KinKi Kidsの楽曲はなぜ色褪せないのか 合作曲「Topaz Love」にも表れた“ふたりが歌う意味”

 KinKi Kidsのベストアルバム『THE BEST』が、オリコン週間アルバムランキング(12月18日付)で1位を獲得した。このアルバムはCDデビュー20周年を記念して、今年7月までにリリースされた全シングル45曲を収録したもの。KinKi Kidsは、“デビュー以来シングル連続オリコンチャート1位”の記録がギネスに認定され、現在も更新中だ。「硝子の少年」「 愛されるより愛したい」「ジェットコースター・ロマンス」「全部抱きしめて」……収録曲のリストを見れば、いかにKinKi Kidsの曲たちが時代を彩ってきたかを実感する。メロディと共に、それぞれの20年が走馬灯のように駆け巡るのではないだろうか。

 そう、20年も経っているのだ。思えば、デビューシングル「硝子の少年」も、懐かしの8センチCD。当時のPV映像を見れば、KinKi Kidsもまだまだあどけなさが残る10代の少年たちだった。だが、なぜかKinKi Kidsの楽曲は色褪せない。一向に、古くてダサいものにならないのだ。ヒットソングとは時代を象徴する歌となる一方で、過ぎ去った時を痛感するものにもなる。先述の通り、KinKi Kidsのシングルはすべてオリコンチャート1位を記録している ヒットソングばかり。だが、ひとつとして、時代に取り残されることがない。それは、なぜなのか。

 「歌ってきたジャンルは幅広いかもしれないけれど、やっぱり土台として中心には『硝子の少年』がある」とは、『めざましテレビ』(フジテレビ系)で、堂本光一が語った言葉だ。「硝子の少年」を作曲した山下達郎は、ふたりの声質からマイナーな曲が似合うと考え、楽曲を提供したという。流行っているから、売れる曲だから……ではなく、“ふたりが歌う意味がある”というKinKi Kidsのアイデンティティの確立。それが「硝子の少年」 でのデビューだった。

 ジャニーズアイドルとしては珍しい曲調でのデビューに、「売れない」と囁かれたこともあったという。堂本剛は「ジャニーズのルールとか、ジャニーズっぽいとか、王道とか。“それって誰が決めているんだろ?”って思いながら生きているタイプで……」と、そんな周囲の言動をデビュー当時から冷静に捉えていたようだ。一見、ジャニーズの王道を走ってきたように見えるKinKi Kidsだが、その歩みは“らしさ”の追求だった。その挑戦の日々は、いつしか彼らなら成し遂げてくれるという期待に変わり、そして切り拓いてきた道そのものが今やジャニーズの王道になった といっても過言ではない。

 剛が詩を、光一が曲を作った「好きになってく 愛してく」のオリコン1位獲得は、日本のアイドルグループとして初の快挙だった。光一がK. Dinoというペンネームで、正体を明かさないまま「solitude 〜真実のサヨナラ〜」をリリースしたこともあった。「Hey! みんな元気かい?」も、今でこそいい曲だと語るふたりだが、当時“こんなに明るい曲はKinKi Kidsらしくない”と感じて、その反骨精神からB面の「愛のかたまり」を作ったという逸話も。

 KinKi Kidsは“自分たちが歌う意味はなんだ”と、いつも葛藤し、それが新たな表現を生み出してきた。異なる個性を、無理に合わせるのではなく、いい距離を保つ。一個人を確立させながら、同時にKinKi Kidsらしさが成熟していく。そんな理想のパートナーシップを時代に先駆けて見せてくれたのも彼らだ。

 以前、ふたりは意識しないと声が合ってしまい、まるでひとりが歌っているようになってしまうと語ったことがある。きっとKinKi Kidsは、堂本光一と堂本剛というふたりのデュオでありながら、もはやひとつの人格なのだ。ふたりのイメージカラーの赤と青は、その人格に流れる動脈と静脈を示しているかのように、楽曲に血が通う。だから、楽曲たちがずっと生き続ける。

 光一と剛は、合作するとき、それぞれお互いに歌ってほしい詩と曲を考えているという。 きっと自分の中に流れるメロディも言葉も、相手の中にスッと合流するイメージが自然とつかめるのだろう。その他の誰でもない“この人に歌ってほしい”と願って楽曲が生み出される温度感。その想いは、楽曲を提供するアーティストたちにも共通しているはずだ。

 “3人目のKinKi Kids”と呼ばれる堂島孝平は、『THE BEST』のリリース日、Twitterに“本当に彼らは世紀のデュオですね。改めて、僕は思う” とつぶやいた。一緒に仕事をした人たちから愛されるのも、KinKi Kidsという人格の魅力だ。そして、不思議なことにKinKi Kidsの周りに集まる人たちも血を分け合ったファミリーのような感覚を持つことができる。

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