04 Limited Sazabysは“パンクバンドのロマン”を繋ぐーー『Squall tour』で示した現在地

フォーリミ『Squall tour』レポ

 唐突だが、04 Limited Sazabys(以下、フォーリミ)のフロントマンGEN(Vo/Ba)は、諸行無常を表現しているアーティストだと思う。メロディックパンクという音楽性や彼の見た目に不似合いな形容だと思われるかもしれないが、フォーリミの全身全霊のパフォーマンスと、決して綺麗事の応援ソングを歌わないスタンスの根源にあるのは、バンドの思想の軸を担うGENのある種の冷静さだ。

 2017年は初の日本武道館公演を成功させ、さらにフォーリミが主催する地元・名古屋での『YON FES』も2度目の開催を迎えた。そこで各々、バンドとしてスケールアップした手応えを感じたことだろう。そして尊敬するHi-STANDARDとは2度目の共演を果たし、しかもハイスタが再び完全体=現在進行形のバンドとして復活したツアーに若手として呼ばれた経験もバンドに大きな自信をもたらしたと言える。8月リリースの最新シングル『Squall』はハイスタとの競演前にリリースされたものだが、<くしゃくしゃになった地図を再び広げる>や<こんなはずじゃない こんなもんじゃない>といった歌詞からは、手にした名声が、新しいステージでは使い物にならないようなスピード感でバンドが生きていることを想像させた。そして表題曲をタイトルとした同シングルは、これまでのリリース作品とは違い、メジャーでのシングルらしいシングルの形態をとっていた。この行動からは、不退転の決意というほど大げさな態度は見せないまでも、メジャーという場所で活動する上で前向きな決意を表明したことを示唆している。

GEN
RYU-TA
HIROKAZ
KOUHEI
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 前置きが長くなったが、一定の成功に安堵せず、さらに脱皮を図るフォーリミ。そのバンドとしてのスタンスを表明するのが今回のツアーだった。11月の川崎CLUB CITTA’からスタートし、東名阪のZepp公演はいずれも2Days。各公演でセットリストを大きく変えていた。。その意図には両日見るファンへの配慮もあるだろうし、今回のツアーに参加できなかったファンの渇望を誘う効果もあるだろう。まず何よりZepp2Daysが即ソールドアウトという結果は、大バコライブハウスを“ホーム”にし得る、ライブハウスバンドとしての力量を示している。

 アメリカングラフィティのような裏町感漂うセットに意気揚々と登場した4人。“爽やかで切ない”というバンド最大の魅力を突き通すようなGENの声がZepp Tokyoに響き渡り、ライブは「Feel」で口火を切った。そこからというもの、フォーリミは100メートルダッシュを12本(12曲)続けるような怒涛の展開を見せていく。チアフルな「Warp」では、ファンのハンドクラップも、“ただ楽しい”を凌駕する熱気を孕み、さらに「swim」ではクラウドサーファーが増加する。続けてフォーリミは、ディズニー映画の音楽を彷彿とさせる(それはパンクの常道でもあるのだが)「medley」のドリーミーなきらめきを体現。それは彼らにしか出せないニュアンスの妙だろう。しかし、そんな時間も凄まじいスピード感で過ぎ去り、瞬間はすぐに過去となってしまう。その体感の速さを心地よさに転換しているのは、間違いなくメンバー全員がプレイでシュアショットを打っているからだ。特にGENとKOUHEI(Dr/Cho)のリズム隊は、バンドのエンジンとして逞しくボトムを支える。レーザーやムービングライトといったライティングも冒頭から容赦なく派手だったが、その演出も「そういえば」と思うほど自然とステージの熱量と並走していた。

 「昨日もゴキゲンだったけど、今日もゴキゲンですね。僕らみたいなライブハウスバンドは『Zeppでライブやる』って言いたがるんです。そのZeppで2daysバージン喪失です! Zeppでライブを見るのも好きだし、Zeppのロー(低音)がいちばん好き。男は腹で、女の子は子宮で感じてください」と、GENらしい言い回しで嬉しさを表現。前半は少し懐かしい「Do it Do it」まで走り抜けたところで、一旦メンバーがはけ、KOUHEIが司会進行する「スコール早飲み選手権」に突入した。フロアから男女2人ずつ計4人が戦いに挑むと、ステージに上がった彼らへの応援がまたすごい。おもしろ映像を流したり、こういう和気藹々とした時間を挟み込むのもフォーリミらしい。こういったインターバルが後半の100メートル10本ダッシュをも可能にしているわけだ。

 後半戦はより攻撃的に「monolith」「capture」といった2ビートで攻め、「fiction」からハードコアモードへ突入。ドラムソロからさらにスパートをかけた「discord」では、ブラストビートとディストーションが空間を切り裂く、HIROKAZ(Gt)、RYU-TA(Gt/Cho)のツインギターの図太さを感じられた。ハードな曲をノンストップで演奏する4人。どこまでも走っていけそうなパフォーマンスは、フィジカルとメンタルの双方において、より自由度を増していたように思えた。激しさを増すフロアを見て「今回、ワンマンやってみてわかったのは野郎が多い!」とGEN。確かに目測でも男女比半々ぐらいだろうか。個人的な印象だが、フォーリミは同時期デビューのフェス常勝組バンドと比べ、男性ファンが多い。さらにクラウドサーファーが続出する事実は、彼らの音楽性が体に訴えかけるサウンドであることを裏付けている。

 「Letter」や「milk」を固めたブロックでは、ここまでの流れとは一転、爽やかで切ないバンドの持ち味を発揮。去年の前半まではファンと共振するブロックだったはずだが、今回は包容力すら感じた。そして本編ラスト、今回のツアーの象徴である新曲「Squall」が満を辞してタイトルコールされた時のフロアの熱量のすごさ。日本のロックバンドとして磨かれた歌詞と、綿々と続いて来たメロディックパンクのテン年代の完成形。<まだやれる あの時と似てる>という歌を聴きながら筆者は、「いやもう今、まさにその渦中にいるじゃないか」と頭のなかで呟いたぐらいだ。そう感じさせた時点で、今回のツアーの意義は達成されたのではないだろうか。

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