>  >  > 『ハロー張りネズミ』劇伴音楽を紐解く

『ハロー張りネズミ』劇伴音楽、バトルとホラー要素をどう表現? “絵合わせ”の演出に注目

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 現在放送中であるTBS系金曜ドラマ『ハロー張りネズミ』の何気なく流れてくる予告編音楽が印象に残っている方も多いのではないだろうか。本作はSOIL & “PIMP”SESSIONSが劇伴を担当。また同バンドが“SOIL & “PIMP”SESSIONS feat.Yojiro Noda”として、RADWIMPSのボーカリスト・野田洋次郎と共に制作したという主題歌「ユメマカセ」も注目されている。主題歌と劇伴に同じ作家が関わるというのは現在よりはむしろ一昔前により多く見られたが、そこにはドラマ作品全体の連関性も感じられる。そんな本作を彩る音楽の中でも今回は「劇伴」に焦点を当てて解説していきたい。

SOIL&”PIMP”SESSIONS feat.Yojiro Noda /「ユメマカセ」ミュージックビデオ YouTube Ver.

 まず、『ハロー張りネズミ』について簡単に紹介する。本作は漫画原作でこれまでに実写映画やテレビドラマ、さらにはOVAなど様々な形態で映像化されている。東京都板橋区の下赤塚にひっそりと事務所を構える「あかつか探偵事務所」の探偵「ハリネズミ」こと七瀬五郎(瑛太)とその仲間たちが、ときには人情味あふれた哀しい事件を、またあるときには想像を超えた難事件に挑んでいく(参考:『ハロー張りネズミ』オフィシャルサイト)。本文でも記述するバトルシーンやホラーシーンに加えて、コメディ的な要素など、様々な見所を含む充実した作品となっている。

バトルシーンに付加された種々の劇伴

 本作は「探偵もの」であるためにもちろんバトルシーンは何度も見られ、その際に使用される劇伴に様々な工夫が見られる。一般的に、劇伴で使用されるバトル曲には大きく「格闘」と「逃走」の2種類がある。このことを踏まえた上で、すでにオンエアが終了している放送回より特筆すべき3つのシーンを例に挙げていく。

「追っかけ」の音楽といわれる一種のバトル音楽

 第2話で、木暮久作(森田剛)が仲井隆(吹越満)の家から逃走するシーンがあるが、このシーンでは「追っかけ」の音楽といわれる一種のバトル音楽が使用されている。「追っかけ」の音楽とは説明的な音楽に分類され、「カー・チェイス」や「ヘリコプター・チェイス」をはじめとし、このシーンのように「人間の足」によるものもある。実際にこのシーンで使用された劇伴では、「疾走感があり、ウッドベースが4分音符で刻んでいるフレーズ」から構成されていた。こういったウッドベースのフレーズはジャズの中の一部で定石であり、インスト・ジャズバンドであるSOIL&”PIMP”SESSIONSとしての作品色も感じられた。

短い要素を執拗に反復させることで緊張感を感じさせるバトル音楽

 第3話で、木暮久作とヒットマン(高橋努)の探偵事務所内での命がけバトルシーンがあった。しかし、このシーンで流れていた劇伴はそれほど激しいものではなく、音名でいうAとB♭の音をひとかたまり2小節とし、それを執拗に反復させるというものだった。この反復により「緊張感」が生まれ、対峙のカットも含むバトルシーンが激しさとは別の角度の劇伴で見事に演出されていた。

現実的なバトルシーンを幻想的に見せた音楽

 同じく第3話で、七瀬五郎とヒットマンの取っ組み合いの結果、建物から共に落下するシーンの演出も印象的だ。このシーンの映像はスローモーションが用いられており、劇伴では低音が持続するアンビエント風の要素が使用されていた。スローモーションとアンビエントという、どちらも停滞した要素を持つ映像表現と音楽表現を同時に用いることで、「現実的」なバトルシーンを「幻想的」に見せる効果があった。これも一種のバトル音楽と言えるだろう。

      

「『ハロー張りネズミ』劇伴音楽、バトルとホラー要素をどう表現? “絵合わせ”の演出に注目」のページです。>の最新ニュースで音楽シーンをもっと楽しく!「リアルサウンド」は、音楽とホンネで向き合う人たちのための、音楽・アーティスト情報、作品レビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版