星野源は“音楽の歴史”をつないでいく アリーナツアー『Continues』追加公演を観て

星野源は“音楽の歴史”をつないでいく

 「続く」というのは、“時代”という大きなタームだけではなく、星野源自身の楽曲群にも脈々と流れるものだ。ライブ中盤では、1stシングル曲「くだらないの中に」(2011年3月)、2ndシングル曲「フィルム」(2012年2月)、そして3rdシングル曲「夢の外へ」(2012年年7月)と、初期の楽曲を立て続けに披露した。星野源はアコースティックギターを持ち、また管弦楽隊によるアレンジも加わることで、それぞれの曲の情感の豊かさ、あるいは繊細さがより浮き彫りになっていた。ブラックミュージックのグルーヴと日本語による歌の融合。どちらも等しくイエローミュージックを形作る重要な要素であるが、特に後者においては、この頃から星野源が大切に丁寧に磨き上げてきたものなのだろう。また、その後は会場中央のセンターステージへと移動し、弾き語りで「穴を掘る」とナンバーガール「透明少女」をカバーした。

 後半は「Mad Pierrot」からスタート。この曲も細野晴臣が作曲したイエロー・マジック・オーケストラの楽曲。オリエンタルな音色と、ELEVENPLAYのフラフープを使ったしなやかなダンスによって、クラシックとモダンな要素が交錯するようなスペシャルなショーが繰り広げられる。曲の途中でステージに登場した星野源はオーディエンスに踊ることを促す。そしてその後は『YELLOW DANCER』以降の曲を中心に、人気曲を惜しみなく披露した。


 <時よ 今を乗せて/続くよ訳もなく>と、時の経過を歌い、「Continues」のイメージをさらに広げた「時よ」。久しぶりにライブで披露された「ギャグ」。そして「SUN」から一気にクライマックスへと向かっていく。「去年めちゃくちゃ歌った曲をやります。一緒に踊ろう」と紹介した「恋」では、あたり一面に恋ダンスが広がり、「Week End」では会場一体となったシンガロングも沸き起こる。誰もが歌ったり踊ったり、大きく手拍子したりして自由に楽しむ光景は、なかなか見られるものではない。星野源のライブには、たとえば弾き語りのように、じっくりとひとりで音楽に耳を傾ける時間もあれば、音楽を通してでしか味わえない一体感に感動することもある。そして本編は、<君が燃やす想いは 次の誰かを照らすんだ>と歌い、このツアーの軸となった「Continues」で終了した。

 「Firecracker」ではじまり「Continues」まで、ひとつのコンセプトを貫いた本編を完遂し、アンコールへと突入した。寺坂直毅の口上とともに登場したニセ明はセンターステージで「君は薔薇より美しい」を歌唱。投げキッスも飛ぶなど、ファンサービスも満載だ。そしてその後メインステージへと移動し、バンドメンバーやELEVENPLAYのメンバーに話しかけ場を和ませ、2曲目として星野源の「Drinking Dance」をカバー。ファルセットの歌声が美しく響いた。星野源のライブではおなじみのニセ明だが、この「Continues」のテーマとともにステージに立つと、歌謡曲の象徴として登場する彼の存在はさらに輝いていた。

 そして星野源がステージに戻ってきて歌い上げたのは、この日初披露となった「Family Song」。今まさに大団円を迎えようとしている場の雰囲気を優しく包み込むようなストリングスの音色が鳴り響く。そして最後は「Friend Ship」でエンディングを迎えた。

 『YELLOW DANCER』『恋』『Family Song』を経て、国民的なポップスターへと駆け上った星野源。この日のライブも、文字通り老若男女がそのステージを目撃していた。そしてその3万人を前に、オジリナル曲のなかにカバー曲を交えるなど、様々なアイデアとともに“音楽は続いていく”というテーマをしっかりと共有してみせた。星野源は、過去を断ち切り新たな金字塔を打ち立てるのではなく、「音楽の歴史」という絶えることなく続く流れのなかから“イエローミュージック”を生み出した。その流れは、きっとこれから鳴る音楽へとつながっていくだろう。

(取材・文=若田悠希)

■セットリスト
「星野源Live Tour 2017『Continues』」
2017年9月9日(金)さいたまスーパーアリーナ

1.Firecracker
2.化物
3.桜の森
4.Night Troop
5.雨音
6.くだらないの中に
7.フィルム
8.夢の外へ
9.穴を掘る
10.透明少女
11.くせのうた
12.Mad Pierrot
13.時よ
14.ギャグ
15.SUN
16.恋
17.Week End
18.Continues

-ENCORE-
1.君は薔薇より美しい
2.Drinking Dance
3.Family Song
4.Friend Ship

星野源オフィシャルサイト

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