Darjeeling 佐橋佳幸とDr.kyOnが語る、制作への意気込み「“遊んでる”ように見えてたら嬉しい」

Darjeelingが語る制作への意気込み

ミスマッチは狙ってない(佐橋佳幸)

ーーゲストの人選はどんなふうに?

佐橋:レーベルの立ち上げの話をしている段階でもう、スタッフ一同、膨大なゲストリストを作って出してきて。「この人はどうですか?  この人もいいじゃないですか」と。要するに僕とkyOnさんの関わりのあるアーティストの名前がばーっとリストになったものがあって、そこから考えていく感じですね。とはいえ僕たちとお仕事してる人は忙しい方ばかりなので、現実的なスケジュールと照らし合わせながら。そこがなかなか難しくて、頼んだけど実現できなかった人もいますしね。

ーー大メジャーというわけではなく、世の中的に知名度もそこまで高くないけど、「オレたちはめちゃめちゃ気に入ってるんだよ」っていうところで起用するアーティストもいたりするわけですよね?

佐橋:今回だと、(中村)まりちゃんが完全にそうですね。新世界で『Darjeelingの日』を始めて第1回目のゲストが細野さんだったんですけど、ちょうどその頃に細野さんが青山のCAYで<daisyworld discs>(デイジーワールド・ディスク:細野主宰レーベル)のオムニバスライブを定期的に続けていらして、僕もそこに呼んでいただいて。そのときのゲストのひとりが、まりちゃんだったんです。僕はそのリハーサルで初めて観て、「なんだ、このコは?!」とビックリした。それで細野さんに紹介してもらったの。オレ、その場でまりちゃんのCD、買いましたもん。で、『Darjeelingの日』にも出てもらって、「やっぱ、このコ、すごいや」と思って。

kyOn:僕も名前は知ってたけど、そのとき初めて観てビックリしました。

佐橋:だから今回もクラウンのスタッフに「絶対、いいから」って言って、やってみてみんなもビックリっていう。だって、まりちゃん、本当に普通に弾きながら歌ってるんですよ、これ。ギターも同録ですからね。いまどきの若い人でそれができる人、そうそういないから。だからこの曲(「Funky Tea Race」)、レコーディングもあっという間でしたね。

kyOn:2回ぐらいでしたね。

ーーそんな中村まりさんの歌っている「Funky Tea Race」、リズムはなんとザ・ラストショウのおふたり(ドラムの島村英二とベースの河合徹三)が担当されてます。

佐橋:「リズム隊をどうするかは、おふたりにお任せします」とまりちゃんが言ってくれたので、「こういうアメリカンなリズムの曲をやるんだったらザ・ラストショウでしょ!」って言って、来てもらったんですよ。僕は萩原健太さん絡みの『カントリー・ロッキン・トラスト』ってイベントでザ・ラストショウのみなさんとよくご一緒させていただいて。島村さんとはもう、どれだけ一緒にスタジオに入ったことか。実はモータウンビートもすごく上手い人でね。それで伊藤俊吾が作詞して歌ってる「泣き虫ケトル」も、まりちゃんのと同じ日に島村さんと河合さんにやってもらったんです。

ーー「Funky Tea Race」のこのアメリカーナな感じは本当に素晴らしい。今度はぜひ、この編成での中村まりさんのアルバムを1枚作っていただきたいものです。

kyOn:やりたいですね。

ーー「泣き虫ケトル」は伊藤俊吾さんが歌っていますが、彼のいたバンド、キンモクセイをかつて佐橋さんがプロデュースされていたとか。

佐橋:マニアックな昔の邦楽とか歌謡曲とかが好きな面白いバンドでね。俊吾は「70年代半ばの筒美京平先生みたいな感じのアレンジにしたいんですけど」とか、そういう注文をしてくるやつで。だからキンモクセイはナイアガラのトリビュート(『ナイアガラで恋をして~大瀧詠一トリビュートアルバム』)なんかにも参加してた。で、「泣き虫ケトル」はそもそも前に僕とkyOnさんでセッションしたとき、わざとオルガンで不協和音を出しながら、お湯が沸いてやかんが鳴ってるみたいなこの音を使ってインストの曲を作りましょうってことになって。それで The Doorsの「タッチ・ミー」みたいなリズムのインストを作ったの。それを俊吾に聴かせたら、「“泣き虫ケトル”ってタイトルも面白いから、これで歌詞書きますよ」って言って書いてきたのが、これ。歌詞のコンセプトとしてはまあ「およげ!たいやきくん」と一緒ですけどね(笑)。

ーーしかも「タッチ・ミー」のリズムからThe Doors繋がりで「ハートに火をつけて」のオルガンのフレーズも入ってきたり。

佐橋:そういう洒落も含めて、この曲は面白かったな。

ーーそれから3曲目の「タフ ラブ」は石橋凌さんが歌詞を書いて歌ってます。

佐橋:4年前くらいだったかな。さっき言った新世界の繋がりで、串田和美さんの『もっと泣いてよフラッパー』というお芝居の音楽をDarjeelingが担当したんですよ。そのお話のなかにクリンチばっかりやってる八百長ボクサーのクリンチ・チャーリーってやつが出てくるんですけど、そいつにちなんだブルースを書こうと思って作った曲がこれで。もともと「クリンチ・チャーリー」ってタイトルの曲だったんです。で、あるときkyOnさんが「あの曲を凌ちゃんに頼んだらいいんじゃない?」って言って、僕も凌さんのあの声が乗っかった状態を浮かべたらバーってイメージが広がって。「これこれこうやってできた曲なんです」と凌さんに説明しながらお渡ししたら、こういう歌詞があがってきた。ボクサーの話ではないけど、曲調に沿ったブルージーな歌詞で。

ーーこういうハードボイルドな雰囲気を出せるシンガーとして、凌さんは唯一無二ですからね。

kyOn:そうですね。ファイトクラブが浮かんでくる感じがある。

佐橋:僕は凌さんとは初めてだったんですけど、打ち合わせをしながらキーを決める作業をさせていただいてるときに僕がカタくなってたら、「役柄は怖いけど、僕、怖くないから」って(笑)。

ーーあははは。佐橋さんでも緊張されるんですね。

佐橋:しますよ! だってすごいオーラですから。

ーーそしてゲスト・ボーカルを迎えた曲がもうひとつ。デーモン閣下の作詞・ボーカルによる「巳年のペリカン」。

kyOn:これも『Darjeelingの日』をやってたときのインストで、できたのが2013年の1月だったんですよ。そのときに「今年は巳年だけど、そういえば動物にも生まれた年によって干支とかあるのかな」とふと思って。そこでなんでペリカンが浮かんだのかわからないけど、「巳年のペリカン」って一番かけ離れてて面白いなと思っちゃったんです。ペリカンなのに巳年(笑)。

ーー話を聞いてると、そうやってタイトルとかお題から曲ができていくことが多いんですね。

kyOn:だいたいそうですね(笑)。それでデーモン閣下に聴いてもらったら、誰も聞いたことないような星の名前を入れてぶわーっと書いてきて。

ーーすごいですよね、これ。「頭のなか、どうなってんだろ?」って感じの歌詞で。

佐橋:ねえ(笑)。実は小暮くん……あ、小暮くんって言っちゃいけないんだ、デーモン閣下はね、僕の小学校からの幼馴染なんです。

ーーへぇ~。それにしてもこういうポップさとプログレっぽさが混ざった曲をデーモン閣下に歌わせるというのが面白い。

佐橋:いや、でも僕らとしては最も適してると思ってるから呼んでいるので。そこに違和感はないんですよ。

ーー「こういう人がこんな曲を歌うって面白いだろ?」みたいな感じは……。

佐橋:一切ないです。この曲はこの人にピッタリはまるだろうと思って呼んでいる。ミスマッチは狙ってないですよ。そこまでいたずら好きではありません(笑)。まあ、確かにこの曲はちょっとプログレ入ってるからね。

kyOn:プログレ的なハードロック。しかもドラムは古田たかしさんですから。昔、カルメン・マキ&OZで「私は風」を叩いていた。デーモン閣下は、カルメン・マキなくして語れないってぐらい影響を受けてますからね。

佐橋:「私は風」、学生時代にコピーしたって言ってた。スタジオで嬉しそうに言ってたもん、「古田さんってマキOZのメンバーだったんですよね?!」って(笑)。

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