トレンドセッターとしてのTVは健在? 安室、欅坂、TWICEら紅白勢上位占めた年始複合チャート

【参照:ビルボードジャパン  チャート・インサイト(2018年1月15日付)

紅白歌合戦の披露曲が軒並み上位にランクイン 

安室奈美恵『Hero』

 今週のビルボードチャートは安室奈美恵「Hero」が1位を獲得した。紅白歌合戦での歌唱シーンが話題を呼び、ダウンロードとストリーミングで高いポイントをマーク。CD売り上げを除く、デジタル領域でのセールス面に大きく影響し堂々の総合首位となった。同様に、番組でのパフォーマンスが年末年始にかけて大きな話題を呼んだ欅坂46「不協和音」が2位に続いた。「不協和音」はセールス面に加えてTwitterとMV再生回数でも高ポイントを獲得。2018年の年始はこの二者が話題を席巻していたと言っても過言ではないだろう。また、この上位2曲はチャートイン回数が40回を超えており、ロングヒットの様相を見せ始めている。

 その他、TWICE「TT」、乃木坂46「インフルエンサー」、SHISHAMO「明日も」、三浦大知「EXCITE」、WANIMA「ともに」など紅白歌合戦での披露曲が軒並み上位にランクインし、テレビは今でもトレンドセッターとして充分な力を持つメディアとして再確認できる結果となった。また、話題性をしっかりと汲み取れるビルボードチャートの特徴がしっかりと発揮された結果とも言えるだろう。

back number「瞬き」が”紅白勢”に食い下がる

 紅白歌合戦の出場歌手がランキングを占めるなか、出場していないにも関わらず先週と比べてジャンプアップし、3位となったのがback numberの「瞬き」だ。佐藤健と土屋太鳳がダブル主演を務める映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』主題歌としても親しまれている同曲がラジオ部門で1位、CD読み取り回数で1位という結果は、楽曲面での注目度の高さがうかがえるものである。

順調にトップ10をキープするDAOKO×米津玄師「打上花火」

 映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌で、昨年の8月にリリースした「打上花火」が今週もトップ10内をキープした。デジタル領域、特にストリーミングとMV再生回数において高ポイントを獲得し続けているのため、若いリスナーからの強い支持を受け取れる。2018年にまたがるロングヒットとなれるか今後も要注目だ。

紅白曲のフィジカル領域での動きは鈍かった

 今週の結果は、ある話題に対してユーザーがまずアクションを起こすのが「デジタル領域」であるということを示す良い結果となった。チャートを見ても、紅白披露曲の「フィジカル領域」(=フィジカルセールス+CD読み取り回数)における動きは鈍く、数値としては確かに現れているものの上位に食い込むまでには至っていない。テレビ番組で披露された曲や紅白歌合戦に出場したことによる影響が、数値としてダイレクトに反映するのがダウンロードやストリーミング、MV再生回数だということが非常に顕著に現れたのが今週の結果だ。

 元来、そうした音楽的なトレンドの可視化の役目を担っていたのがCDセールスだったとするならば、現在その役目を担っているのはYouTubeやサブスクリプションといったインターネット上のサービスだろう。世間的なトレンドとは切り離された「独立したチャート動向を見せる」という意味においては、CDの売上枚数はラジオチャートと近いものがある。前にも書いた通り(参考:“セールス”と“話題性”の乖離をどう捉えるか? 最新複合チャートに見る音楽シーンの現状)「人に聴かせたい」「オススメの一曲」といったパーソナルな意向が集計されるラジオ部門に対して、CDセールスはCDセールスで、「購入することで得られる付加価値の需要の序列」として独立したチャートを作っているのだろう。もちろん、紅白歌合戦を見てCDを購入する人もいるだろうし、ラジオ局にリクエストする例も多少はあるだろう。しかし、それを凌駕するほどの強い動きをデジタル領域が見せているのが2018年最初の週のチャート結果だ。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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