「今起こってることを書きたい」a flood of circle 佐々木亮介が明かす、音楽との向き合い方

AFOC佐々木、音楽との向き合い方

「『a flood of circle』ってつけるなら、今しかない」

――この話を踏まえた上で、「ミッドナイト・クローラー」について聞ければと思います。この曲はUNISON SQUARE GARDENの田淵智也さんがプロデュースを手掛けていますよね。

佐々木:はい。

――海外の音楽の同時代的なトレンドを抑えているということと、こういう曲をやっていることって、全く別のラインのことだと僕は思っていないんですね。そういうのを全部踏まえた上で、アニメソングも含めた日本のポップソング、ロックバンドのユニークさとか新しさを追求している曲だと思うんです。

佐々木:まさに。田淵さんがやってることは、日本でしか出てこないと思っていて。アニメソングはハマって聴けてはないんですけど、自分が感じてるのはとにかく情報量がハンパじゃないってことで。BPMも速いし構成も沢山ある。「ミッドナイト・クローラー」もそうしてるんですけど、このくらい構成が多いのって、違った意味で南アフリカの民族音楽とかくらいで。バンドフォーマットでこれだけ情報量が多いって異常だと思うんですよ。ザブ(エンジニア)と仕事した時にも「これは踊れはしないよね」って。でも、日本のロックフェスだとみんなこういう曲調でめちゃめちゃ盛り上がってるじゃないですか。それが面白い。

――ザブから見た「ミッドナイト・クローラー」はどういう感想でした?

佐々木:一言目が「めちゃめちゃごちゃごちゃしてる」っていう(笑)。田淵さんはもちろん海外の音楽を全然気にしないので、おそらくこれまでのバンドの歴史を見てきて「フラッドはこれ得意でしょ」っていうものとか、田淵さんが好きなものとかをぶち込んでくれたと思うんです。

――田淵さんは、彼が思うa flood of circleの良さを全部引き出そうと思ったわけですよね。

佐々木:そうです。その全部乗せっていう発想自体が、もしかしたらごちゃごちゃ感に繋がってるのかもしれないですけどね。ユニゾンの曲を聴いても、いい意味でごちゃっとしてますよね。キラキラ感じるくらい、全部明るいキーで作ってるけど、すごい構成が多いし、アレンジもすごく複雑で。まあ、めちゃくちゃ上手いともいえるんですけど。

――そうやって複雑な構成を持つ曲を、ジェットコースターに乗ってるみたいに勢いよく疾走感で聴かせてしまうのが、田淵さんのソングライティングの妙だと思っていて。その方法論でa flood of circleの良さを引き出したと。

佐々木:これは日本人のスタイルですよね。しかも、ザブとやるっていうのがあったので、そのバランスだったらすげえ面白いことができるかもと思ったんです。ザブはリアーナとかだけじゃなくて、Mastodonみたいなヘヴィなバンドもやってるんです。そこのセンスと田淵さんが混ざってくれたらいいなと思って。そうしたらザブには新鮮だったみたいで、「これはダンスミュージックではないな」って言われたんですけど、楽しんでやってたと思いますね。

――そして、わかりやすく今のバンドのモードや勢いが出てきているのが「Blood & Bones」。これはレゲトンやソカのビートを持つ曲ですけれども。

佐々木:レゲトンとかダンスホールみたいなこういうリズムは、2010年くらいから意識してやってきたことだったんですよね。このビートの感じで、ロックンロール的なコード進行とギターリフがバーンとぶつかってるものは、あんまないんじゃないかな、と。

――面白いのは、叩いてるのはラテンのビートなのに、浮かんでくるのは日本のロックフェスの風景であるという。これは一長一短でできることじゃなくて、渡邊さんの身体に染み付いたビートになっているからこそだと思います。

佐々木:祭り音頭になってるっていうかね。彼も「Human License」から8年ぐらいやってきたんで、身に染みてるんだと思います。得意なビートのひとつになってるんじゃないかな。

――この曲、歌詞にも<ロックンロール>という言葉がありますけれど、決して王道のロックンロールではないですよね。

佐々木:リフもチューニングも下がってるし、ビートも変だし、誰が聴いてもロックンロールじゃないんですよ(笑)。だけど、勝手にロックンロールを書き換えるっていう。ジョン・レノンも言ってたけど、「チャック・ベリーでロックンロールは完成してる」でいいんですよ。だけど、その後の世界をみんな生きてるから。「もしもロックンロールが○○だったら?」っていう大喜利をずっとやってる感じですよね。それで一番面白い答えを出したい。それを楽しみたいし、俺は俺の解釈で、今の世界でロックンロールをやったらこうなるはずだって思うので。そのズレみたいなものが、ギスギスしないで楽しめる世界だったらいいなと思います。

――そういうアルバムが『a flood of circle』というタイトルになった、というのは?

佐々木:最初は『a flood of circle』にするつもりは全然なかったんです。テツも、レコーディング終わった段階でメンバーになったんで、全然予定通りのタイトルじゃなかったんですよ。でも、全部出来上がって、テツが入るっていう流れができてから、一番パンチあるタイトルにしようと思って。『a flood of circle』ってつけるなら、今しかないんじゃないかって思った感じですね。ほんと、今がスタート地点って感じなんで。もっと面白いことが起こりそうだと思うし。将来振り返った時に、ここからはじまったねって言える作品になったとは思うので、デビューアルバムっぽいタイトルにしました。これからだぜ、って感じですね。

(取材・文=柴 那典)

a flood of circle『a flood of circle』(通常盤)

■リリース情報
『a flood of circle』
発売日:2月21日(水)
価格:【通常盤】3,000円+税
【初回限定盤】3,500円+税/CD+DVD

<収録曲>
01.Blood & Bones
02.ミッドナイト・クローラー
03.Leo
04.One Way Blues
05.Summer Soda
06.再生
07.Lightning
08.Where Is My Freedom
09.Rising
10.Wink Song

<初回限定盤DVD>
『AFOC x Shelter presents”ROCK’N’ROLL NEW SCHOOL <’17-’18 Count Down Party!!!>”』ライブ映像
01.GO
02.泥水のメロディー
03.Rex Girl
04.Sweet Home Battle Field
05.AFOC Medley
06.Party!!!
07.Rock’N’Roll New School
08.Wolf Gang La La La
09.博士の異常な愛情
10.シーガル

<アルバム購入特典>
・タワーレコード特典:「ミッドナイト・クローラー」楽曲制作ノート
・Amazon.co.jp特典:『“ROCK’N’ROLL NEW SCHOOL ’17-’18 Count Down Party!!!”』LIVE CD

<LIVE CD収録曲>
01.GO
02. 泥水のメロディー
03. Rex Girl
04. Sweet Home Battle Field
05. Rock’N’Roll New School
06. シーガル
07. 象のブルース
・HMV特典:特製クリアファイル
・その他全国対象店舗特典:特製ステッカー(※対象店舗は後報)

■関連リンク
オフィシャルサイト
レーベルサイト

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