欅坂46『風に吹かれても』、2週連続売上首位の理由は? カップリング曲や販売形態から考察

従来イメージを踏襲した「避雷針」

 「風に吹かれても」がそれまでのシリアスな欅坂46のイメージを払拭した楽曲であったのに対して、「避雷針」はグループのパブリックイメージを踏襲した作風を保っている。歌詞の内容も非常に“今年の欅坂46的”であり、こうしたグループ像を保持した楽曲を表題曲の立ち位置と交差させることで、結果的には表題曲の自由度を広げている。つまり、グループとしてのスタイルを現在進行形で維持しつつも、外向けのイメージは刷新することを可能にしているのだ。

表題曲の音楽的な特徴を裏返す

 前記事で書いた通り、「風に吹かれても」はシンプルな構造と寄り道しない展開であるのに対して、「避雷針」は転調を多用しサウンドも複雑で寄り道の多い展開、という真逆のスタイルを採用している。面白いことに、「避雷針」のベースが縦横無尽に動き回るリズム面であったり、文字量が多く速いボーカル面については、表題曲の特徴を裏返したような印象がある。小気味良い軽快なリズムがここでは荒れ狂う暴力的なベースラインに、音域が狭く速い譜割りの主旋律がここではさらに閉塞的・抑鬱的なボーカルに……。表題曲とカップリング曲のこうしたコインの表と裏のような関係性がシングルCDそのものに多面的な視点を与えているのだ。

様々な要素を内包してゆくCD

 CDの販売形態は現在、非常に多岐に渡っている。通常盤と初回限定盤(通常盤のなかにも通常仕様と初回仕様とがあったりする)、イベント券の封入、収録内容違いの複数形態、DVDの付属、ランダム特典の封入、店舗別特典……とかなり複雑化している。そして、AKB/坂道グループ関連の作品はこれらのすべてが揃っている。今回のシングルはそうした“企業努力”がさらに強まり、楽曲間の相互に関係性を持たせ、シングルひとつとってみてもカップリング曲を含めた複数曲の要素を絡ませた状態のパッケージになっている。もっとも、それはこの作品に始まった話ではない。が、そうした性質を持ったシングルが2週連続1位を獲得したことは、今後も注目しておくべき事実である。

■荻原 梓
88年生まれ。都内でCDを売りながら『クイック・ジャパン』などに記事を寄稿。
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Twitter(@az_ogi)

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