒカルがデビュー20周年を迎えるタイミングに生み出した瑞々しいラブソングは、数々の“初恋”が描かれる『花晴れ』のイメージソングとしても絶大な効果を発揮している。

 それぞれの恋路を応援したくなるピュアで魅力的な登場人物が揃う『花晴れ』だが、残念ながらすべての思いが実るわけではない。クライマックスにむけて動き出すであろう恋の行く末を、宇多田の「初恋」が今後さらに盛り上げていくことになるだろう。

(文=久蔵千恵)

■放送情報
『花のち晴れ~花男 Next Season~』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:杉咲花、平野紫耀(King & Prince)、中川大志、濱田龍臣、飯豊まりえ、今田美桜、鈴木仁、中田圭祐、反町隆史、佐々木すみ江、デビット伊東、木南晴夏、堀内敬子、テット・ワダ、志賀廣太郎、高岡早紀、滝藤賢一、菊池桃子
原作:神尾葉子『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(集英社『少年ジャンプ+』連載)
脚本:吉田恵里香
音楽:大間々昂
主題歌:「シンデレラガール」/ King & Prince(Johnnys’ Universe)
プロデュース:瀬戸口克陽
協力プロデュース:齊藤彩奈
演出:石井康晴、坪井敏雄、岡本伸吾
製作著作:TBS
(c)TBS

公式サイト
公式Twitter(@hanahare_tbs)
公式Instagram(@oto_edogawa)

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