SPECIAL OTHERS ACOUSTICが語る、“自然体”の活動論「将来的なビジョンへの近道に」

“S.O.A”が語る“自然体”の活動論

形もないし、目にも見えないけど、確かに認識できる(芹澤 "REMI" 優真)

ーーどこにも無理がない音楽だし、それがこのアルバムの気持ち良さにつながっているんだと思います。『Telepathy』というアルバムタイトルについても聞かせてください。同じ題名の楽曲も入っていますが、これもちょっと不思議な曲ですよね。

宮原:そうなんですよ。俺とヤギ(柳下)がギターで遊んでるときに、たまたま「今の、おもしろいね」というフレーズも絡みがあって。適当に弾いてただけなんですけど(笑)、「カッコいいから、曲にしてみよう」と。「Telepathy」という曲名にした後、アルバムのなかに“テレパシー・コーナー”を作ったんですよ。メンバーがテレパシーを送り合ってるところを音で表現したんですけど、おそらく業界初ですね(笑)。

柳下:そんな行為、なかなかやらないでしょ(笑)。

芹澤:でも、実際にアルバムを聴いてもらえれば、「テレパシー・コーナーって、ここのことだな」って誰にでもわかるようになってるんですよ。それこそが音楽のおもしろさですよね。だって、言葉では説明しようがないから。

又吉:確かにね。

芹澤:テレパシー・コーナーだけではなくて、アルバムに入っているすべての曲がそうなんですよ。言葉では説明できないことが起きていて、でも、聴いてもらえれば伝わるっていう。音楽を通して同じことを感じていたり、一斉に手を挙げたくなる瞬間って、テレパシーみたいじゃないですか。形もないし、目にも見えないけど、確かに認識できる。それが音楽の強みだなと。絵も同じですよね。黒のペンでグシャグシャと描かれた絵を見ると「怖い」と感じる。でも、どうして怖いと感じるかは説明できないので。

ーーなるほど。そういう深い意図があって、「Telepathy」というタイトルになったんですか?

宮原:そんなことないです(笑)。

芹澤:無意識のうちに好きな言葉を選んだのかな? タイトルに意味を込めることも少ないですからね。デモ音源の管理は良太がやってるんだけど、ファイル名がそのまま曲名になったりするので。

ーー「My Home Town」なんて、すごく意味がありそうですけどね。

宮原:そうなんですけど、これも仮タイトルのままなんです。アメリカの好きなバンドの雰囲気を自分たちなりに表現してみたらどうなるだろう? という感じで作り始めた曲なんですけど、ファイルにまとめるときに「アメリカのアーティストって、よく“My Home Town”って言うよな」と思って(笑)。特にメンバーには説明しなかったんですけど、そのままタイトルになりました。

又吉:だって、意見を言っても聞いてくれないじゃん(笑)。

宮原:え、そう?

又吉:うん(笑)。でも、それはぜんぜんいいと思うんです。曲のタイトルにしても何にしても「特に意見はないよ」ということはあるし、それが悪いことだとは思っていないので。

芹澤:そもそも何でもいいからね、タイトルは。題名がないと作品を発表するときに不便だったり、ちょっとした味付けになるくらいなので。「何でもいいけど、これがいい」と言う感じかな。「Telepathy」もそんな感じだった気がします。

ーー「どうして『Telepathy』なのか、理由を言ってください」という状況はないんですか?

宮原:ありますね(笑)。

芹澤:理由がないとダメとか、善悪や白黒をつけたがるのって、日本の宗教みたいなものだと思うんですよ。大勢の人が参加するときはそのほうがいいのかもしれないけど、何でもはっきり決めなくちゃいけないわけではないと思ってるので。

宮原:何でも理由を求められるのって、確かに悪い文化だよね。小学校のときの読書感想文もそうじゃないですか。「何かすごく楽しかった」って書いたら、「どう楽しかったのか書きなさい」って言われて、居残りさせられたことがあるんですよ(笑)。いくら考えてもぜんぜんわからなかったけど。

又吉:というか「何かすごく楽しい」というのが理由だからな。

宮原:そうそう! 「楽しいってだけでいいじゃん」っていう。それなのにずっと机に座らされて。

芹澤:いま思ったんですけど、SNSとかで意味のない論争が起きやすいのも、“理由が必要”と思ってるからじゃないかな。「それでは理屈が成り立ってない」みたいなことで言い合いが始まるというか。多くの人が明確な理由を求めているし、少しでもほころびがあると、そこをみんなで責めるっていう。

ーー確かに。ちなみにこういう取材ではどうですか? まさに音楽について説明することを求められる場所だと思いますが。

芹澤:「どういうふうに作ったんですか?」と聞かれたら作った過程を説明するし、「どんな感情で?」と言われたら、感じたままを答えるだけですけどね。そういえば以前は「SPECIAL OTHERSは記事にしづらい」って言われてましたね(笑)。

宮原:そうかも(笑)。

芹澤:いまはそんなことないですけどね。このバンドの存在を理解してもらえるようになったので。あと、世の中も少しずつ、そういう方向に向かっている気もしていて。特に若い人たちはすごく柔軟だし、いいものはいいという感じになってるので。感性を共有できることも触れているし、過ごしやすいです(笑)。

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