ORANGE RANGEらしい“団結”の在り方とこれからへの期待 『UNITY』ツアーレポ

ORANGE RANGEがみせたバンドとしての強さ

 結成15周年を記念して2016年から年をまたぐ形で47都道府県ツアーを行ない、その東京公演では8年振りに日本武道館でのライブを開催。そして11月には2年3カ月振りのオリジナル作品となるEP『UNITY』を発表したORANGE RANGE。彼らのツアー『ORANGE RANGE LIVE TOUR 017-018』の中野サンプラザ公演1日目が12月15日に行われた。このツアーは来年2月まで続くため詳しいセットリストについては触れないが、まさに「ORANGE RANGEの今」が、ライブ全体からひしひしと伝わってくるような雰囲気が印象的だった。

 まずはメンバーが登場すると、早速巻き起こる手拍子やコール&レスポンスなどを交えながら、デビューから現在までの様々なレパートリーを次々に披露していく。途中、RYO(Vo/MC)が今回のツアーで行なうなぞかけを使ったMCを披露するなど笑い話も交えながら進む雰囲気は彼らならではだ。しかも、ORANGE RANGEの場合、次々に繰り出される楽曲の音楽性がとにかく幅広い。ミクスチャーロック、ヒップホップ、バラード、エレクトロ、レゲエなど様々なジャンルを横断しながら3MCが次々にポジションを変えて次々に客席を湧かせていく。中には初期のRadioheadをはじめとする90年代UKロックからの影響とヒップホップとが融合した曲があったり、LCD Soundsystemのように延々と続くミニマルなディスコ/ファンクグルーブが会場を覆ったり、EDM~エレクトロを取り入れた楽曲があったりと、国内外の様々な音楽要素を取り入れつつ、それをどう変化させて唯一無二のものにするかを追究してきた彼ららしいステージが広がり、楽曲ごとに演出も多岐にわたっていた。

 また、この日は今年2月の武道館公演でも共演を果たした二松学舎大学付属高等学校の吹奏楽部やダンス部の学生たちが登場し、2曲でバンドとコラボレーション。今回のツアーでは各地でこうした地元の人々とのコラボが予定されており、観客のみならずその土地の人々も巻き込む形でアーティストとオーディエンスの垣根を取っ払っていく。学生ともコミュニケーションを取りながら、時にシリアスに、時にユーモラスにライブの雰囲気を作るオープンマインドな雰囲気はまさにORANGE RANGEならではのものだった。そしてもうひとつ、この日印象的だったのは、最新作『UNITY』の楽曲が、キャリアを踏まえた上でもなお驚くべき多様性を感じさせてくれたことだろう。この作品は全5曲入りのEPながら、その内容は彼らのアルバムと同様様々な音楽性が詰め込まれている。リード曲となった従来のORANGE RANGEらしさ溢れる「チラチラリズム」はもちろんのこと、『ビバリーヒルズ青春白書』のようなアメリカのTVドラマをイメージして作られたという「脳内ポップコーン」は、80年代エレポップ風の楽曲を表現。一方、音響的な魅力を加えて音源ではややダウナーでシリアスな雰囲気を漂わせていた「Second Hand」は、ライブではよりダイナミックなバンドサウンドに変化していて驚かされる。また、この日サポートを務めたバンドとは旧知の仲であるSASSYのドラムソロを経て披露された「アオイトリ」では、ヘヴィなギターサウンドと変則的なリズムを持ったAメロ~Bメロとストレートに疾走するサビとのコントラストがライブの現場ではよりくっきりと感じられたのも印象的だった。

 中でもこの日ハイライトとなったのは、YOH(Ba)が作曲を手掛け、47都道府県ツアーで感じたファンへの感謝を形にした楽曲「Carnation」だ。RYOが最新EP『UNITY』について話しはじめる。「『UNITY』という作品は、去年から47都道府県を回って、海外にも行って、充実した15周年を過ごさせてもらった中で、そこで終わるのではなくてもっと強いバンドになるために『もう一回ひとつになろう』と5人で話し合ってタイトルを決めました。だから、期待していてください。これからもよろしくお願いします!」。続いて楽曲を担当したYOHが「ひとつひとつの街を見ながら、長く応援してくれたことへの感謝を込めて作った曲です」とアナウンス。これまで沖縄らしさをそれほど出すイメージがなかった彼らが三線を取り入れたこの曲は、各地を回る中で感じられた「それぞれの大切な場所/人/繋がり」と、様々な場所に暮らすこれまで支えてくれたファンへの感謝がストレートに表現されている。楽曲ごとに次々にスタイルを変え、陽気なムードでどこかリスナーを煙に巻くような雰囲気も魅力だった彼らがファンへの真っすぐな思いを歌う姿に、バンドのこれまでの歩みと、その中での変化が凝縮されているように感じられた瞬間だった。

 とはいえ、彼らの意識は15周年を経て、すでにこれからの未来へと向かっている。実際、「Carnation」ではこれまでの感謝を滲ませつつ、こんな風にも歌われている。〈「世界中を敵にまわしても 守るもの」やっと見つかったよ/涙も今は宝物/道半ばの今だからこそ/感じとった愛をもって繋げよう/未来へのレールは晴れ模様〉――。これまでへの感謝があるからこそ、これからに向けて進んでいこうとするバンドの気持ちが深く胸を打つ瞬間だった。ラストは人気曲を連発し、全員でカチャーシーなども踊りながら大団円。あらゆる音楽要素や多種多様なオーディエンスをひとつに繋いできたORANGE RANGEらしい「団結=UNITY」の在り方と、バンドのこれからへの期待が同時に感じられるようなステージだった。

(文=杉山仁/写真=平野タカシ)

■ツアー情報
『ORANGE RANGE LIVE TOUR 017-018 〜UNITY〜』
2018 年
1月7日(日) 大阪・オリックス劇場
1月8日(祝月) 兵庫・三田市総合文化センター 郷の音ホール
1月13日(土) 愛知・アイプラザ豊橋
1月14日(日) 三重・シンフォニアテクノロジー響ホール伊勢
1月20日(土) 静岡・裾野市民文化センター
1月21日(日) 埼玉・東松山市民文化センター
1月27日(土) 山口・スターピアくだまつ 大ホール
1月28日(日) 岡山・ロマン高原かよう総合会館
2月3日(土) 栃木・小山市文化センター
2月4日(日) 神奈川・厚木市文化会館
2月11日(日) 高知・県立県民文化ホール オレンジホール
2月12日(祝月) 愛媛・松前総合文化センター
※終了分は割愛

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