ダイスケと小林崇が語り合う“ツリーハウスと音楽”、そして表現者としての共通点

ダイスケ×小林崇が語る“ツリーハウスと音楽”

「そろそろやりたいことを自由にやろうかな」(ダイスケ)

──今回、『THE ROAD MOVIE OF TREEDOM』の音楽を担当したことで、これからのダイスケさんの活動や作品そのものにフィードバックする部分はありそうですか?

ダイスケ:はい。実は、今回のミニアルバム『Acoustic Journey Tayutai』に入っているボーナストラックは全てインストなんですけど、これは『THE ROAD MOVIE OF TREEDOM』の音楽をやらせてもらったことがきっかけで生まれた曲たちなんです。今までも何度かインスト曲を描いたことがあったのですが、ずっと発表せずにここまで来たんですよね。これからは、もっと積極的に作っていこうと思いました。

──では、その新作についてお聞きしたいのですが、今回はかなりアコースティック寄りになりましたよね。

ダイスケ:そうなんです。結構、ムダを削ぎ落とそうと思って作りました。以前はアレンジャーさんに楽曲を丸投げしてたこともあったんですけど、今回はベーシックな部分は全て自分1人で作りこみました。おかげでアレンジはもちろん、アートワークも含めてやりたいことができたと思います。自分の理想と結果が、そんなに食い違わなくなってきたというか。

──というのは?

ダイスケ:以前は、「求められていることをやろう」という気持ちが強くて、受け手の反応を伺っていたところがあったんですけど、5周年を迎え、年齢的にも落ち着いてきたのもあって、「そろそろやりたいことを自由にやろうかな」って(笑)。最初はそれにも抵抗があったんですよ。「ファンの人に受け入れてもらえなかったらどうしよう?」って。でも、僕がやりたいことを自由にやっている方が、結果ファンの人も喜んでくれるし、今まで以上に認めて応援してくれるようになったと思うんです。なので、デビューしてから、今が一番楽しいですね。

──なるほど。アルバムタイトルにも使われている、「Tayutai(たゆたい)」というワードに込めた思いは?

ダイスケ:昔から好きな言葉なんです。「たゆたう」には「頑張り過ぎない」とか「身を委ねる」とか、「流れに身をまかせる」みたいな意味があって。結構、生きていくのが辛いなと思うこともあったんですね。人間関係とか仕事とか。例えばこの仕事も、いつまで続けられるのだろう、将来的なビジョンはどうしたらいいのだろうって、色々考えているうちに、自分の人生がどんどん重たくなってしまって。でも、たった一度しかない人生なのに、色んなことで一々悩んだり苦しんだりしていたら、それこそずっとつまらないまま死んじゃうないかと思ったんです。

 そんなに力み過ぎず、時には受け流すなどしながら生きていった方が楽しく生きられるような気がするし、僕と同じように心配性でクヨクヨしたり、「生きてるって何がいいの?」とか考えてしまったりしがちなファンの人に、僕の楽曲を通じて「もうちょっと肩の力を抜いていこうよ」っていうことを、今このタイミングなら言える! と思えたんですよね。それでこのタイトルを付けることにしました。

小林:生きていると、「思うようにならないな……」と実感せざるを得ない局面なんて、沢山あるよね。例えば、どんなに納期が迫っていようが、台風の日にツリーハウスを作ることはできないわけですよ(笑)。あるいは、自然の力で伸びてくる枝の向きを、こちらが勝手に変えることもできない。本当に、木や自然に委ねるというか相手に任せていくしかない。無理なことは無理だと諦め、風や雨に対してもさからうのではなく流すというか。正面から風が当たらないよう、曲がるしなやかさや柔軟性も、時には必要なんです。

ダイスケ:確かに。特に今の若い子たちは、もっと柔軟性というものを大切にした方がいいんじゃないかって僕も思いますね。「俺の人生は、こうじゃなきゃいけない」なんて考えている人、割と多いと思うんです。「いい学校へ行かないと、人生失敗した」とか、「いいところに就職できなかったから人生詰んだ」とか。それで実際に死んじゃう人もいるわけじゃないですか。なんか、自分の人生を「こうだ」と決めつけるのは勿体ないって僕は思うんですよね。

──<足りないものさがすより 持ってるものに気づけたら そして自分を愛せたなら 日々の色味も 愛おしく感じるよ>という歌詞にもその気持ちはあらわれていますね。

ダイスケ:自分自身がつい思い込んでしまいがちな性格なので、それを歌詞にして自分に言い聞かせているところも正直あるんですよね(笑)。自分が持っていないものを他の人が持っていると、つい羨ましくなってしまったり、自分の足りないところばっかり目がいってしまったりしがちじゃないですか。でも、自分が今持っているものを認めていくところからしか、自信はつかないと思うんです。そこが受け入れ認められることさえできたら、「人生、意外と楽しい」と思えるんじゃないかって。

小林:そうだね。そこは僕も、まだまだ悩み中ですよ。

ダイスケ:本当ですか?

小林:うん。「自信」と「不安」の間を、常に行ったり来たりしているし、これからもそうなんだろうなって思う。僕自身、以前は「人生って厳しいなあ」と思いながら生きてきたんですね。度胸もなければ特別自信もないし。ツリーハウスにしても、たまたま流れでこうなっているだけで(笑)。さっき言ったように、「まだまだ足りない。次はもっとこうしたい」っていう思いがあるからこそ、今もやり続けていますけど、別に「俺の人生、これだ!」って思っているわけでもなくて。

 今年僕は60歳になるんですけど、そうするとまた考えるんですよ。このまままだ続けていくのか、それとも誰か後進を見つけていくのか。日本にとどまるか、海外に出るか。過去のアーカイブをそろそろまとめた方がいいのか……等々、考えなきゃいけないことはたくさんあって。だから、人は僕をどう見ているか知らないけど、まだ自分的には全然定まらない。絶えず悩んで、絶えず後悔しています。

ダイスケ:小林さんみたいに、自由気ままに生きていらっしゃるように見える方が、今も悩み続けているというのは、なんていうか……失礼を承知で言えば、かえって励まされるところがあります(笑)。

小林;よく言われるよ(笑)。確かに、自由は自由なんですけどね。僕がツリーハウスを作り始めた25年前はまだ誰もそんなことやっていなかった。少なくとも日本では、自分がやったことがそのまま道になるというか。僕は人からあれこれ指図されるのが嫌いなので、そんなことされないですむ道を見つけたっていう喜びはありました。それが34歳の頃です。もう年齢も年齢だし、あまり選択肢もなかったんですよ(笑)。ここまで来たら、「俺はツリーハウスの第一人者だ」って堂々と言えるように、まずはするしかないって。

──その時は焦りもありました?

小林:ありました。このままいくと危ない、35歳くらいって危ないじゃないですか(笑)。親や周りのプレッシャーもありますし、同い年の連中を見回してみても、会社でそれなりのポストに就いていたり、コックやってた奴はコック長になってたり。家庭まで持っている人もたくさんいて、みんなが大人に見えるわけですよね。自分は根無し草で旅をしてて、色んなことを好き勝手にやっているようで、「じゃあ、本当は何がしたいの?」って言われると何も答えられないんです。プロフェッショナルな技術など、何一つ持っていないから。そのことで焦ってたからこそ、ツリーハウス見つけた時に、そこにしがみつく力も強かったのだと思う。「俺の人生、これだ」なんて考える余地もなかった。今考えると、確かに行動力もありましたよね。単身アメリカまで行ってピーター・ネルソン(ツリーハウスの第一人者)に会ったり、オレゴン州へ行ってツリーハウスの勉強をしたりしたから。自分から夢中になっていったということなんですよね。

──夢中になれるものが、向こうから勝手にやって来たわけでは決してなくて、夢中になれるものを自分で探して没頭していったということなんですね。

小林:そうですね。もちろん、ツリーハウスにそれだけの魅力があったからこそ、ここまでやってこられたわけですが。

──では最後に、お二人の今後の夢や展望をお聞かせください。

小林:ツリーハウスは本来「エスケープの場所」というか、辛い現実から逃げる隠れ家として作っていたはずなのに、気づけばいつの間にか仕事になってしまって。おかげで今、急に仕事が嫌になった時の逃げ場が僕にないんですよ(笑)。なのでいつか、時間が許すのであれば、自分1人だけで自分だけのツリーハウスをこっそり作りたいですね。何から何まで自分だけのテイストで作り上げたツリーハウスを持つのが夢です。

ダイスケ:以前は「武道館で単独ライブ」とか、「チャートで1位を獲る!」とか、そういう目標を掲げるというか、「掲げなきゃ」って思っていたんですけど。さっきも話したように、最近キャンプをしたり、ツリーハウスに興味を持ったり、自然というものに向き合うことが多く、自然の中で歌いたい欲求がどんどん大きくなっているんです(笑)。今後はそういうフェスにも出たいし、自然の中でライブをしたい。そして、いつかキャンピングカーを手に入れて、それで全国を回りたいですね!

(取材・文=黒田隆憲/撮影=三橋優美子)

■リリース情報
・ダイスケ
『Acoustic Journey Tayutai』
発売中
価格:¥2,500(税込)

<収録内容>
1.Introduction
2.Tayutai
3.Fly
4.幸福の王子
5.夕焼けリグレット
6.目覚めの森
7.journey
8.foreign land
9.the happy prince

・小林崇
『THE ROAD MOVIE OF TREEDOM』
発売中
価格:¥6,000(税込)

■関連リンク
ダイスケ公式HP
小林崇公式HP

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