CooRieが新作で表現した”音楽の楽しさ” 中原麻衣・スフィアからの「刺激」も語る

「スフィアの4人は人生の節目で刺激をくれる」

ーーあと、アルバム全体を通して聴いたとき、rinoさんの歌に大きな変化を感じたんです。これまでの作品ではどちらかというと柔らかく歌うというイメージだったのですが、この作品では声が突き抜けるような歌い方になっている気がしました。

rino:それはとても嬉しいです。じつは、2016年から初めてボイストレーニングをしてみたんですよ。それまではプロデューサーの「ボイトレしたら歌い方が変わっちゃうんじゃない?」という何気無い一言をずっと引きずっていたんですけど、やってみたらそんなことはなくて。声の成分が増えたり、自分の声質や仕組みを理解することで、より自由に歌えるようになりました。歌える音域が広がると作曲も変わってくるので、相乗効果で全部が良くなっていると思います。

ーー歌についての進化といえば、「VOICE SONG」ではゴスペル的な歌い方にも挑戦していますよね。

rino:歌手はアスリートなんだなと改めて思いました。身体が楽器なので、訓練をすればするほど管理が大事になっていくんです。これまでの自分がそこに対して甘かったと感じる2年間でしたし、そういう意味でこの曲は、私の中で歌と向かい合うスタート地点にもなりました。音域や響きを一つずつ確認して仕上げていったのですが、自分の中では完全に納得がいっているわけではなくて。ビブラートの揺れを何本も重ねるにあたって均一にならなかったりとか、コントロールがまだまだ効かないんだと悔しい思いもしているので、次に向かう原動力にもなっています。

ーーもう一つ印象に残ったのは、アルバムで最もアニソン的といえる「HAPPY CRESCENDO」。この曲は恋愛アドベンチャーゲーム『D.C.III WithYou〜ダ・カーポIII〜 After Stories』のオープニングテーマでもあります。CooRieやrinoさんのキャリアを語るにあたって、『D.C. 〜ダ・カーポ〜』との14年間は欠かせないと思うのですが、長く寄り添ってきたことで変化はありましたか?

rino:『D.C. 〜ダ・カーポ〜』はアニメの挿入歌(「そよ風のハーモニー」)を書かせていただいてからここまで長い付き合いになって、育ててもらったという感謝もあります。いまは半分くらい「CooRieらしさ」を求められなくなったという印象ですね。『D.C.III 〜ダ・カーポIII〜』あたりからCIRCUSさんの依頼内容が変わってきて、「こんな内容をrinoさんに歌ってほしい」や「こういうテイストはどうですか?」と提案していただいたり。「MISTY LOVE」も『D.C. 〜ダ・カーポ〜』にないようなブラックミュージック寄りのアプローチだったりと、CooRieを知ったうえで信用してくれているような気がします。

ーーrinoさんの作る楽曲は、ジャズ・クラシックの要素をすごく感じるのですが、曲作りにおいてその要素は大きいですか?

rino:そうですね。ピアノのボイシングが大好きだから、アレンジャーも全員ピアノ系の人なんですよね。テンションの付け方とかすごい好みがあって。でも、最近は格好良ければどのジャンルも好きと言う感覚に変わってきているような気がします。余計なアレンジをしていない、引き算の音楽がより好きになっているというか。

ーー確かに、特定のジャンルにこだわらず、テクノポップ・バロック調・90年代前半的な歌謡ポップスなどと幅広く展開しているアルバムですね。音に関しては編成をシンプルにしつつ、それを感じさせない色濃さが際立つアルバムになっているような気がします。

rino:長田くんのせいでしょうね(笑)。あとは浅田祐介さんや安瀬聖さんといったアレンジャーの個性もかなり強めに出ていると思います。

ーー浅田さん編曲のトリッキーな「BON-BON」でアルバムを終わるというのも、面白い構成ですね。

rino:だいぶ構成が変わっている曲なので、どこに入れるか迷ったんですけど、最終的にこの位置にしました。この曲はアニメ『田中くんはいつも気だるげ』(TOKYO MXほか)のタイアップ曲なんですが、制作時は「まだいけるんじゃない? タイアップだと思ってこれぐらいって決まってない? CooRieらしさを考えて作ってない? 全部取っ払っていいから!」とプロデューサーからどんどん自分を引き出してもらったんです。作家業をやっているなかで自分のルールや方程式が決まってきていたので、「アニソンだって思ってるでしょ? 89秒に音楽が詰まってると思っちゃダメ」と詰められたりして、「表現の幅は自分で決めなくて良いんだ、好きなものは好きでいいんだ」と改めて勇気をもらったような気がします。あと、浅田さんのアレンジは歌の居場所があり、とても歌いやすくて、その発見も嬉しかったです。

ーー15周年を目前にしたタイミングでこのアルバムを出したわけですが、年始にはyozuca*さんとの初となるユニットライブ『yozurino* 15th Anniversary Live Pop Step SMILOOP* vol.1~16年目の初ライブ~』を開催します。

rino:そうなんです。yozuca*とCooRieの共演はあっても、ユニットとしてライブをするのは初めてで。場所も、CIRCUSさんのライブイベントで2人が初共演した際と同じ表参道GROUNDにしたんです。このライブはバンド編成でお届けするんですが、CooRieはアコースティック編成のライブがメインなので、いまから緊張しています。しかもユニットライブということでソロコーナーは設けず、始めから終わりまで、2人ともステージに上がったままやりきろうと思っているんですよ。

ーー2人はコンビのようなイメージもあるので、掛け合いも楽しみにしています。

rino:MCで喋りすぎないように気をつけます(笑)。ちょっと照れくさい曲も含め、yozurino*として出した作品を中心に、各々が選びあった互いの楽曲も歌う予定です。

ーーyozuca*さんとの縁も『D.C. 〜ダ・カーポ〜』がきっかけでしたよね。

rino:そうです。先ほど話したイベントで初共演した際、彼女の代表曲である「ダ・カーポ 〜第2ボタンの誓い〜」を歌う前に「振り付けをつけてきました」と言われて、仲良さげに歌ったのが懐かしいですね。それがこんな一生の友達になるなんて思わなかったですから。初めて人前で歌った私たちが、もう一度原点に帰る瞬間になるんだなとワクワクしています。あと、2月26日が15周年記念日なので、その前日の15日にはいつもの南青山MANDARAでアコースティックライブをやる予定です。

ーーバンド&アコースティックと、まったく違ったアプローチが見れそうで楽しみです。2018年はどのような周年イヤーにしていきたいですか?

rino:最近は作詞のみの依頼が多くなってきているので、2018年はもうちょっと作曲に力を入れようと思っています。先日、8〜9年やってきて初めて、スフィアの4人と食事する機会があって。そこで「彼女たちがパワーアップして帰ってくるときに、私もパワーアップできているのか?」とふと思い、「だったら作曲の腕を上げて、彼女たちに堂々と曲を贈れるようになりたい」と。スフィアの4人は人生の節目で刺激をくれるんですけど、今回も思いっきり背中を押してもらいましたね。あと、「フラクタル」を経て、長田くんの曲をやることの面白さを改めて感じたのは大きいです。初期のCooRieに戻るわけではないですが、私が曲を作るということにこだわらず、CooRieとしてできることがまだまだありそうだなと感じました。

(取材・文=中村拓海)

CooRie『セツナポップに焦がされて』

■リリース情報
『セツナポップに焦がされて』
発売中
価格:¥3,000

1. エクレア
作詞:rino 作曲:rino 編曲:長田直之
2. セツナポップに焦がされて
作詞:rino 作曲:rino 編曲:長田直之
3.Rearhythm
作詞:rino 作曲:rino 編曲:長田直之
4. 愛しさの雫
作詞:rino 作曲:rino 編曲:chokix
5. 終わらない Prelude
作詞:rino 作曲:rino 編曲:安瀬 聖
6.HAPPY CRESCENDO
作詞:rino 作曲:rino 編曲:chokix
7. フラクタル
作詞:rino 作曲:長田直之 編曲:長田直之
8. 春風とクリシェ
作詞:rino 作曲:rino 編曲:安瀬 聖
9.MISTY LOVE
作詞:rino 作曲:rino 編曲:chokix
10. キミと MUSIC
作詞:rino 作曲:rino 編曲:長田直之
11.VOICE SONG
作詞:rino 作曲:rino 編曲:rino
12.BON-BON
作詞:rino 作曲:rino 編曲:浅田祐介

■ライブ情報
『yozurino* 15th Anniversary Live Pop Step SMILOOP* vol.1 ~16年目の初ライブ~』
日時:2018年1月13日 開場 18:00 開演 18:30 
場所:表参道GROUND(東京都渋谷区神宮前4-2-12 WES)
チケット:¥5,940(消費税込)

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