和楽器バンド 鈴華ゆう子が語る、アルバム『オトノエ』で描いたバンドの新境地

和楽器バンド・鈴華ソロインタビュー

「90年代のエッセンスを若い人に届けたい」

ーー鈴華さんは、いつもどのように曲作りを行なっていますか?

鈴華:私は物心がついた頃にはすでに曲作りを始めていたんですけど、気分屋なのでその都度作り方が違うんですよ。必ずしもピアノの前に座って作っているわけじゃなくて。例えば井の頭線の電車に乗って、車窓の景色に触発されて浮かんだメロディを、持ち歩いている小さな五線紙ノートに急いで書き記したこともありました。チャリに乗っている時に浮かんだメロディを、携帯のボイスメモに吹き込んだこともあります。そういう断片を、家に帰ってピアノで弾いて、イメージを膨らませたり。

デビューしてタイアップの曲を書くようになってからは、まずテーマを決めて、そこから作っていくという方法にも挑戦しましたね。今までやったことのない作曲法だったので、それはすごく勉強になりました。今は、タイアップとか関係なくテーマを自分で設けて、そこから曲を作ることもあります。

ーーちなみに、本作に入っている鈴華さんの楽曲は、どんな風に作ったのですか?

鈴華:例えば「World domination」は、方言を歌詞に取り入れた曲にしようというテーマをまず設けました(笑)。私、茨城県の「いばらき大使」と水戸市の「水戸大使」を務めているんですけど、茨城弁を入れた歌詞が昔から書きたくて仕方なかったんです。世界に向けて発信している和楽器バンドが、軌道に乗ってきたタイミングでいきなり茨城弁を歌い出したら、きっと面白いんじゃないかと(笑)。それに、DREAMS COME TRUEさんの「大阪LOVER」とか、可愛くていいな、羨ましいなってずっと思ってて。「博多弁や大阪弁はあるけど、茨城弁の曲はないんじゃね?」というところから作り始めたんですよね。

ーーこの曲を作るにあたって鈴華さんがインスパイアされた曲やアーティストは?

鈴華:実はこの曲、「ジュディマリ(JUDY AND MARY)っぽいアレンジにして欲しい」ってマッチーにリクエストしたんですよ。最近は、私の青春だった90年代のJポップを、振り返って聴くことが多かったかもしれない。マッチーと世代的にも同じだし、あの時代のエッセンスを今の若い世代に届けたいという気持ちもありましたね。

ーー「砂漠の子守唄」は、暗いアンビエント曲で驚きました。これも鈴華さんが作曲ですよね?

鈴華:この曲は、マッチーの家で「World domination」のアレンジをしてもらっているときに作った曲なんです。「(アレンジの完成を)待っている間、曲作りがしたいから一部屋貸して」って言ったら、いつも寝ている部屋に通されたんですね。まるで洞穴みたいに真っ暗な空間で。「こんなところで寝てるのかよ」と思いつつ(笑)、楽器も何もないのでiPhoneに歌詞を入力しながら作っていきました。で、それをマッチーにピアノで弾いて聞かせたら、「めっちゃいい曲じゃん!」って言ってくれて。それから朝方まで、6時間くらいかけて一気にアレンジまで組み立ててくれたんですよ。「ゆう子の頭の中で鳴っている音が、俺もう分かったから」って。

ーーへえ!

鈴華:5年の間に、私がどんな音を求めているのか、言葉にするまでもなく彼は理解してくれるようになったんですよね。「こんな感じの音でしょ?」「こういうフレーズでしょ?」って出してくるものが、大抵その通りなんです。だから私はマッチーの横で、「天才だね!」ってただ言ってるだけでした(笑)。本当、彼には感謝してますね。私一人だったら、自分の頭の中で鳴っている音のイメージをここまで具体的にカタチにできなかったと思うから。アレンジャーってすごいなって。

「 まずは『オトノエ』の反応を確かめたい」

ーーメロディはいつも、どんな風に思いつくのですか? 例えば「この曲は和モノっぽくしよう」とか、ある程度テーマを決めて音を選んでいるのでしょうか。

鈴華:最初の段階である程度は決めますね。「今回はヨナヌキのメロディで作ろう」とか、「今回は何も気にせず思い浮かぶまま作ってみよう」とか。それと、私のメロディのクセは、跳躍したがるということ。7度とか大好きで、響きにグッときちゃうんですよね。

ーーそれって、やっぱりラヴェルやドビュッシーの影響ですかね?

鈴華:めっちゃあると思いますね(笑)。あと、私はジャズが本当に好きなので、9thや11thの音もメロディに入れがちです。実はディズニー音楽も子供の頃から大好きで、アラン・メンケンさんの曲からの影響も大きいと思いますね。

ーーちなみに、町屋さんの書く曲はどんな印象を持っていますか?

鈴華:マッチーの曲は、すごく北海道っぽいなあって思いますね(笑)。時々スレた感じを出そうとするんだけど、結局は田舎のいいオッチャンみたいな。

ーーあははは!

鈴華:もちろん、プログレっぽい曲をたくさん書いていた時期もあって、そういう曲はすごいなって思うんですけど、最近はあまりそういう尖ったことは自分でも出そうとしていなくて。例えば今作でいえば「風立ちぬ」みたいな、もともと持ってる北海道気質を前面に出すようにしているんだなって思います。プログレ的な要素、アレンジャーとして楽しんでいるんだろうなっていうのは、(いぶくろ)聖志さんの書いた「パラダイムシフト」のアレンジを聴くとよく分かりますよ。

ーーでは最後に、和楽器バンドとしての今後の抱負を教えてください。

鈴華:まずは、『オトノエ』を聴いてくださった方たちの反応を確かめたいですね。それは別に、成功だったとか失敗だったとかそういうことではなく、いただいた反応を受け止めた上で、次の道筋を考えるということを、これまで私たちはずっとしてきたんです。とにかく、話し合いをものすごくするバンドなので、今月末から9月までのツアーの間、一緒にいる時間が長いぶんミーティングをたくさんやろうっていう話はしています。ライブの打ち上げとは別で(笑)。

あとは、和楽器バンドってまだまだマニアックな存在だと思っている人が多いと思うので、そういう人たちにもちゃんと届くためにはどうしたらいいのかを考えたいですね。わたし自身、例えば最近までビジュアル系の音楽を全く聴いていなかったり、爆音の演奏は苦手だと思って敬遠していたり、「食わず嫌い」で勿体ないことをたくさんしてきたんです(笑)。なので、皆さんに和楽器バンドを先入観なく聴いてもらって、「こんなにポップで分かりやすい音楽をやっているんだ」と思ってもらえるようにしたいし、一度見たらまた絶対に見たくなるようなライブを、これからもやっていきたい。そう、ライブでしか観られない私たちの魅力も、もっともっと伝えていきたいです。

(取材・文=黒田隆憲)

■リリース情報
5th アルバム『オトノエ』
4月25日(水)リリース

MUSIC VIDEO盤(CD+Blu-ray)¥4968
MUSIC VIDEO盤(CD+DVD)¥4104
LIVE映像盤(CD+Blu-ray)¥5184
LIVE映像盤(CD+DVD)¥4320
CD ONLY盤(CDのみ)¥3024

<CD収録曲>
1.細雪
2.「儚くも美しいのは」
3.雪影ぼうし
4.君がいない街
5.World domination
6.独歩
7.沈まない太陽
8.パラダイムシフト
9.風立ちぬ
10.紅蓮
11.砂漠の子守唄
12.天上ノ彼方

CD ONLY盤 ボーナストラック
13.-オキノタユウ-Live ver.-
(from 和楽器バンド Premium Symphonic Night ~ライブ&オーケストラ~ in大阪城ホール)

<MUSIC VIDEO盤DVD / Blu-ray収録内容>
雪影ぼうし (MUSIC VIDEO)
細雪 (MUSIC VIDEO)
細雪 for Piano and Symphonic Orchestra (MUSIC VIDEO)
砂漠の子守唄 (MUSIC VIDEO)
細雪 (MAKING)
砂漠の子守唄 (MAKING)

<LIVE映像盤DVD / Blu-ray収録内容>
・「和楽器バンド Premium Symphonic Night ~ライブ&オーケストラ~ in大阪城ホール」より
第2幕「和楽器バンド×The WGB Symphonic Orchestra」
・オフショット

■ライブ情報
和楽器バンド TOUR 2018 音ノ回廊-oto no kairou-
<ツアー日程>
4月28日(土)
埼玉県 川口総合文化センターリリア
4月30日(月・振休)
茨城県 茨城県立県民文化センター
5月3日(木・祝)
北海道 わくわくホリデーホール
5月6日(日)
京都府 ロームシアター京都
5月12日(土)
静岡県 静岡市民文化会館 中ホール
5月16日(水)
島根県 島根県民会館
5月19日(土)
岡山県 岡山市民会館
5月20日(日)
広島県 上野学園ホール
5月25日(金)
熊本県 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
5月27日(日)
福岡県 福岡市民会館
6月2日(土)
愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
6月3日(日)
福井県 フェニックス・プラザ
6月9日(土)
兵庫県 神戸国際会館 こくさいホール
6月16日(土)
神奈川県 カルッツかわさき
6月23日(土)
福島県 とうほう・みんなの文化センター(福島県文化センター)
6月24日(日)
岩手県 北上市文化交流センター さくらホール
6月29日(金)
高知県 県民文化ホール オレンジホール
6月30日(土)
香川県 ハイスタッフホール
7月7日(土)
富山県 高周波文化ホール
7月8日(日)
長野県 まつもと市民芸術館
7月16日(月・祝)
東京都 東京国際フォーラム ホールA
7月22日(日)
新潟県 新潟県民会館
7月28日(土)
沖縄県 ミュージックタウン音市場
8月5日(日)
宮城県 仙台サンプラザホール
9月1日(土)
大阪府 大阪国際会議場 グランキューブ大阪 メインホール
9月2日(日)
大阪府 大阪国際会議場 グランキューブ大阪 メインホール

和楽器バンド公式サイト
和楽器バンド 公式Twitter WagakkiBand (@WagakkiBand)
WagakkiBand(和楽器バンド)Facebook

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