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『Hitori Sugar Tour 2018』

スガ シカオが歌い続ける人間の本質 21年目の充実ぶりと濃密なキャリア見せた「Hitori Sugar」

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 デビューシングル『ヒットチャートをかけぬけろ』(1997年2月26日)からジャスト21年。2018年2月26日、スガ シカオが全国ツアー『Hitori Sugar Tour 2018』の東京公演を中野サンプラザで行った。「Hitori Sugar」はタイトル通り、ギターの弾き語りを中心とした“ひとりライブ”。この日のライブでもスガは、人間の本質をえぐり取るような歌の世界をたっぷりと描き出してみせた。

 一人でステージに登場したスガは、派手にアコギをかき鳴らし「ハロー! 東京!」と挨拶。「みなさんのおかげをもちまして、本日、デビュー21年を迎えました! デビュー曲を歌います!」と「ヒットチャートをかけぬけろ」を弾き語る。しなやかなファンクネスとキャッチーなメロディ、〈ぼくのいやしき魂よ ヒットチャートをはしりぬけ 君の胸にとどくがいい〉という歌詞がひとつになったこの曲は、まさにスガの出発点。21年前のデビューの時点で、その音楽性の基盤がしっかりと確立されていたことに改めて気付かされる。

 ギターの弾き語りを軸にしながら、ボディスラム、即興サンプリングによるビートなどを加え、全キャリアのなかからセレクトされた楽曲を披露する「Hitori Sugar」。そのもっとも大きな魅力は、独自の視点と美意識に貫かれた歌の世界をダイレクトに堪能できることだ。「アシンメトリー」ではシャープなギターカッティングとともに〈手に入れたものは自由じゃなく/自由のまがい物ばかり〉とシニカルな諦念を含んだラインを響かせ、「(デビュー前)何もないまま会社を辞めて。その頃、人生のなかで2番目にちゃんと完成させた曲です」というMCに導かれた「愛について」では、美しいメロディとともに〈なに1つ 確かには見えなくても/おびえる事は 何もないから〉と言い聞かせるように歌う。以前のインタビューで彼から「他のアーティストが触らないところを歌詞にしてきたという自負がある」という趣旨のコメントを聞いたことがあるが、そこに込められた人生の機微、人間の本質は、時間が経つにつれてさらに凄みを増しているようだ。

 個人的にもっとも心を動かされたのは“ギタレレ”で演奏された「斜陽」だった。憂いを帯びた旋律のなかで、上手くいかないことがわかっていながらも、愛する“君”に対して“そう、きっとうまくいく”と告げる“ぼく”の心情が描かれるこの曲には、人生の影の部分にも光を当てようとするスガの作家性が生々しく表れていた。歌う前にスガは「ギタレレはちょっとアメリカンで能天気な音がするんだけど、ただ、そういう曲がない(笑)。しょうがないので暗い曲をやります」と語っていたが、誰もが当たり前に経験しているはずの日常的な絶望を描き出す「斜陽」のような楽曲は、彼の音楽の魅力の一つだと思う。

 ロックバラードのテイストをたっぷり含んだ「Progress」(kōkua)をドラマティックに歌い上げた後は、ゲストミュージシャンを呼び込む。ギタリスト・田中義人。bird、中島美嘉、森山直太朗、スキマスイッチ、レミオロメンなどのライブ/作品に数多く参加、スガのバンド“FUNK FIRE”のメンバーとしても活躍していた田中は、局所性ジストニアを患い、約2年半の闘病を余儀なくされた。この日は、復帰後、最初のステージ。観客からも「義人!」「おかえり!」と温かい声援が飛ぶ。

 「俺も事務所を辞めて、いろいろあって、がんばってここまで来て。義人と2人でこの曲をやるというのは意味のあることだと思う」という言葉とともに「アストライド」を披露。スガのアコギ、田中のエレキギターが有機的に絡み合うなか、〈倒れたって 諦めちゃだめさ/君が思う世界へ まず一歩 歩き出すんだ〉という歌詞が響き、大きな感動へとつながる。さらに「海賊と黒い海」の間奏では、インプロビゼーション的なやりとりが行われる。本番前のリハーサルは行われず、スガは「義人がどんなギターを弾くのか知らなかった」と語っていたが、即興でこんなにも豊かなフレーズを奏でられる田中は、やはり一流のギタリスト。彼の復帰を目の当たりにできたことは、大きな喜びだった。

 名曲「夜空ノムコウ」からライブは後半へ。最新曲「トワイライト★トワイライト」ではアッパーなビートが鳴らされ、会場全体が心地よい高揚感に包まれる。さらに極上のアッパーチューン「19才」。アコースティックライブということで着席していた観客が次々と立ち上がり、中野サンプラザがダンスホールへと変貌した。

 アンコールでも唯一無二としか言いようがない歌の世界を濃密に描き出したスガ シカオ。この日のライブのなかで彼は、今後の活動についてこんなことを語った。

「2017年は20周年を迎えて、スガフェスをやったり、役者をやったり、アジアツアーをやったり、金髪にしたり(笑)。初めてのことをいっぱいやって、ハッと気付いたら、曲を書く時間がぜんぜんなくて。なので2018年はアルバムに向けて、ガッツリ制作をしようかなと思ってます。20年間、誰にもできない“スガ シカオ・ミュージック”みたいなものを追い求めてきたんだけど、“Hitori Sugar”を続けてるなかで、歌が主人公の曲をやりたいという気持ちになってるんですよね」

 現在の彼の充実ぶりは「Hitori Sugar」で証明済み。いまは21年目のスガ シカオの新作を心待ちにしていたいと思う。

(文=森朋之/写真=AZUSA TAKADA)

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