乃木坂46らの楽曲手掛けるAkira Sunsetが語る、自身のキャリアとコライトの利点

Akira Sunsetが語る、キャリアとコライトの利点

「僕自身は単純に『歌が良ければいい。アレンジはバッキングでいい』という考え 」

ーー最新作『いつかできるから今日できる』の表題曲も手掛けていますが、この曲についてはどのようなモードで作ったのでしょう?

Akira Sunset:「ハルジオンが咲く頃」と同じ時期に思いついた「EDM×ストリングス」というアイデアをベースに作っているので、構造も少し似ていますし、兄弟のような曲といえるのかもしれません。

ーーサビ頭やジャンルのマッシュアップなど、その時々で自分の変化していく強みを把握して実践していると思うのですが、いまはどういうモードなのか気になります。

Akira Sunset:今は……飽和状態です(笑)。創作意欲を掻き立てるものをどんどん採用している状態ですね。今は結構コライトが多いので、作りながら「こうなってきたから、この方向に持っていかない?」と相談し合って出来上がることが多いかもしれません。

ーーAkiraさんにとって、コライトの重要性はどういった点にあるのでしょうか。

Akira Sunset:単純に楽しいですよね。一人だと行き詰まることもあるけど、二人だと話しながら提案しあえるし、それが互いの勉強にもなるので。でも、一番はコンペに通ったときの喜びを分かち合えることが大きいです。

ーーコライトが多くなると、単純に生み出せる曲が多くなるという利点もありますよね。

Akira Sunset:そうですね。同じ締切でもコライトの場合だと複数曲を提出したりできますし、単純にクオリティも高くなるし。僕なら一日掛かる打ち込みも、上手いアレンジャーさんだと1~2時間でできるじゃないですか。そこはお互いスキルを交換するような気持ちです。とはいえ、アレンジャーさんの負担が大きくなることも多いので、その分トップライナーである僕らは歌を録ったりエディットしたり現場に行ったりと、なるべく対等になるようにしています。

ーーいま、Akiraさんはご自身を「トップライナー」と位置付けましたが、楽曲を作る中で、自分がトップライナーに適正があると考えているのでしょうか。

Akira Sunset:単純に、打ち込みが好きじゃないんですよね(笑)。あと、音色を選べなくて。ライブラリに山ほど入っている中からチョイスしようとしても、三種類くらい聴くと「もうこれで良いんじゃないか」と思っちゃうんです。だからそれは得意な人がやればいいし、僕は「こういう曲を作りたい、こういう詞を書きたい」と思いつくことが多いし、それを形にしてくれるパートナーがいてくれる方が楽しいんですよ。

ーー冒頭、ユニット時代に相方が書く曲が好きじゃなかったという話がありましたが、そことコライトが結びつかないのは意外です。

Akira Sunset:コライトに関しては、僕が管理していることがほとんどなので、特にストレスはないです。作曲だけ自分で担当した場合だと、渡した楽曲がアレンジャーさんに渡ってからはタッチできなくなるので、それが嫌なんですよね。最後まで責任を持ちたいという考えがあって、コライトならそこを相談しながら直せるので。曲の設計図は僕が書いて、相談しながら仕上げていける相手と組ませていただくことが多いです。

ーーAkiraさんの曲は、比較的リズムがシンプルでメロが良いということが多いと感じていたのですが、話を通してその理由がわかりました。最近の楽曲ではコライトの成果もあってか、リズムも複雑なものが増えてきました。

Akira Sunset:アレンジャーさんのおかげですね。僕自身は単純に「歌が良ければいい。アレンジはバッキングでいい」という考えなんですよ。でも、リードやカウンターのメロディがないといけないという風になると、自分で考えたりもするんですけど、まずはお任せしちゃっていますね。もちろん、「リズムの部分でこうしたい!」とか「コードはこっちに行きたい」という箇所が出てくることもあるので、結構直し直し進めてますね。

ーーそれは完全分業制ではなくコライトにすることの利点といえますね。ここまで色々話してもらいましたが、楽曲制作において、ご自身で一番気をつけていることは?

Akira Sunset:一つを選ぶのは難しいですね。でも、楽曲提供アーティストが誰にせよ、一度世に出た曲を踏襲して次の楽曲を作る人が多いんですよ。だから、僕自身が大事にしているのは「出したものは誰かが出来ること」と割り切って、そうじゃない部分を探して提案し続けることですね。もちろん、これまでのアーティスト像をトレースすることも大事なんですけど、モチベーションが上がらないんですよね。例えば、アイドルグループの曲だと、最近ラップを使うことが多くなってきているし、僕自身は得意なんですけど、だからこそやらないようにしています。

ーー抜け道を見つけることは、アーティストのキャリアが長ければ長いほど難しくなってくる気がします。

Akira Sunset:そうですね。これまでは新しいことを考えてそれがハマることが多かったんですけど、最近はそうでもないので、その指摘は間違いないかもしれないですね。

ーーとはいえ、最近では郷ひろみさんのシングルでサウンドプロデュースを担当したり、広告系の楽曲を手掛けたり、APAZZIさんとのユニット・THE SIGNALIGHTSやバンド・HighsidEでの活動など、多岐にわたるアウトプットを持っています。

Akira Sunset:それは自分でも意識して増やしている部分ですね。どうやったらこれだけ音楽作家が存在するなかで勝ち上がれるかと考えたときに、まずは大きいグループに集中して、グループの知名度が上がるときに自分の名前も引き上げていただけて。ただ、一つのアーティストに書いてばかりだと「あいつはあのアーティストにしかハマってないし、なにかあるに違いない」と思われちゃいますから。それは嫌ですし、今はどんどん外に出る時期かなと思っています。色んな人に楽曲を書いてみたり、最近は自分でイチからやってみたいなと考えていて、アーティストのプロデュースを水面下で進めているところです。

ーーそんなプロデューサーとしての側面も持ちながら、作家事務所・HOVERBORDの代表も務めています。いち作家というよりは、全体を見ることも増えてきたのでは?

Akira Sunset:それはあまり考えてないですね。自分では楽しいことしかやってないと思っています。作家事務所を作ったのは、単純に僕が編曲を苦手としていて、良いパートナーが見つかったので何とかしてあげたいと思って、一緒に会社を作った編曲家のha-jさんとも「自分たちの持っている繋がりをより広げていくために必要なんじゃない?」という話になったので。あとは単純に、他の作家事務所のやり方を聞いていると「エグいな」と思うことも多くて(笑)。僕はこれまでありがたいことに不満を感じたことはなかったんですけど、「これじゃ楽しくできないよ!」という話を耳にすることもあったので。あと、会社のLINEグループで「誰々が〇〇決まったよ!」って盛り上がれるのは、喜びを分かち合えるし切磋琢磨もできると思うんです。そんな仲間に常に囲まれていたくて。

ーー事務所というよりはひとつの家を持ったというような感じですね。ここからは講座の話も伺っていきたいんですが、「Little Glee Monsterの仮想3rdアルバムのリード曲」という同一のコンペシートを用いて楽曲を作り、それを受講生の前で発表するんですよね。

Akira Sunset:やばい! 「全員ぶっ倒す」って言ったのにまだ何も出来てない(笑)!

ーー(笑)。Akiraさんは他の作家さんとの交流が特に多い印象です。

Akira Sunset:好きな曲書いている人と話すのって楽しいですよね。そして仲良くなってまたその人が大きい案件に決まると嬉しいし、そして悔しくてモチベーションが上がりますし。

ーーそんな同志たち・受講生の前で公開するというのは、やはり重圧になりますか?

Akira Sunset:すごい企画だなと思いましたよ。「公開するんだ!」とビックリしました。今回もコライトで臨もうと思っています。最近、自分だけで作った曲のデモを出すのが恥ずかしくなってきていて。

ーーガチガチに作り切らないと、出したくないと思うようになったということですか。

Akira Sunset:そうですね。自分だけの曲のデモはわりとざっくり作るタイプなんですけど、それで「Akiraのデモ、こんなもんかよ」って言われるのが嫌だなと思って(笑)。もちろん、相手が想像力のある方だったら、余白を残しておいたほうがいい場合もあるんですけど。

ーーなるほど。当日一緒に登壇する3組(Carlos K.、Soulife、丸谷マナブ)をAkiraさんなりに紹介すると?

Akira Sunset:Carlos K.は、とにかく仕事が早いですね。手癖がいっぱいあって、瞬間的に色んなフレーズが出てくるし、編曲もメロを決めるのも早い。いまトップを走っているのも頷ける人ですね。丸ちゃんは、どこかアンニュイというかニヒルというか、一番アーティストっぽい楽曲を作る人というイメージです。で、Soulifeに関しては、「もう作らないで下さい!」というくらい曲が良すぎて、嫉妬するくらい大好きなんです。そしてトップライナーとプロデューサーの二人組みと言う作り方なので、最近の自分のスタイルに一番近いかもしれません。

ーー当日も多くの音楽作家やそれを目指す人たちが来場すると思うのですが、自分が10代後半や20代前半に戻ったとして、一つ何かを伝えるとすると?

Akira Sunset:「音楽だけをやらないように」と伝えたいです。今の時代だったら、映像も使うしSNSで面白いことをやろうと考えると思います。どうしても「注目されないと聴いてもらえない」という状況になってしまっていますし、良い曲が書けるのは大前提で、どう目立つかはかなり重要だと思います。「頑張って良い曲を作ろう」という状態が続いてしまうようなら、一生そこから抜けられないかもしれない。先日『サウンド・デザイナー』さんでデモの審査員をさせてもらったのですが、SoundCloudやYouTubeのリンクを送ってもらうようにして、そのアートワークや映像も含めて判断しましたから。

ーー今後は音楽作家として、一人の音楽家として、どのようにキャリアを進めていこうと思っていますか?

Akira Sunset:「音楽をやる」という自分にとっていちばん大事なことはブラさずに続けたいですし、年齢も上がってきたので下の世代によりストレスのかからない環境を整えていきたいです。いまは作家たちの仲が良くて、楽しい環境だとは思うんですけど、そこだけに浸かるのではなく、才能があるけど世に出ていない人を引き上げたいし、自分たちはそのうえで次のステージに行き続けて、老後まで楽しく音楽ができればいいですね。

(取材・文=中村拓海/撮影=林直幸)

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『SONIC ACADEMY FES EX 2017』

■イベント情報
『SONIC ACADEMY FES EX 2017』
開催:2017年10月7日(土)&8日(日)
会場:東京都 Future SEVEN

<2017年10月7日(土)講座内容>
「J-POPクリエイター頂上決戦! 楽曲コンペ・バトルロイヤル2017 新進気鋭の若手作家4人が集結し、勝負曲でガチ対決!」
講義時間:11:00~12:30
講師:Akira Sunset / Carlos K. / 丸谷マナブ / Soulife

「『音楽×映像(CG・アニメーション)』ヒットの法則 ~今、世界に望まれる日本の音楽とは~」
講義時間:13:30~15:00
講師:Tom-H@ck

「~ミュージックマスター講師とジョイント講座~ 三浦拓也(DEPAPEPE)と名渡山遼 10 STRINGS MUSIC COMUNICATION」
講義時間:16:00~17:30
講師:三浦拓也(DEPAPEPE) / 名渡山遼

「それでも君は音楽で飯を食っていきたいのか? ~音楽業界を目指す人へ今伝えたい! 音楽業界を生き抜くためのヒントを大公開!~」
講義時間:18:30~20:00
講師:角松敏生

<2017年10月8日(日)講座内容>
「アニソン好きな僕が100万枚DJになった理由
~売れるアニソン徹底分析~」
司会:冨田明宏(音楽評論家/音楽プロデューサー)
ゲスト:山内真治(アニプレックス プロデューサー)
講義時間:11:00~12:30
講師:DJ和

「駅メロディ制作のパイオニア“塩塚博”が教える「数秒間で心をつかむメロディ制作術」と鉄のピアニスト“松澤健”が弾き語る「駅メロ解体新書」」
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「「加藤ミリヤが紡ぐメロディの種はどこから生まれるのか」
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