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ケイシー・マスグレイヴス、Soccer Mommy、 Caroline Says……心洗われる“歌モノ”新譜5選

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 春の訪れとともに、温かい歌声が恋しくなってきました。「純粋にいい曲」って、一昔前まではFeistの「1234」のように、TVやラジオ、あるいはレコード店から火がついて周期的にヒットしたものですけど、最近は(洋楽に限ると)あまり聞かなくなった気がします。それもあって今回は、自分がレコード店のバイヤーだったら猛プッシュするであろう、 心洗われる歌モノを5枚取り上げることにしました。

ケイシー・マスグレイヴス『Golden Hour』

 ここ数カ月で、群を抜いて素晴らしかったのがケイシー・マスグレイヴスの『Golden Hour』。テキサス州出身で88年生まれの彼女は、ポップに振り切ったテイラー・スウィフトとは対照的に、今日のカントリーを代表するシンガーでグラミー賞にも輝いている人物。最近も故ジョニー・キャッシュの未発表詩をもとにしたアルバム『ジョニー・キャッシュ:フォーエヴァー・ワーズ』や、エルトン・ジョンのトリビュート集『Restoration: The Songs Of Elton John And Bernie Taupin』に参加するなど、ルーツに根ざした歌心は大物からも一目置かれてきました。ところが、この4作目ではサウンドを軽やかに刷新し、世界中のメディアから絶賛されているようです。

 これが評判に違わぬアルバムで、まずは曲の完成度にビックリ。「Happy & Sad」という曲がわかりやすいですが、どの曲もメロディがふくよかで味わい深く、イントロからサビへと至る流れも絶妙なんですよね。その巧妙なソングライティングに加えて、晴れやかで透き通ったボーカルと、内省的な憂いのフィーリングを兼ね備えているのもポイント。爽快だけど物哀くて、センチメンタルなのに人懐っこい。ヒップホップ/トラップが黄金期を迎えている昨今、オーセンティックなポップソングがここまで胸に響くのも、なんだか久しぶりな気がします。

 普遍的な曲のよさに加えて、カントリー特有の土臭いイメージとはかけ離れた、モダンで洗練されたアレンジも『Golden Hour』の魅力。ボコーダーを用いた歌声の加工処理、丁寧に敷かれた煌びやかなシンセ音、スペーシーに鳴り響くペダル・スティール、はたまたディスコ調に弾けたナンバーまで、先鋭的なアプローチが楽曲の旨みを引き立てています。ローリングストーン誌が本作について、「未来派と伝統主義の出会い」「カントリー、フォークとドリーミー・エレクトロニカの融合」と評しているのも納得。個人的には、かつてオルタナカントリーと呼ばれていたWilcoが、2002年の名作『Yankee Hotel Foxtrot』で大化けした時の衝撃を思い出したりもしました。

Kacey Musgraves – High Horse (Lyric Video)

Soccer Mommy 『Clean』

 ポップだけど鬱屈としたものを抱えている、繊細な泣きメロっていいですよね。その線だと、弱冠20歳のソフィー・アリソンによるソロプロジェクト、Soccer Mommyのデビュー作『Clean』がオススメ。歪んだギターと気怠い歌唱、ローファイな音作りのコンビネーションは90年代オルタナ的で、儚くエモい歌声にも心揺さぶられます。これだけでもある種のリスナーにはど真ん中だと思いますが、単なる焼き直しともちょっと違う気がしていて。

 そもそもこのアルバム、いわゆる宅録女子が初めてバンド編成でスタジオ録音を行った……はずなのに、演奏もめちゃくちゃシンプルだし、ディストーションしているはずのギターも全然うるさくないから(密室っぽい響きがバンド感をスポイルしているというか)、そんなふうに聴こえないんですよね。実際には、鍵盤の音色や凝ったスタジオワークにも明らかな通り、精巧に作られたアルバムなのは間違いないけど、ラフスケッチみたいな質感のせいで、ベッドルームで録られたデモ集っぽくも思えてくる。この曖昧でパーソナルな音像を、『Clean』と名付けるセンスも痺れます。それに何より、クールなのに情感がこぼれ落ちそうなボーカルがたまりません。

Soccer Mommy – Cool

Caroline Says『No Fool Like An Old Fool』

 2018年最高の「春レコード」だと思ったのが、Caroline Saysの2作目『No Fool Like An Old Fool』。これはもう夢のなかへと一直線。青空に囲まれた昼下がり、草っ原に寝そべりながらリード曲の「Sweet Home Alabama」を聴いたら、きっと幸せな気持ちになれるはず。ここまでスウィートな歌声、微睡んだサウンドも珍しい気がします。

 こちらはアラバマ出身で、現在はテキサスを拠点にしているキャロライン・サリーによるソロプロジェクト。名義はもちろん、ルー・リード(Velvet Underground)の同名曲に由来しています。ヴェルヴェッツといえば、「Pale Blue Eyes」というドリームポップの雛形になった名曲がありますが、Caroline Saysもあのロマンティックな響きを受け継いでいる模様。サーフポップやボサノヴァの影響もチラつかせながら、とろけそうなコーラスがリバーブの海へと誘います。前作はもっとバンドっぽい曲もあったんですが、今回は全編ドリーミーに振り切っているのは大正解。収録時間も28分と短く、永遠に聴いてられそうです。先日ニューアルバムを発表した、Yo La Tengoが好きな方もぜひ。

Caroline Says – “Sweet Home Alabama”

      

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