コブクロにとって“今”は常に通過点だーー2人の歌の力が発揮されたツアー最終公演

コブクロ、歌の力発揮したツアーファイナル

 最初のワンマンライブのお客さんは67人だった――。小渕が懐かし気に“はじまり”のエピソードを語り、「夢をテーマにした歌です」と言って歌った「Starting Line」の、胸を打つ説得力は素晴らしかった。が、何と言ってもこの日の感動の頂点を極めたのは、そのあとの2曲「蒼く 優しく」と「心」だったと言い切りたい。「蒼く 優しく」はもう10年前のヒット曲だが、弦カルテットを加えたエモーショナルなサウンド、バンドのテンションの高さ、加えて黒田の鬼気迫る激唱に聴き惚れるのみ。そして「心」は新曲にも関わらず、すでに「蒼く 優しく」に伍するほどのパワーを持ち、ラスト一節<誰も一人じゃない>を、小渕と黒田がノーマイクのアカペラで歌い切った時の、さいたまスーパーアリーナいっぱいに響き渡った生々しい声の波紋は忘れられない。観客によるスタンディングオベーション。1分以上も鳴りやまない拍手。黒田と小渕の、会心のハイタッチ。“心”を擬人化し、“自分”と対比させるという手法で、たった一つの揺るがないものを見つけ出す。作家としての小渕の才能を凝縮した、紛れもない名曲の誕生だ。

「30公演歌ってきて、今日で『心』という歌が完成したと思います。一生歌っていきたいと思います」(小渕)

「“誰も一人じゃない”で、僕の2017年は終わりました(笑)。黒田俊介、完。」(黒田)

 小渕の生真面目なセリフを、黒田がユーモラスに混ぜっ返す。負けじと小渕がツッコミを返し、ここからは思い付きのゆるいダベ……いや、当意即妙の爆笑トークが続くのだが、面白すぎるので割愛。詳しく知りたい方は、次のコブクロのライブに参加してぜひ体感してもらいたい。

 「話、長いわ!」という黒田のツッコミを受け、ようやく歌う気になった小渕が「ここから盛り上がって行こう!」と観客を煽る。曲は、本日3曲目となるCD未収録の新曲「白雪」(しらゆき)だ。スピード感あるポップなロックチューンで、観客が腕にはめたLEDライトが一斉に白に染まる中、空から雪の如く銀紙が舞い降りる。ライブは一気にクライマックスへ、ここからはお馴染みのアップチューンを連ねてラストまで全力疾走だ。「memory」ではド派手な銀テープが宙を舞い、小渕がレスポールを弾きながら花道を駆け抜ける。「神風」では、バンドマスターでギターのフクチャンこと福原将宣と小渕のツインギターと、ベース山口寛雄のバトル中に黒田が突撃し、何やら笑いながら歌ってる。そして最後はやはりこの曲、「ストリートのテーマ」だ。「朝まで僕らと一緒に、歌ってくれませんか?」と、二人と2万1130人との幸福なコール&レスポンスがいつ果てるともなく続く。アコースティックギターを黒田に任せ、小渕は4本の花道をくまなく駆け巡る。何というパワー、その姿はもはや歌うアスリートだ。最後まで軽快な足取りも力強い歌もまったく衰えないまま、本編が終了したのは午後7時前。約3時間、17曲。もう満腹? いや、まだ入る。拍手は鳴りやまない。

 アンコール。LEDライトの白色が無数のキャンドルライトのように輝く中、「未来」を歌い終えた小渕が「この景色を見せてくれてありがとう」と言った。そしてツアーが終わったらすぐにレコーディングに入ること、来春からは二人だけで回るツアーを行うこと、来年9月の結成20周年に向けて「これからもチャレンジし続けます」と宣言すると、観客からのあたたかい拍手が湧き上がった。コブクロは長距離ランナー、今は常に通過点だ。アンコール2曲目、そして本日のラスト、つまり全30公演の最後を飾る曲は、2001年にリリースした2ndシングル「轍‐わだち‐」だった。中盤にアコースティックギター1本で観客と大合唱するパートをはさみ、この人生をたゆまず前進してゆく強いメッセージを込めたロックチューンを歌い上げた小渕が、顔をくしゃくしゃにして「心ツアー、完結!」と誇らしげに叫ぶ。最後は明るく朗らかに、ステージの上にも客席にも笑顔しかない。

 コブクロのライブは誰一人をも置き去りにしない。世代も音の好みもなく、ロックもポップもない。ただひたすらに本物の歌のうまさと、そこに込めた心の強さを教えてくれる場だ。すべての人の心に明るい花を咲かす、そのライブに祝福を。来年は結成20周年、どんな景色を見せてくれるのか今からもう楽しみだ。

(取材・文=宮本英夫)

■セットリスト
コブクロ『アサヒもぎたて presents KOBUKURO LIVE TOUR 2017 “心” 』
11月26日(日)さいたまスーパーアリーナ

1. 君になれ
2. 虹
3. 君という名の翼
4. tOKi meki
5. 紙飛行機
6. SUNRISE
7. HELLO, NEW DAY
8. LIFE
9. 夏の雫
10. 流星
11. Starting Line
12. 蒼く 優しく
13. 心
14. 白雪
15. memory
16. 神風
17. ストリートのテーマ
18. 未来
19. 轍-わだち-

■番組情報
11月4日(土)に行われた広島グリーンアリーナ公演の模様を、CS放送『TBSチャンネル1』で2018年春にテレビ初独占放送
『コブクロ LIVE TOUR 2017 “心”』
CS放送「TBSチャンネル1 最新ドラマ・音楽・映画」

コブクロオフィシャルサイト

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる