シシド・カフカ、多彩な表情で示したアーティストとしての奥深さ ライブツアー最終公演レポ

シシド・カフカの多彩な表情を見た

 前髪をかきあげ、満面の笑みでドラムを叩き歌うシシド。打ち込みビートと生ドラムをミックスしたデジロック風の楽曲「タチアガレ」では、なんと歌詞が飛んでしまい、「歌詞忘れちゃった、ごめんね!」と演奏しながら叫ぶ場面も。こんな、お茶目でひょうきんな一面も持ち合わせていたのは、ライブを観るまで全く知らなかった。「この疲労感、やっぱりライブは楽しいね!」と目を輝かせたかと思えば、「この1年間は、ずっと罵倒し続けていた気がする」と、自らが出演していた数々のドラマの役柄にちなんだジョークで会場を沸かす。そんな親しみやすいキャラクターに、気づけば筆者もどんどん魅了されていた。

 ジェームス・ブラウンもかくやと言わんばかりのファンキーチューン「3.2.1・・・CUT」や、歪みまくったベースリフがレニー・クラヴィッツを思わせる、ヘヴィな楽曲「さようなら あたし」を繰り出し新曲、「特選」を初披露。「人生は選択の連続で、選び取った選択を良いものにするのも、悪いものにするのも自分次第。どんな選択だって“特選”にしたい」と、新曲の歌詞に込められた意味も明かした。

 そうこうしているうちにラストスパートへ。奥野真哉(ソウル・フラワー・ユニオン)プロデュース曲「朝までsugar me」、ダンスナンバー「ラヴコリーダ」とたたみかけて本編は終了。アンコールでは、横山剣とのデュエットソング「羽田ブルース」を、オーディエンス全員とデュエットするという、粋な演出で再び会場を一つにした。最後は甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)と共作した「バネのうた」を演奏し、スティックを後ろ手で投げて「よいお年を!」と叫び、ステージを去った。

 同性も憧れるほどクールな美貌を持ち、髪を振り乱し激しくドラムを叩きまくるシシド・カフカ。時に熱くシャウトし、時に明るく笑うなど、ライブでしか見られない様々な表情を、たっぷりと堪能した濃厚な一夜だった。

(写真=青木カズロー)

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。主な共著に『シューゲイザー・ディスクガイド』『ビートルズの遺伝子ディスクガイド』、著著に『プライベート・スタジオ作曲術』『マイ・ブラッディ・ヴァレンタインこそはすべて』『メロディがひらめくとき』など。

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■リリース情報
配信限定シングル『zamza』
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