高田漣が語る、ルーツミュージックとの向き合い方「舶来の音楽をどうやって日本語で表現するか」

高田漣、ルーツとの向き合い方


日本人が感じる“ブルース”

ーー一方でこのアルバムは、漣さんの歌をたっぷり楽しめる作品でもあって。特に「思惑」の感情豊かなボーカルは印象的でした。

高田:歌に関しては、やっぱり「高田渡トリビュート」のライブの経験が大きいですね。今回のアルバムの楽曲は、弾き語りで歌うことを想定して作っているんですよ。いままでの自分の楽曲はアレンジが凝り過ぎていて、弾き語りに向いてなくて。なかなか一人では表現できないジレンマがあったんですけど、高田渡トリビュートのライブを回るなかで「歌とギターがしっかり軸になっていれば大丈夫だ」と実感できて。それはアルバムの制作にもつながっていますね。「思惑」ではソウルミュージックをやりたいと思っていたんです。具体的にいうとエタ・ジェイムスの「I’d Rather Go Blind」のテンポ感でやってみたいなと。そうなると別れ歌が似合うなと思って、曲と歌詞がほぼ同時にできた感じですね。ちなみにこの曲、「ハニートラップ」と同時進行で作ってたんですよ。ばかばかしいことを言った後は、ちょっとマジメなことを言いたくなったりするじゃないですか。

ーーサウンドは確かにソウルフルですが、しっかり日本の歌として表現されているのも良いなと。

高田:そこも意識していましたね。アルバムのタイトルは「ナイトライダーズ・ブルース」なんですが、音楽の形式としての“ブルーズ”ではなくて、日本人が感じる“ブルース”というか。歌っている内容もどうでもいいような話が多いんですよ。日々のなかで起こる「やっちゃったな……」という出来事だったり。基本的に自分の話だから、どうしてもお酒の話が多くなるっていう(笑)。

ーーアルバムの最後は「バックビート・マドモアゼル」。ジャズのテイストも感じられる解放感のある楽曲ですね。

高田:曲順はスタッフとも話ながら決めたんですけど、「ナイトライダー」から始まって「バックビート・マドモアゼル」で終わるというのは最初から決めていて。「バックビート・マドモアゼル」は“飲み会が終わったと思いきや、二次会に連れ込まれる”という歌ですね。「ナイトライダー」は“朝になってお店から出たら小学生が通学していた”という歌詞なので、そこの時間軸もつながっているんです。

ーー音楽性はすごくディープですが、気軽に楽しめる間口の広さもある。いまの若いリスナーにも楽しんでもらえるアルバムだと思います。

高田:そうなると嬉しいですね。このアルバムがきっかけになって、あるいはこういうインタビューを読んでくれた人がソウルミュージックやカントリーに興味を持ってくれたらいいなという気持ちもあるので。さっき言った1994年あたりの音楽にも、そういう部分があったと思うんです。日本の音楽業界もまだ元気だったし、60年代、70年代のアルバムが再発されて、それを音楽ファンがシェアして、また新しい作品につながって。いまも似たような状況だと思うんです。ストリーミングサービスなどが普及して、若い人たちもルーツミュージックとかを意識せずにいろんな時代の音楽を聴いているので。今回のアルバムもいろんな世代の人に聴いてほしいなと思いますね。

(取材・文=森朋之/写真=仁礼博)

『ナイトライダーズ・ブルース』

■リリース情報
『ナイトライダーズ・ブルース』
発売:2017年10月4日
価格:¥2,778(税抜)
<収録曲>
01.ナイトライダー
02.ハニートラップ
03.Ready To Go ~涙の特急券~
04.Take It Away,Leon
05.Sleepwalk
06.ハレノヒ
07.ラッシュアワー
08.文違い
09.思惑
10.バックビート・マドモアゼル
<ゲスト>
TIN PAN(細野晴臣/林立夫/鈴木茂)
長岡亮介(from ペトロールズ)
佐藤良成(from ハンバート ハンバート)
<参加ミュージシャン>
Drs:伊藤大地
B:伊賀航
B:秋田ゴールドマン (from SOIL&"PIMP”SESSIONS)
Pf, Org:野村卓史 (from グッドラックヘイワ)
Pf, Org:ハタヤテツヤ (EGO-WRAPPIN’他)
Sax, Cl:武嶋聡 (EGO-WRAPPIN’他)
Cho:YUI (from バクバクドキン)

■ライブ情報
『高田漣「ナイトライダーズ・ブルース」Release Party』
12月24日(日) 青山・CAY
開場:開演 17:30 / 18:00
出演:高田漣(vo,g)、伊藤大地(drs),、伊賀航(b),、野村卓史(key)

高田漣オフィシャルサイト
Bellwood 45th Anniversary 特設サイト

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