愛知県豊田市に“音楽フェス”を根づかせたパンクスの精神 炎天下GIGからの歴史を紐解く

豊田市にフェス根づかせた炎天下GIG

豊田市の音楽シーンに深く根づいた精神

 各フェスティバルに共通している精神は、駅前で中学生が中心となって行われていた炎天下GIGから変わらない。その精神が今でも豊田の音楽シーンに深く根づいているからこそ、現在上記3つの大きなフェスが行われているのではないだろうか。

 愛知県豊田市という場所も、広島や東京、新潟や仙台あたりからも当日出発で来られるような、全国から集まり安い距離感の場所であり、大都市である名古屋ではできない規模のフリーフェスができる土壌もある。

 炎天下GIGのほかにも、駅前ジャズフェスティバルなどのイベントも行われていたり、昔は有料ではあるが忌野清志郎などが出演した河川敷で行われたフェスなどの音楽イベントが頻繁に行われており、そういった街の文化となっている野外フェスの歴史が、豊田という街を音楽に対して寛大にさせているのかもしれない。

 実際、金髪、刺青でモヒカンの若者が、街で一番の大きなスタジアムの一部を借りてフリーフェスを行うことに対し許可を与えるほど寛大な精神がそこに見える。

 それにはもちろん、先駆者たちが行って来たことの恩恵は大きいだろう。しかし、この寛大さが豊田市の音楽を育てていると言っても過言ではない。

 そして先駆者たちが築き上げたものを若者たちが受け継ぎ、さらに良いものにしようとしている。

 「ライブハウスやクラブがない」からといって諦めるでもなく、近隣の大都市でやるのでもなく、地元にこだわり、全てがフリーフェスであるというカルチャーを生み出し、脈々と繋ぎ受け継がれている豊田市は、何かが巣食っているとしか思えないほど、不思議で魅力あふれた街であり、常に新しいものが生まれている。

 ここまでの街が、現在日本に存在していることは、音楽に携わる人間や、音楽好きな人間にとって奇跡的に幸せなことではないだろうか。こんなに素晴らしいことが集まってくる豊田市の音楽シーンは、日本の中でも稀有の存在として際立っている。今後も豊田市の音楽カルチャーは、決して目をそらすことのできないものであり続けていくはずだ。

TOYOTA ROCK FESTIVAL公式ホームページ
橋の下世界音楽祭公式ホームページ
TOYOTA PUNK CARNIVAL公式ホームページ

(冒頭写真提供=miuracamera)

■ISHIYA
アンダーグラウンドシーンやカウンターカルチャーに精通し、バンド活動歴30年の経験を活かした執筆を寄稿。1987年よりBANDのツアーで日本国内を廻り続け、2004年以降はツアーの拠点を海外に移行し、アメリカ、オーストラリアツアーを行っている。今後は東南アジア、ヨーロッパでもツアー予定。音楽の他に映画、不動産も手がけるフリーライター。FORWARD VOCALIST ex.DEATH SIDE VOCALIST

※記事初出時、一部事実関係に誤りがございました。訂正の上、お詫びいたします。

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