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『FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』インタビュー

中野雅之が振り返る、BOOM BOOM SATELLITESが歩んだ軌跡とラストライブの裏側

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「デビュー当時は『カッコいい音楽が作れるツッパリ』だった(笑)」

ーー僕がBOOM BOOM SATELLITESのライブを初めて観たのは、おそらく1999年くらいだったと記憶しています。そこからずっと観てきた中で、あるタイミングからバンドのライブというものに対する向き合い方が変わったなという印象があって。たぶん最初に観た頃ってステージの上で完結していた部分が強かったと思っていて、そこが観る側としても醍醐味だったんですけど、2000年代半ば以降からは観ているお客さんも含めて全員でライブを作っている感覚がどんどん強まっていった気がするんです。中野さん自身、そういったライブとの向き合い方に変化はあったんでしょうか?

中野:はい、それはやっぱり顕著な変化があって。そもそも僕が10代前半で最初にバンド活動を始めたとき、それ以前に音楽を自分から積極的に聴くようになったときと、それからデビューする頃とで音楽に対する考え方がその都度都度で全然変わっています。特にデビューした当初というのはスタジアムロックみたいなものにすごく嫌悪感を持っていた時期でした。一方でレイブカルチャーが当時はまだ存在していて、そういうものに対しての憧れもあった。そういう感情が複雑に入り組んだ中で行われている表現が、2000年代半ばぐらいになってくるとまったく視点が変わってきて、興味の対象や見たい景色も変わってきた。きっかけはその時々でいろいろありますが、僕と川島くんの中に自然とそういう変化があったんですよね。

ーーなるほど。

中野:で、それによって音楽を通じてのコミュニケーションや考え方も変わってくる。それまでもリスナーと送り手との関係性を強く意識して音楽活動を続けてきましたが、何かもっと情に近いもの、胸が熱くなるような瞬間というのが自分たちに沸き起こることがどんどん増えてきて、どこに向かっていくかという目標も変わってきたし、何を届けるかということも変わってきた。これはもう、子供が成長して大人になっていく中でいろいろ学習して、どの時間もすべて無駄じゃないという人生そのものみたいなところがあります。だから、BOOM BOOM SATELLITESはショービジネスのエンターテインメントを学習するのに、ものすごく時間がかかったバンドなのかもしれません。簡単に言うと、デビューした頃はちょっとカッコいい音楽が作れるツッパリだったような気がするんです(笑)。

ーー(笑)。

中野:その過程の中でどんどん大切なビスをひとつずつ拾い集めていって、最後の着地点がここだった。いきなりすごく売れてとか、トップギアからスタートみたいなことはなかったかもしれないですけど、そのぶんすごく大切なものをゆっくり噛み締めながら学習して、ちゃんと行き着くところまで行けた気がしていて。なので、すごく良い音楽人生を過ごせたなという満足感はあります。

「バンドを組む発想がなかなか持てない」

ーー実は僕、中野さんと同い年なんですね。なので、これは同年代の男性としてお聞きしますが、ハタチ前後から始めて人生の半分以上をBOOM BOOM SATELLITESというバンドで過ごしてきて、そのバンドを終了させた今、40代半ばのタイミングにこの先の生き方に関してどういうビジョンを持っているのかが非常に気になるんです。

中野:実際のところ、僕はそんなに戦略的に生きていけるタイプの人間じゃないと思うんです。もし川島くんが生きていれば、死ぬまでひとつのバンドで満足できるようなところがあったんじゃないかな。実際、バンドを20年以上転がし続けるというのはすごい高カロリーでしたし、しんどかったですし、やっていながら「なんでバンドをやるのか?」という自問自答も日々ありました。その意味を見つけられなければ辞めようという話も何度も出るわけで、そこから「やっぱりやろう」ということを続けてきて。結局それが充実した人生を作ってきたところが確実にあるんですけど、今はそれがない。

ーーはい。

中野:そもそもBOOM BOOM SATELLITESを始めたのも、川島くんが大学の同級生だったから、川島道行という人間に興味があって一緒に音楽をやってみたかったからであって。お金が欲しいとか有名になりたいとかそういうことではないところで、自然と湧いてきた気持ちの中で始まったことなんですね。今、僕はプロとして生活している。プロというのはお金を稼いで生活する、つまりバンドが生活の糧になるわけですけど、その生活の糧を取り上げられたところで、新たな生活の糧を手に入れるためにバンドを組むという発想がなかなか持てない。例えば人生90年だとしたら今は折り返し地点に来たわけですけど、BOOM BOOM SATELLITESというバンドを始めたのは僕が19歳のときなので、今とは体力も違うし瞬発力も違う。そういういろんなハンデを背負っている中でも自然に何かをやりたい、この人と何かをやりたいと思えたときにだけバンドはやろうと思っています。

ーーなるほど。そんな中でも、中野さんと一緒に音楽を作りたいと思っているアーティストも多いわけですよね。

中野:はい。幸運なことにそういう方がたくさんいらっしゃって、僕の音楽に対する自己実現の欲求を捨ててでも、そのアーティストの今後のキャリアや人生にちゃんと貢献できるように、自分が今まで培ってきた技術・能力を費やそうと思って、かなり純粋にスタッフに徹して仕事をしているつもりです。その中にも音楽を奏でる喜びはちゃんとあるので。特に僕はボーカリストを大切に考えているので、素晴らしい歌のテイクに出会ったときは何にも代えられない喜びを、川島くんがいなくても味わうことができる毎日を過ごしている。それはとても幸せに感じていますし、今それができている自分に対してちゃんと「○(まる)」を付けられているわけです。

 もっといろんな人と何かをやる機会があればいいなと思っている一方で、自分がアーティストとして活動するタイミングは自然発生的なことというか、今は待っているところというか。音楽ビジネスを取り巻く環境も、僕がBOOM BOOM SATELLITESを始めた頃とは180度ぐらい違うと言ってもいいぐらい変わり、そもそも音楽を売るという行為自体が成立するのだろうかと思っているので、その中で自分が音楽を作って人に聴いてもらう行為自体を見つめ直したい。僕自身の作品を作ることを望んでいる人もいると思いますが、その人が1万円でも10万円でも100万円でも払って聴きたいと言ったら、じゃあそれってもうCDじゃないんじゃないかっていう気がします。一方でタダでも聴いてもらえないということもあるかもしれない。そういう自分の価値、あるいは1曲の価値、音楽の価値というものを、今はメタ視点で見ているところですね。

「どんどん外に向けて使っていったほうがいい熱量」

ーー中野さんは現在、楽曲提供やプロデュースという形で関わるアーティストもいれば、凛として時雨のTKさんとのユニット・PANDASのようにライブ活動を行うケースもあります。ほかのアーティストと作業をしていく中で改めて見えてくるBOOM BOOM SATELLITESの音楽の魅力も、一度離れることで再認識できることもあるのかなと思いますが、いかがでしょう?

中野:音楽に対しての熱量が高いなと改めて思う瞬間は多いです。今までの人生の大半をBOOM BOOM SATELLITESというバンドに捧げたというか、寄り添って生きてきて、外部プロデューサーや制作ディレクターを入れないで、2人だけで密室で作ってきた。例えばですよ、家庭内暴力は結局精神的にやられている側が拘束されて、被害に遭っているということを外部に伝えるまでに、ものすごい努力をしないと警察に通報することもできない。その2人の中の世界だから、どんなに異常なことになっていてもそれが異常だということに気づくのに時間がかかることもあると思います。おそらく僕と川島くんがやっていることも、風通しの良い多くのアーティストから見たら、ちょっと「なんでそこまでするの?」ってことだったのかもしれないですよね。

ーーなるほど。

中野:別に僕がそれで川島くんに暴力を振るいまくったりとか、そういうことではないんですけど(笑)、音楽というものに対しての自問自答とその答えを楽曲制作で出していくっていうことを密室で何年もやり続けた。そのエネルギーの消費量と生み出すもののエネルギーは相当なものがあるんだろうと、今改めて思っています。その経験をもとにいろんなアーティストと接したときに、「ああ、そうだよね。そこまでしないよね」ってこともあります。実際、アーティストごとに考え方もやり方も違うし、役割分担がすごくできているアーティストもいるし、ワンマン体制でグイグイいくタイプのアーティストもいる。そういう人たちを見るにつれて、やはり自分たちがかなり偏った場所にいたんだなっていうことを感じます。で、これは僕と川島くんだけで囲っておかないで、どんどん外に向けて使っていったほうがいい熱量だなとも思っています。だから、このバンドで培ったものをもっとたくさんの人のために使えるんじゃないかと感じています。

ーー今後のシーンの動向や業界の移り変わりを見つめながら、ご自身でも表現したいものを作っていけたらと。

中野:そうですね。どんな形であれ、自分が作品を作って聴いてもらうというタイミングは必ず来ると思うので。それがCDではないかもしれないし、どういう流通形態になるのかもわからない。それでも僕にしか作れない音楽、僕の人生経験を通して作れる音楽は世の中にひとつしかないものなので、それを世の中に届けて価値を問うてみたいという欲がありますし。なので世界がどうであれ、そのときは来ると思っています。

(取材・文=西廣智一)

■リリース情報
『FRONT CHAPTER-THE FINAL SESSION-LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』
発売日:3月14日(水)
完全生産限定盤(Blu-ray) SRXL-151/¥ 9,200(税込)
通常盤(DVD) SRBL-1780/¥ 4,860(税込)

<早期予約特典>
全国のCDショップおよびECサイトにて2/14までにご予約いただいたお客様にライブ当日に使用されたラミネートスタッフパスのレプリカを差し上げます。
特典付きの商品をご購入されたい方は2/14までにCDショップ、ECサイトにてご予約をお願いします。
※一部店舗は取り扱い対象外となります。御予約の際に店頭にてお問い合わせください。
※一部ECサイトでは「特典付き」という表記がある商品ページが早期予約特典対象のページとなります。

<CDショップリンク>
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