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アリアナ・グランデは“理想のポップ・スター像”を更新する存在にーーベスト盤を機に改めて考察

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 アリアナ・グランデのキャリア初のベスト盤『The Best』がリリースされ、オリコンチャートの総合2位を記録するなど話題を集めている。2013年にデビューした彼女はこれまでに3枚のオリジナルアルバムを発表し、そのすべてが全米チャートで1~ 2位を記録している他、日本のチャートでも上位にランクイン。また、2016年の『Dangerous Woman』はこの年に日本で一番売れた洋楽アルバムとしても知られており、名実ともに世界の音楽シーンを代表するシンガーとしての評価を確かなものにしている。

 その勢いは2017年もとどまることなく、自身の楽曲ではディズニー映画『美女と野獣』の主題歌「Beauty and the Beast」をジョン・レジェンドと担当。客演としてもカルヴィン・ハリスの『Funk Wav Bounces Vol.1』やカシミア・キャットの『9』といった重要作に迎えられ、並みいる客演陣の中で大きな存在感を放っている。彼女がここまでの成功を手に入れられたのは、なぜなのだろうか? 『The Best』を通してここまでのキャリアを振り返り、その魅力を改めて考えてみたい。

 まず、彼女のそもそもの魅力は、正統派ボーカリスト/ポップスターとして非常に高い技術/才能を持っていること。それをストレートに生かしたのがベイビーフェイスを迎えた2013年の1作目『Yours Truly』 だ。子役時代から芸能界で活動し、ミュージカルなどを通して頭角を現わした彼女は、この頃「ネクスト・マライア(=音楽シーンの次世代を担う正統派ディーバ)」と呼ばれており、シングル曲「Baby I」の後半で見せる圧倒的な声域の広さは彼女がまさにその系譜にいることを感じさせるものだった。また、音楽的には、後に恋人となるマック・ミラーを迎えた「The Way」や「Lovin’ It」などを筆頭に90年代~00年代のモダンR&Bの王道を行くような楽曲が並び、そこに往年のソウルを髣髴させる「Tattooed Heart」などを追加。その雰囲気は、今考えるとダフト・パンクが『Random Access Memories』でソウルに回帰し、ファレルの「Happy」が大ヒット曲となった2013年当時のムードとも共振するような魅力を持っている。

 同時に、ゲストをラッパーのみに絞ることで、全編には彼女の歌の魅力をストレートに楽しめるような雰囲気が生まれているのも大きな特徴で、現在にいたる活動の“コア”とも言える彼女本来の魅力はこの時点ですでに開花していた。また、この頃の歌詞は女の子らしい感情を歌ったラブソングが中心。万人に愛されるポップ・アイコンとしての地位を確立し、後に繋がる成功への階段を上っていった。

 とはいえ、その『Yours Truly』の6曲目で、今回の『The Best』にも収録された「Piano」では、ヒット曲を歌うことの難しさをテーマに「私はラジオで流れるような歌をつくる/あなたが踊りたくなるような曲を/でも、本当は踊らないでほしいんだけど」と歌っていた。そしてその真価は、音楽的に進化を遂げ、アーティストとしての可能性を広げた2014年の2作目『My Everything』で明らかになる。デビュー作が彼女のボーカリスト/アイドルとしての魅力を伝える作風だったのに対して、この作品では楽曲ごとに様々なボーカリスト/ラッパー、トラックメイカーをフィーチャリング。イギー・アゼリア、ニッキー・ミナージュ、前作に引き続き参加したビッグ・ショーン、昨今のオルタナティブなR&Bのアイコン、ザ・ウィークエンドらとの共演曲では、前作では真正面からメロディを歌っていた彼女のボーカルがよりモダンR&B的な方法論へと大胆に変わり、イギー・アゼリアとの「Problem」などを筆頭にして楽曲に根本的な変化が生まれている。

Ariana Grande – Problem ft. Iggy Azalea

 また、当時の音楽シーンではハドソン・モホークやカシミア・キャット、エヴィアン・クライスト、アルカなどがカニエ・ウェストの『Yeezus』(2013年)に起用されるなど、ポップ・シーンの分業制の余波を受けて様々なトラックメイカーがフックアップされていたが、アリアナは2014年の段階でいち早くそこに目をつけ、大ヒット曲「Break Free」ではEDM界のスター、ゼッドを、「Be My Baby」ではカシミア・キャットを招集。最先端のビート/トレンドをポップシーンの真ん中に引っ張り出している。

Ariana Grande – Break Free ft. Zedd

 ジャンルやメジャー/インディの境界線を越えてポップと先鋭とが手を取るという意味では、ジャスティン・ビーバーがディプロやスクリレックスらと組んだ2015年の『Purpose』や、マドンナがアヴィーチーや英〈PC MUSIC〉周辺のソフィーらを迎えた同年の『Rebel Heart』なども、実はこの『My Everything』の流れを汲む作品だと言えるかもしれない。また、この作品では低音の鳴りを筆頭にした音質/プロダクションも本格的なものに。歌詞では破綻した恋への未練を断ち切ろうと「もう問題はなくなった」と強がる 「Problem」を筆頭に以前より複雑な感情が表現された楽曲が増え、彼女に「可愛い」だけでなく「カッコイイ」というイメージが生まれたのも恐らくこの頃だ。自らの高い歌唱力を音楽シーンの才能と融合させることで、様々なアーティストをフックアップし、同時に自身のサウンドもアップデートする理想的な変化を遂げた。

      

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