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『FRONT CHAPTER - THE FINAL SESSION - LAY YOUR HANDS ON ME SPECIAL LIVE』インタビュー

中野雅之が振り返る、BOOM BOOM SATELLITESが歩んだ軌跡とラストライブの裏側

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「川島くんがいないことを一瞬でも見せるところからライブが始まる」

ーーライブにはこれまでバンドに関わった多くの映像作家が参加されていて、これまでの歴史を一夜で表現するような側面もあったように思います。

中野:例えば、まだ駆け出しの頃に「KICK IT OUT」のMVを手がけた長添(雅嗣)くん……もしかしたら「KICK IT OUT」のMVが彼の出世作かもしれないんだけど(笑)、そんな長添くんのこともちょっと涙がちょちょぎれながら編集している姿をうっすら覚えているんですけど、一緒に仕事をするのは本当に久しぶりでした。約10年ぶりくらいだったかな? 久しぶりに会って意気投合する感じがとても嬉しかったです。実際、今回も彼が作る演出に対して、かなりギリギリまで厳しく追求していて、夜中のメールのやり取りとかでも泣き言を言っていたりとか(笑)、そういう男臭い場面もあったんです。でも結果最後までやりきって、終わったあとも満足そうな顔をしていたので良かったなと。できることならもっとたくさんの、今まで関わったすべての人に参加してほしいぐらいの気持ちだったんですけど、それでも思い入れのあるクリエイターたちが集結してくれて、みんなすごい熱量で携わってくれたので、こんなことはなかなかないだろうなっていうところまでやれた感じがあります。

ーー実は僕、1年前に発売された『別冊カドカワ 総力特集BOOM BOOM SATELLITES』の取材で長添さんにお話を聞いていまして、中野さんが今おっしゃったように当時はかなり厳しかったというエピソードも耳にしています。と同時に、あれから10年近く経って自分も成長しているので、もう一度今の自分で何かしたいということをおっしゃっていました。だから、ああいう形で再びご一緒できたのは、長添さん的にも嬉しかったんじゃないかと思うんです。

中野:そうでしたか(笑)。いや、彼は面白い子ですよ、打たれ強いんだか打たれ弱いんだかよくわからない人で。でも今となってはちょっと愛おしいぐらいの人です。

ーー先ほどの演出の話題に戻りますが、ボーカリストがいないというネガティブな要素を潰していくところで、見せ方もいろいろ考えられたと思うんです。それがステージ前に紗幕を降ろして映像を映す演出だったと思うんですが、ステージと客席の間に紗幕というワンクッションを置くことで、観ている人がそれぞれの中にあるBOOM BOOM SATELLITESと向き合いながらライブに接することができたとも思うんです。

中野:もはや何をどういう順番で話し合ってああなったのか覚えてないぐらい、採用になること、不採用になること、修正することが非常に入り組んでいました。1曲目を担当した長添くんは、紗幕を降ろしてステージ側から照明をつけるとステージに立っているのが3人だけで、川島くんがいないことを一瞬でも見せたいと言っていました。そこから今日のライブが始まるというのを、彼は冒頭で一回見せておきたかったというんです。それはほんの数秒程度のことですけど、一つひとつにそういう意味合いがあり、10数曲の一瞬一瞬に意味があり、ああいう形になっているはずなんです。そういう演出の全部に心理的な効果があることなので、僕がここであんまり喋りすぎると手品のネタバラシみたいになってしまって良くないかなとも思うんですけど……でも、それもこれもスピリチュアルなレベルでやっていたというか。遊園地のようなエンターテインメントを作る感覚では全然なくて、もっと大事にしているものの領域が違う。しかもスタッフの誰もが丁寧に、深い愛情を持ってやってくれたので、本当にマジックがかかったような時間になったと思います。

「約20年活動してきたバンドのリアルな姿」

ーーあの日のステージはライブならではの生々しさと、いろんな演出を用いたことによる映像的な側面のふたつが混在したものだったと思うんです。そういうライブを改めて映像作品として残すとなると、また見せ方も変わってくるのかなと思いますが。

中野:そうですね。実際、ライブに新木場STUDIO COASTという場所を選んだのも、都内にあるライブハウスでは最大規模であると同時に、ライブハウスという規模が存在感を伝える場所としては大事なんじゃないかと思ったからです。あそこで数多くライブをしてきて、ファンの中にも植えつけられた記憶もある。それもあって、あれ以上に大きいアリーナクラスというのは避けたかったんです。とにかく会場全体の空気を満たしていくようなことを演出では考えていたわけですが、これが映像作品になる場合、あの場の空気をテレビ画面越しに体感することになるので、全然違うものを見せる感覚で作業していたはずです。映像の編集と音声のミックスと、もちろん当日録画したものと録音したものということには何ら違いはないんです。けど、どこにアテンションを注いでおくのが、送り手の意図と観る人の気持ちがひとつになるかを考えながら作業していたように思います。

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ーー紗幕の内側からの目線のように、僕たちが当日知り得なかった場面も多く含まれることで、当日客席から観ていたときとも印象が変わるわけですし。

中野:はい。これがプロデビューして約20年活動してきたバンドのリアルな姿であり、それをしっかり観てもらいたい気持ちもありました。映像演出も本当に美しいものを作ったので、実はどこからカメラを抜いてもすごく良い絵なんです。なのでいろんな視点でそれを観て、切り取ってみて楽しんでもらいたいなと考えて編集しています。ステージ上の固定カメラなどは独特の生々しい感触がありますし、俯瞰の絵というのも何か伝わってくるものがある。とても見応えのあるものが出来上がったと思います。

ーーそれこそ、お客さんの腕が一斉に上がる瞬間を目にすると、バンドだけで作っているライブではなくて、あの場にいる全員で完成させた空間だったんだということを、改めて映像を観て実感しました。

中野:まさにそのとおりで、今までもそう思ってきたところはあるんですよね。これまで何枚もライブの映像作品を出していますが、特に2010年の幕張メッセイベントホールの作品(2011年2月発売のライブCD+DVD『EXPERIENCED』)あたりからそういう気持ち……これはステージ側の演者が一方的に作っているものじゃないんだっていう意識が特に強くなってきて。そのあとの武道館、今回のSTUDIO COASTで極まった感がある。さまざまなアーティストがいますけど、BOOM BOOM SATELLITESの場合は晩年というか最後の数年間、僕たちが頑張って生きた部分がありながら、サポートしてくれたファンがライブやバンド自体を形作ったところもあると思うので、それは意図的に編集しなくても映り込んでいると思います。あの場にいたお客さんは長い時間バンドを支えてくださった人たちがほとんどだと思うと、あの人たちが作ったライブだったと本当に感じています。

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